21世紀に入り、民主主義体制に移行したヒマラヤ山中の小さな仏教国ブータン。大きな変化に際し、ある村を舞台に起こる騒動を描いた群像劇。 2006年に第4代国王が退位の意向を発表。「初めての選挙」で国のリーダーを決めることになった。政府は、国民に制度を知ってもらうために、模擬選挙を実施することに。山あいのウラ村を訪れた選挙委員のツェリンは村人に理解を求めるが、取り合ってもらえない。 一方、村で山ごもりをしていた高僧は、選挙への参加を呼びかけるラジオ放送を耳にする。彼は若い僧のタシに「物事を正さねばならない。次の満月の日までに、銃を2丁手に入れてくれるか」と頼む。タシは銃を見たことがなかったものの、高僧の願いをかなえるべく奔走する。 そんな中、米国人銃コレクター、ロンが村の農家に眠るレア物のライフルを手に入れようとウラ村を訪れる。ロンは大金をちらつかせながら、譲ってもらおうと試みるが…。 多くの人々が渇望する「民主化」も、特に望んでいなかった村人にとっては「対立を生むもの」に映ってしまう。新しい価値観への転換を求められる人々の悲喜こもごもが、ユーモアを織り交ぜながら軽やかなタッチで描かれる。幸せってなんだっけ、と自問したくなる一作。 なぜ、高僧が銃を欲したのか。その理由が分かった時、「どんなに環境が変わっても、人間には変わってはいけないものがある」という思いが胸に押し寄せてくる。 シネマ5bisで来年1月11日(土)~17日(金)の午前10時、午後2時50分。(この日程以外も上映あり)。12日午後2時50分の回上映後、大分大の都甲由紀子准教授が登壇し、トークショーをする。 ◇ ◇ ◇ 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。
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