美濃焼の技法を取り入れた作品を作ったイエリザベタ・ポートノバさん。右は作品の一つ=5月、岐阜県多治見市
ロシアの侵攻から逃れたウクライナ人陶芸家が、1月から岐阜県に滞在し美濃焼の技法を作品に取り入れた。滞在中に開いた個展では、刀や武士をモチーフにしたオブジェを披露。ウクライナに残る家族らの無事を願って制作したといい「故郷が戦火の中にあるからこそ、作品で平和を伝え続けたい」と話した。
陶芸家は、ウクライナの首都キーウ出身のイエリザベタ・ポートノバさん(44)。陶片を使い、生き物を思わせる独特のオブジェが評価され、数々の国際コンクールで受賞してきた。ロシアの侵攻が始まった2022年2月、自身はフランス・パリに避難したが、家族はキーウに残った。戦闘では親しい芸術家を亡くしたという。
来日したのは、24年秋開催のコンペ「第13回国際陶磁器展美濃」がきっかけ。壊れた焼き窯の破片を使ったオブジェ「Kiln」がグランプリに輝いた。コンペ支給の補助金を利用し、今年1月から岐阜県多治見市に滞在した。
美濃焼を通して作風に変化があった。「銅版転写」という技法や特有のうわぐすりを使い、和風の模様を作品の表面に転写。「以前よりも女性らしさや美しさが強調できた」という。
4月下旬から約1カ月間、岐阜県現代陶芸美術館で個展を開き「守武士」や「狛犬」と題したオブジェなど約30点を展示。守武士には、ロシアとの戦闘に参加する知人が作ったコップを埋め込んだ。「無事であってほしい」との思いを込めた。
美術館の担当者は「一見かわいく見えるが、細部に作者の心情が表れている。やるせなさや怒りを感じさせる」と評した。
ポートノバさんは6月中旬、フランスに戻ったが、ウクライナに帰国するめどは立っていない。日本を離れる直前の取材に「これからも美濃焼の技法を生かした作品を作りたい」と意気込んだ一方で「侵略戦争が続き、多くの人が亡くなっていることを忘れないでほしい」と言葉を残した。
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