別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)は肌の色や言語、文化と歴史を異にする若者たちが集い、それぞれの夢に向かってお互いを磨くユニークな場だ。学生たちはどんな思いを胸に海を渡り、またわれわれは彼らとの接触を通じ、アジアや世界に何を伝えるのか。新世紀に挑む若者たちの姿を1年間にわたり、現場から報告する。
※大分合同新聞 夕刊1面 2001(平成13)年1月29日~12月24日掲載
ホームステイ初日、来日して1カ月のムテンベイ・モセス・キマニさん(23)=ケニア出身、アジア太平洋マネジメント学部(APM)1年=は、ためらいなく一番ぶろの栓を抜き、湯を捨てた。同じ湯をほかの人が使うとは、思いも寄らなかった。 ホスト...
「彫りが深くとてもきれいな子で、驚きました」 迎えに行ったAPハウス(学生寮)の前で、佐藤清八さん(43)=湯布院町=は、スリランカ出身のガムラス・カウシャリヤさん(20)=アジア太平洋マネジメント学部1年=に会った。この日が初のホー...
中国の大連外国語大学で日本の言語文化を専攻した徐シュ雅彬ヤビンさん(30)=アジア太平洋マネジメント学部2年=でも、ホームステイすると、日々発見の連続...
「7つの時から日本漫画のファンです。一番好きなのは『未来少年コナン』。漫画で日本に興味を持ち、日本の生活のあらましももちろん漫画で学びました」。そう話すのは、タイ出身のサイチン・ルタイラさん(17)=アジア太平洋学部1年=だ。...
今年4月に入学後、米国出身のエリカ・シャインハートさん(19)=アジア太平洋マネジメント学部1年=は、「奇妙なこと」を数多く経験した。 「たぶん日本人の中にいると、私たちのような外国人は目立つんだと思う」。昼間、別府の市街地や大分市に...
「What is the weather today?(今日の天気は)」。フィリピン出身のマリアン・アヨさん(20)=女性、アジア太平洋学部1年=の元気のいい声が教室に響く。マリアンさんが持つ手作りのカードには、雨の中の傘の絵が描...
7月1日の日曜日。APUのカフェテリアで、起業を目指す学生サークル「アントレプレナーズ」=安部博樹代表(24)、アジア太平洋マネジメント学部(APM)2年=が運営する英会話教室「たんぽぽ」のイベントが開かれ、別府市内の3教室に通う児童と保...
APUでは体育の講義がない。講義やバイトの合間、運動部の学生は寸暇を惜しんで練習に集まる。その活動も、学生たちが一からつくってきた。ここには、先例がないからだ。 「実はインドネシア製なんですよ」。女子バスケットボール部長の吉田晶子さん...
監督とコーチは日本人、部長は韓国人、キャプテンは在日韓国人。男子サッカーチーム「APUイントラスFC」は今月3日から7日まで、初めて韓国へ交流試合に行った。 8月初めといえば、「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された中学歴史教科...
「大体、教えるのは苦手なんだ。日本人でさえ嫌なのに、言葉が通じない留学生はなお苦手」。そう強調するのは「和太鼓サークル」の指導者・弥田和好さん(42)=べっぷ八湯太鼓主宰、別府市=だ。しかし練習が始まると、音に集中し、適切な指示を出し、手...
「May I use the crayons(クレヨンを使ってもいいですか)」「Sure, of course(もちろん、どうぞ)」 夏休み後半、公文教育研究会が主催したイングリッシュ・イマージョン・キャンプの一場面。拠点と...
「将来、世界を舞台に活躍するには、英語が欠かせません。外国の人と話すのをためらってはダメ。チャレンジ精神が君たちの語学力を高める。APU is the world for you. また、いらっしゃい」。 12日間に及...
「長年の疑問が一気に解決した。のどにつっかえていたものが突然、取れた感じ。とてもすっきりした。素晴らしいお話でした」 今月20日夜、三重町中央公民館で開かれた町民講座。...
いろんな国から留学生が集まっているAPUは世界中に広がる学術交流のネットワークを持っている。111の大学や研究機関と提携し、交換留学や語学研修、共同研究などに取り組んでいる。 開学から2年目を迎え、台湾・台中市にある台湾東海大学から短...
APUは本年度から京都にある立命館大学と共同で夏期集中講座を開設。今回は両大学から14人ずつが参加した。講座は5日間続き、受講生にはちゃんと単位も与えられる。 「新しい大学っていいですね。みんな熱心。講義中に私語はないし、質問も積極的...
米中枢同時テロに端を発した米国などの報復攻撃が続き、アフガニスタンでは民間人にも被害が出始めている。世界中が騒然としている中、国内最大規模の多国籍学生寮、立命館アジア太平洋大学のAPハウスでは、505人、65カ国もの学生が、日々異なる文化...
保安上、部外者は立ち入り禁止なのであまり知られていないが、APハウスからの眺めは素晴らしい。5階建ての各フロアの中央にある共同キッチンは窓が広く、上の階に行くほど、大分市から国東半島方面まで別府湾岸が一望できる。夜ともなれば夜景が売り物の...
立命館アジア太平洋大学の学生たちは、出身国によって宗教もさまざま。留学生が原則的に入学して一年間入寮するAPハウスには、宗教上の配慮から女性専用フロアがある。「夫や父親を除いて、男性には手首と足首から先以外は絶対に見せない」といった教義...
日本人RA(レジデント・アシスタント)の1人は「APハウスで暮らしていると、何が正しいのか分からなくなる。ここが日本だからといって、日本式のやり方が通るとは限らない」と話す。育ってきた社会環境も、植え付けられた常識も多様な寮生たちのまとめ...
国内ではまれな500人規模の多国籍学生寮をどう管理運営していくのか、開学前、大学が抱えていた課題の1つだった。 「1人の寮母が統括できる規模ではなく、運営方法について検討を重ねました」。大学事務局の今村正治次長は、アメリカやカナダ、韓...
「従業員の熱心さ、規律の正しさは素晴らしかった。ぜひ日本で働きたいと思いました」 チャラシー・スラサティアンさん(28)=タイ出身、アジア太平洋学部(APS)1年=は、仙台市のリサイクル業者でインターンシップ(実社会での実習・研修的な...
「日本には年功序列や終身雇用制度があると本には書いてあったけれど、大企業にはもう存在しないと思っていました。でも、そうじゃないんですね」と驚くのは、リー・アルビンさん(23)=シンガポール出身、アジア太平洋マネジメント学部2年=だ。 ...
大分県庁でのインターンシップ参加中に推薦され、朴天浩さん(29)=中国出身、アジア太平洋マネジメント学部2年=は2カ月間、鶴崎海陸運輸(大分市)の国際物流グループで働いた。 同社は「予想以上の能力を発揮してくれました」と仕事ぶりを高く...
鶴見園グランドホテル(別府市)で働く朴パク炅喜ギョンヒさん(24)=韓国出身、日本文理大学別科日本語課程修了=は、非常に美しい日本語を話し、文化的知識...
「インターンシップの期間に出会った人はみんなとても優しくて親切だったけれど、ショックなこともありました」と、レイモンド・ネルワナさん(20)=ジンバブエ出身、アジア太平洋マネジメント学部(APM)2年=は言う。三重町の建設会社で働き、ホー...
立命館アジア太平洋大学(APU)が2000年4月に開校して、あと3カ月余りで丸2年になる。校舎に隣接する学生寮APハウスには約500人、別府、大分両市や近郊の町に、約1,200人の学生、教職員が暮らす。学生たちもさることながら、かつてない...
今月14日から16日までの3日間、立命館アジア太平洋大(APU)で、国際シンポジウム「持続可能な開発と個人」が開かれた。別府市民が参加して、環境や公害、人口問題などを扱う分科会を開催。地元小・中学生とのワークショップや別府市のルールに沿っ...
さまざまな国籍のAPUの学生たち。彼、彼女らが自国と日本との文化の違いをどう受け止めているのか。それを知りたくて4人の学生に集まってもらった。学生たちの生の声を2回に分けて紹介する。 ――皆さんは日常生活で経験する異文化をどう感じ、...
――宗教観の違いや、米中枢同時テロと米国などのアフガン攻撃について意見を聞かせてください。 倉田 APハウスに住んでいて一番印象的なのは宗教のこと。日本人に...
APUでは2年後、学生の大部分が次の進路選択に直面する。世界各国から集まり、お互いの文化や価値観の違いについて4年間の学生生活で理解を深めていく学生たち。経済のグローバル化が加速する中、国際感覚が豊かな彼らを人材として期待する企業や研究機...
11日付の紙面はこちら