別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)は肌の色や言語、文化と歴史を異にする若者たちが集い、それぞれの夢に向かってお互いを磨くユニークな場だ。学生たちはどんな思いを胸に海を渡り、またわれわれは彼らとの接触を通じ、アジアや世界に何を伝えるのか。新世紀に挑む若者たちの姿を1年間にわたり、現場から報告する。
※大分合同新聞 夕刊1面 2001(平成13)年1月29日~12月24日掲載
「ナマステ」「コモ・エスタ」「シン・チャオ」――。世界47カ国からの学生421人と日本人学生484人が在籍する別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)。肌の色や言語、文化と歴史を異にする若者たちが集い、それぞれの夢に向かってお互いを磨くユ...
「食事のとき料理を残すのは、日本では良くないこと。でも中国では皿に料理が残らないと『量が少なかった』という意味になるから、少し残した方がいいという考え方があります」。 中国・西安出身の張ジャン
「ヒロシマとナガサキに原爆が投下されたこと。日本の皇室。それと、あのコマーシャルに出ている体の大きな相撲取り」。 来日前に日本について知っていたことを尋ねると、ジンバブエ出身のシンバラシェ・ソフィア・ヌヤジカさん(20)=女性、アジア...
「今、台湾で人気があるのは浜崎あゆみ。ドラマの影響で松嶋菜々子も。宇多田ヒカルは一時期人気だったけど、今はあんまり」 学生たちの口から、日本の歌手やタレントの名前が次々と飛び出してくるのに驚かされた。台湾では音楽やドラマなどの日本文化...
「子どもだったのですべては理解できなかったけど、とてもいい気分だったわ」。エストニア出身のマリオン・カロさん(19)=女性、アジア太平洋マネジメント学部(APM)=は振り返る。 1989年8月24日。バルト地方のエストニア、ラトビア、...
「はい、それでは昨日の授業を復習しましょう。皆さん、自分のモニターに向かってください」 国際学生(留学生)対象の日本語授業で、ヴ・コック・アンさん(20)=男性、ベトナム出身、アジア太平洋マネジメント学部(APM)=は、自分の机にある...
「多様な文化の交流が新しい文化や文明、創造的な人材を生み出し、それが人類の進歩と向上のために貢献してきたことは人類の長い歴史の中で幾度となく経験してきたことである」 昨年4月の入学式で、坂本和一学長はこう語った。 だが、さまざまな...
APUでは、インターネットを利用して願書の取り寄せや入学に必要な情報の収集ができる。 福祉の国フィンランド出身のトゥーッカ・トイボネンさん(21)=男性、アジア太平洋学部(APS)=は、兵役を終えたあと得意のギターを片手に世界各地を放...
IT(情報技術)が発達、普及した時代に育った若者たち。キャンパスライフも大きく変わってきた。 「日本人の友達はあまり利用しないね。店まで行かなくても、欲しいものが買えるのに」。...
「僕たちがインターネットを一番利用するのは、家族に電話をするときです」と、シンガポール出身のリー・アルビンさん(22)=男性、アジア太平洋マネジメント学部(APM)。 「マイクとイヤホンをパソコンにつないで、専用ソフトを立ち上げるだけ...
「なぜ今できることを、そのときにしてくれなかったの?」。韓国出身の李(イ)銀(ウン)淑(スク)さん=仮名、女性、アジア太平洋学部=の怒りは、半年以上たった今も収まっていない。 彼女の友人(25)=女性、韓国・釜山市在住=は昨年7月末、...
「寝室が7つと、キッチン、リビング、ダイニング、テレビの部屋が1つずつ。おふろは2つ。家族はメードを入れて5人」。インドネシア出身のイエニー・アングラエニ・プルワントさん(19)=女性、アジア太平洋学部=の実家だ。 イエニーさんは今年...
「みんなから『何かあっても知らないよ』と止められたけど、あった時はあった時よ、と思ったの」。水江まゆみさん(別府市の東洋医療・水江治療院長)は昨年4月、知り合って1週間足らずだったが、学生のアパートの保証人になった。...
別府市石垣東のJR日豊線沿いにあるAPU男子学生寮「カレッジハウス・アミークス」。3月15日、APハウスを退居した学生たちの初入居で活気づいていた。バイクで布団を運んできた中国出身の周(チョウ)華(ホワ)林(リン)さん(26)=男性、アジ...
「サイさんお帰りー」「ソンさん早く~」。帰宅したばかりの孫スン敏ミンさん(21)=女性、アジア太平洋学部=、崔チョイ
「21世紀流の出会い」とでも言おうか。中東はヨルダン出身のジャファー・バドランさん(19)=アジア太平洋学部1年=がAPUに入学したいきさつは、とてもロマンチックだ。 「実際、ちょっと不思議な話なんだ」とジャファーさんが語り始めた。...
フレンドリー・アイランズ(友好的な島々)――。18世紀の英国人探検家キャプテン・クックは、この国をこう名付けたという。 「フレンドリーじゃないと恥だという文化ですから」。南太平洋にあるトンガのトンガタプ島出身のカイトゥー・フナキさん(...
とにかく、よく笑う人だ。そして、その笑顔がとても愛らしい。しかし、祖国について語るときは真剣なまなざしになる。 「経済は悪くなるばかり。若者が成長したときに、生活と国をどう支えていくのか心配です」。こう話すティンザー・ゾーさん(24)...
生まれは日本で、国籍はカナダ。しかし、実際のルーツはそのどちらでもない。 「両親はシリアの首都ダマスカスの出身。約25年前、父が仕事の関係で来日してから私たち姉弟4人が生まれました」。アジア太平洋マネジメント学部(APM)1年のバーセ...
天真爛漫(らんまん)という形容詞がぴったりくる。日本人の父とペルー人の母を持つ、アジア太平洋学部二年の山本祐美加エリザベスさん(20)はサルサやサンバが大好きな、とびきり明るい性格の持ち主だ。 貿易やインカ帝国の歴史などに興味があった...
5月下旬の日曜日。APUのキャンパスでは春の学園祭が開かれた。音楽会がクライマックスを迎えたミレニアムホールのステージ上では、出演者全員がお互いに肩を組み力いっぱい歌っている。「ウイ アー ザ ワールド」。アフリカを飢餓から救うために立ち...
「日本語は美しいですね。特に女性の言葉。中国語は男女で言葉の違いはありません。すてきですね」 中国出身の孔コウ丹ダンさん(23)=APS=はしみじ...
「日本、日本人と聞いて『パーフェクト』を連想する」。ブルガリア出身のベセリン・ローランスキーさん(26)=アジア太平洋マネジメント学部(APM)=は日本への思いをこう語る。「日本人は勤勉だし、頼りがいがある。来日してまだ日が浅いけど、この...
「日本のファッションはちょっと古くないですか。色合いやデザインが」。サモア出身のエドナ・ティメセさん(22)=APS=は、日本の若い女性のファッションを見てこう分析する。ティメセさんの指摘は当たっている。というのも今、20年ほど前の流行が...
「向こうの学生寮は今よりもっと広かったし、眺めも最高だった」。カメルーン出身のレオネル・ケチェメンさん(21)=APM=は自慢げに話す。 現地の国立大学でロボット工学を専攻。エンジニアを目指していた。教育一家に育ち、国内では模範的優等...
中国語の吉本智慧子教授は、もう1つの名を、愛新覚羅ウルヒチュン(烏拉煕春)という。 作家の司馬遼太郎さんは、著書「韃靼たったん疾風録」の中で、「彼女は知的で、実に美しく、日本でも少なくなった...
「日本経済の将来」と題したリポートが配られた。ゼミ「アジア太平洋地域理解」の始まりだ。出席者はインド、アメリカ、中国、ネパール、ブルガリア、ベトナム、マレーシア、スリランカなど15カ国の15人。リポートを共同作成したタイとリトアニアの学生...
学校帰りの韓国人学生4人が、JR日豊線亀川駅のホームでおしゃべりに熱中しているところに、お年寄りが近づいてきた。お年寄りは学生の1人に顔を寄せて言った。「あんた、ミホちゃんじゃろ」。きょとんとする韓国人学生。お年寄りは「違うんかえ。アハハ...
カルチュラル・スタディーズ(民族文化研究)の講義が始まった。真剣にメモを取る前列とは対照的に、後方に居眠りする学生の姿も。 「受講姿勢の差は、英語力の差で仕方がない。1年たつと、英語で高度な質問をするまでになる。今の二回生がそうだ」。...
52カ国、現在1,660人。学生たちのほぼ全員が、共通に学ぶ基礎教育科目がある。「アジア太平洋と人権」だ。 日本のODA(政府開発援助)が講義の焦点になっていた。国際学生10人余りの小教室。シラペット・スーダリーさん(23)=ラオス出...
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