タイ短期研修で一歩踏み出す勇気と国際感覚を掴んだ5人の玉川大学生

<タイ研修報告会で発表した5人の玉川大学生>
国際社会での体験機会などを増やすことによって、企業がグローバル事業で活躍する人材に求める素質や知識・能力を育もうと、玉川大学(東京都町田市/学長:小原一仁)のカリキュラム「国際研究A~C」における現地研修が2月にタイで実施されました。
参加した学生らは、英語におけるコミュニケーションの大切さなどを中心に、海外研修の重要性について身をもって感じたようで、5月に学内でその報告会が行われました。

<タイの大学を訪問する5人の学生>
現地大学との交流、企業視察
この海外研修は、海外企業や大学の視察や交流を通じ、参加学生が自らの専攻と将来のキャリアデザインを明確にすると同時に、国際社会の体験、現地のものづくり産業の実態や歴史的・文化的な知識を蓄積する目的で行われています。
今回参加した学生は5人で、4人が工学部情報通信工学科で4年の松前侑香さんと3年の鈴木志空さん、松居蒼透さん、新林大弥さんで、残りの1人が経営学部国際経営学科から3年の松島貴也さんでした。
幼少時に海外を訪れた経験のある人もいましたが、実質的には全員がほぼ初の海外体験でした。工学部の学生は現地大学生と一緒に取り組むワークショップで,主体性や課題発見力、現地の大学生との意見や立場の違いを聞き、理解する傾聴力や柔軟性なども求められることになります。

<マヒドン大学への訪問>
研修日程で最初に訪れたのはバンコクにも近いナコンパトム県サラヤにあるマヒドン大学工学部。3日間の日程で工学部の教授や学生と交流しました。学生との交流では、レゴブロックを使ってどんなものを造るかを検討する創作活動が行われ、玉川大学の学生とマヒドン大学の学生が英語や時にボディランゲージなどを交えながら意見交換し、創作を進めました。
医用工学やリハビリテーション工学、福祉機器(医療ロボットなど)の研究で国際的に知られるジャクリット・スサコン教授の研究室でロボットの見学も。新林さんは「医療に精通したさまざまなロボットがあり、大変興味深かった」と言います。

<マヒドン大学の見学と交流>
後半の2日間で訪れたのは、バンコクの北側にあるカセサート大学。自分で考えて動く自律移動型ロボットによる競技会ある「ロボカップ」に例年参加し、そのハイレベルさで、日本でも知られるチーム「SKUBA」によるロボット競技の実演が行われ、情報通信工学科の学生らには大いに刺激になったようです。
企業研修ではホンダ(Honda)のタイ工場、ソフトウェアの開発・サービスを手掛ける「RUNEXY」社を訪れました。ホンダでは二輪車を組み立てる工程や車の部品を鋳造しているところを見学。現地で働く日本人社員に海外での仕事について尋ねたそうです。RUNEXYでもソフトウェア開発に携わる社員やインターン中の現地学生に話を聞けたことが貴重な経験になったといいます。
研修は現地集合、現地解散なのですが、実は日程前に全員が現地入り。これは情報通信工学科の「ロボティクスラボ」に昨秋、タイから来日し、ともに学んだプラウドさんと再会するため。5人はバンコクのチャオプラヤー川沿いにあるタイ最大級の大型商業施設「アイコンサイアム」に行ったり、三輪タクシー「トゥクトゥク」に乗ったり。タイの環境に研修前から馴染んだ上、プラウドさんは日本語が話せないため、全員英語でのやり取りを余儀なくされ、英語を駆使すること、言葉だけではなく相手に意思を疎通させることに研修前から注力しました。この時点で全員が英語でのコミュニケーションの大切さを実感したようです。
現地でのあれこれと英語でのコミュニケーションの大切さ
こうした経験を通じ、松前さんは「ゆっくりとした英語でも大丈夫」と実感したと言います。大学生や大学の先生、ドライバー、カフェの店員……、タイ在留中はあらゆる人との出会いがありましたが、「相手の皆さんがコミュニケーションを取ろうと協力してくれました」と証言しました。
「ある屋台で、掲示物に『6バーツ』と書いてあった食べ物が8バーツでした。屋台のおばちゃんはきっと初めから『8バーツ』と言ってくれていたのだと思います。聞く耳が悪かったのか、話す側の発音が悪かったのかは分かりませんが、掲示物にあるから6バーツと思い込んで、その後も8バーツと言っていることすら聞き取れませんでした。ボディランゲージや手で8と示してくれてようやく理解できました」(松前さん)

<松前侑香さんのプレゼン>
研修に行く前は「ゆっくりとしたスピードでないと英語の理解が追い付かないことにコンプレックスがあった」と松前さんは話しますが、「ゆっくりと単語を1つ1つ話す方が伝わりやすく、強調を入れるなど感情を込めて話す方が円滑なコミュニケーションにつながることを学びました」と明かします。込み入った話の際には、スマートフォンの翻訳機能が役立ちましたが、松前さんは「細かいニュアンスをすぐに英語にできることももちろん大事ですが、ゆっくりで間違っても(きちんと伝えようとすれば)伝わるということを学べたのは大きかった」と話しました。
松居さんは滞在ホテルの部屋で、クローゼットの扉が外れるトラブルがあり、そのことをフロントの人に「伝えるのがちょっと大変だった」そうです。松居さんもボディランゲージなどで意思を疎通できたことで、「言葉のコミュニケーションが必要なことと同時に、言葉以外のコミュニケーションもやっぱり重要だな、と感じました」と話しました。

<松居蒼透さんのプレゼン>
新林さんはマヒドン大学の学生とバスケットボールに興じた際に同様のことを感じたそうです。大学の研修では教員や学生に関わらず、英語が流暢な人が大半だった一方で、現地コンビニの店員は英語が通じないことも多かったとか。「コンビニエンスストアではほとんど『コップンクラップ』(ありがとう)で。レジ袋が必要な場合などはボディランゲージで押し通した気がします」と新林さん。そのことから「英語の自分のリスニング能力のなさを痛感し、英語を改めて勉強しようと思いました」と今後を見据えています。

<新林大弥さんのプレゼン>
鈴木さんは現地で道に迷った際に警察とバイクに二人乗りしたことを明かしました。
マヒドン大学から晩御飯を食べる予定の店まで歩いた際、地図アプリでは、何らかの施設内を突っ切っていくルートが示されていました。施設の門には警察官が立っていたため、入っていいのか迷いながら尋ねたところ、警察官はバイクの後部座席に「乗れ」と鈴木さんを送ってくれる経験をしたとのこと。結局、通行に問題はなかったのですが、警察官はタイ語で喋っていたため、言語でのコミュニケーションは難しかったそうですが、「少なくとも日本人同士でいる際もなるべく英語で話すようにすれば、いざ英語で喋る際もスムーズに言葉が出ると気付きました」とは鈴木さんの弁です。

<鈴木志空さんのプレゼン>
タイの文化と日本
タイの文化についても学ぶことが多かった今回の現地研修。バンコクの平均年収は約140万~280万円で、日本に比べると低いですが、タイ全体の70万~120万円よりは高くなっています。松前さんによると「マヒドン大学の近くの屋台はすごく安かった」といい、屋台では汁なし麺が40バーツ(約192円)、カオマンガイが50バーツ(約240円)、レバー串焼きが10バーツ(約48円)と安価だったそう。
また王宮(ワット・プラケオ)や涅槃寺(ワット・ポー)は非常に人が多く、観光エリアは「世界水準の環境が整えられており、大勢の人を並ばせる列の案内や、清掃も行き届いていた」と松前さん。王宮はタイ在住の人は無料で入場できるため、二重価格制度が採用されていることにもある種の驚きがあったようです。
日本にも馴染みのある店舗が多いタイ。松居さんは「セブン-イレブンは繁華街だけでなく郊外にもあった」といいます。
タイ料理のスパイス使用量の多さに驚いたのは新林さん。「慣れていないせいもあって食べるのに苦労した」と振り返ります。
家族や友人と料理をシェアして食べるタイの「共食」文化を感じたのは松島さん。食事しながらコミュニケーションを取る食事会は3時間ほど続いたと言います。経営学の観点から、広告看板などに注目しつつバンコクの繁華街を歩いたそうで、日本との違いを学んだそうです。
また日本人が普段の慣習とは異なる行動をした異邦人を見掛ける際に抱く嫌悪感にも似た感情は、日本人が海外に出掛けた場合も同様で、そうした意味でも海外研修の意義があったようです。

<松島貴也さんのプレゼン>
研修を経ての気付きや取り組み
10日間のタイでの現地研修を通じ、松前さんは「普段は毎日勉強や作業をしなきゃいけないと考えていましたが、別に毎日頑張らなくても、自分のペースでもいいと思えるようになりました」と明かします。また英会話に関しては「英語の文章を聞いたり見たりした際に、すぐに日本語に翻訳してしまうことが癖になっていた。英語で聞いた言葉を(そのまま英語で)紙に書き出すなどの練習をすることで(癖を)改善していきたい」と話します。実際、帰国後に海外の男性に話し掛けられた際には「とっさに英語が出ました。友達になろうと言われたことに関してはお断りしましたが(笑)。自分の言葉で、英語でコミュニケーションを取れました」と研修での成果を感じたそうです。初めての海外経験で「人は自分が普通だと思いがちだけれど、世界にはさまざまな人や考え方があることを念頭に置いておく必要がある」ことを再認識できたと言います。

新林さんはタイでの研修でその力が足りないことを痛感し、TOEIC®の勉強を始めたそう。鈴木さんは、日本ではなくタイだからこそできた食べ物やあらゆる生き物たちとの出会いを通じ、「1歩踏み出して楽しむことも大切」と体験の大切さを学んだそうです。ただ、2月とはいえ「現地は暑すぎるので日傘とハンディファンは必須」と話したほか、翻訳機能をはじめとするスマートフォンの便利さを享受するには、海外で使える「eSIM」を持って行っても、使い方を調べようとすると海外現地ではスマートフォン自体が使えないことから、事前にきちんと使えるような設定やプランにしておくことが必須と、今後の海外行きに向けて思いを新たにしたようです。
松居さんは日本に来る外国人に対し「少し寛容になった気がする」と言います。自販機のQRコード決済が分からない外国人がいるのを見掛けた際に、「自分ならすぐにできるのに」などとは考えず、「『自分の常識は相手の非常識』と考えれば」と考え方をシフトしたそうです。
松島さんは「経営学部は英語での授業が多い。国内だと実地で英語を使う機会が少ないので、しっかりと10日間英語を使う環境に居られること自体が勉強になる。研修の前後で自分でも明らかに差があるので、学部の後輩にも海外研修を勧めたい」と話しました。

<タイでの市内見学>
参加者全員に意義のあった海外研修
現地で学生を引率した情報通信工学科の堀三晟講師は「参加した学生それぞれが、タイの文化・経済のほか、人々の考え方、大学や企業の取り組みや雰囲気を感じ取れていたと思う」と指摘。「インターネットや書籍で学ぶのとは異なり、実際に現地に赴いて現地の空気を吸い、現地の人々と話をしたからこそ得られたものがあったのではないか」と海外研修の意義を強調します。研修の初期は言語のハードルや緊張などから、学生の固さを感じ取ったようですが、「現地の学生や教員、企業の方々と、英語で何とかコミュニケーションを取ろうとする姿勢が次第に強まっていく様子を、この研修で毎年感じます。英語でやりとりする際、完璧ではなくても自分の英語が相手に伝わり、何を言いたいか理解してもらえるという経験は、学生らには貴重なもの。研修自体は10日程度と短いものの、英語を話すハードルを下げるには十分だった」と話します。
西野順二准教授は「海外体験は言葉が通じないことからスタートし、文化や慣習の全てが日本と違うことに学生たちが戸惑うことが大半ですが、外から日本と比較するいい機会になった」と指摘。現地学生との交流などを通じ、「国際理解の原点が人と人との共感と理解にあることを身体で感じていたようで、国際活動の基本を体得する良い研修となった」と話しました。
相馬正宜教授は、研修報告会を聴いて「単に語学への意識が高まった、外国の方と話せるようになったという表面的な変化にとどまらず、より深いところで学生の皆さんに変化があったのではないか」と思ったといいます。「チャレンジする気持ちを持って参加し、自ら行動した学生、また一定期間の経験を通して自分の生き方や将来を見つめ直した学生もいたように思います。すぐに目に見える成果だけでなく、内面的な成長につながる機会として、この研修が今後も学生の力になってくれることを期待しています」と今後への期待を述べました。

<タイ研修発表会後の集合写真>
●関連情報
玉川大学工学部情報通信工学科
https://www.tamagawa.ac.jp/college_of_engineering/it/
玉川大学経営学部国際経営学科
https://www.tamagawa.ac.jp/business_administration/index.html
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