墨田川造船様のジブチ共和国向け巡視艇輸送プロジェクト
―日本の造船業発展と、アフリカの海上安全保障を支える―
コロナ禍でのサプライチェーンの混乱に加えて、紅海およびその周辺海域における情勢が緊迫化する中、日本で建造された1隻で100トンにも及ぶ巡視艇をアフリカ・ジブチ共和国(以下、ジブチ)へ届ける輸送プロジェクトが2020年に動き出しました。見積もりを開始してから輸送が完了するまで約5年の歳月を要し、多くの課題に直面しながらも一つひとつ乗り越えた、高度な輸送プロジェクトのストーリーです。
プロジェクト概要

本案件は、小型高速船、特に公船といわれる特殊分野の船を多数手掛ける墨田川造船株式会社様(以下、墨田川造船様)が建造した巡視艇2隻を、ジブチ向けに輸送するODA(政府開発援助)の一環であり、日本の造船技術がアフリカの海上安全保障を支える重要なプロジェクトでした。2020年、当社は墨田川造船様からの新たな見積もりのご依頼をきっかけに、お客さまとの緊密な連携を開始しました。さまざまなコストの調査や輸送工程の確認、ジブチまでの輸送を経て、プロジェクトが無事に完了するまでに約5年という長い年月を要しました。
刻々と変化する国際情勢の影響を大きく受ける中で、巡視艇の輸送を安全かつ迅速に完遂するため、部材の梱包、造船所での他所蔵置許可申請、輸出通関、在来船による海上輸送、ジブチ側での輸入通関、荷揚げ、配送、開梱までを当社が一気通貫で手配しました。
最大の課題:不確実性への対応
紅海情勢が悪化する中での船会社選定
巡視艇のような小型の船舶は、燃料タンクの容量が限られることから航続距離が短く、日本からジブチまでといった長距離輸送となる場合、在来船を利用して輸送します。
当社はプロジェクト開始後からすぐに複数の船会社と輸送に関する協議を進めていましたが、2023年、紅海での武力衝突を背 景に、スエズ運河経由や紅海周辺への航路を停止する船会社が相次ぎました。ジブチはスエズ運河を南下した紅海の入口に位置しており、紅海情勢の影響を大きく受ける国の一つです。当時交渉を進めていた船会社からも「紅海情勢が落ち着くまでは受託できない」との連絡が入り、それまでの輸送計画が白紙となってしまいました。

巡視艇と一緒に輸送した付属品および補用品
ジブチに無事に巡視艇を送り届けるため、多くの船会社との交渉を忍耐強く続けながらも、対応できる船会社が見つからない状況が続きました。日本にいる当社の関係者だけでなく、海外法人とも連携しながら何社もの船会社に粘り強く交渉を重ねた結果、ようやく輸送できる船会社を見つけ出すことができました。船会社の選定が完了したのもつかの間、海上運賃やトランジットタイムの確認、荷役作業の確認など実際の輸送に関する多くの調整が待っていました。特に巡視艇は1隻で100トンにも及ぶ重量があったため、積み込みや積み降ろしに必要な設備、方法など安全な荷役作業を行うための協議を重ねました。
ジブチ側での受け入れ体制構築
郵船ロジスティクスは、ジブチに現地法人や代理店を有していないため、荷役会社の決定、港湾局との調整、輸入通関など、現地側での受け入れ体制を一から構築する必要がありました。さらに、本船の出港スケジュールが迫る中、現地側の準備が整わなければ輸送そのものが成立しない状況にあり、早急な対応が求められました。
いち早く体制を整えるため、日本郵船グループのネットワークも活用し、最適なパートナーの選定を行いました。巡視艇は100トンもの重量があり、ジブチ側の荷役作業にも細心の注意が必要です。そこで私たちは重量物の取り扱い実績が豊富な企業を探しました。その中で、日本郵船グループと取引があったAfrica Global Logisticsグループ が有力な候補として浮上し、関係者を通じて即座に交渉を開始しました。プロジェクトの背景や巡視艇輸送の特殊性、現地で必要な手配について丁寧に交渉を重ねた結果、無事にAfrica Global Logistics Djiboutiとの契約締結に至りました。ジブチ側の受け入れ体制が整ったことで、ようやく巡視艇2隻を日本から出荷することができるようになりました。

当社SCS事業本部複合輸送事業部プロジェクト・カーゴ課の青柳 裕公(中央)とAfrica Global Logistics Djiboutiの担当者
ジブチで直面した想定外の事態

巡視艇を積んだ本船の到着に合わせ、当社の担当者も現地へ向かい、輸入の手配に立ち合いました。しかし、本船着岸の直前にバースが変更になったとの一報を受け、急いで状況を確認したところ、荷役会社に輸送に関する情報が一切共有されておらず、荷揚げ作業の準備が整っていないことが判明しました。本船は既に入港しており、荷役が開始できなければ引き渡しのスケジュールに影響が及ぶ可能性がありました。当社の担当者は、直ちに荷役会社の責任者に連絡を取り、必要な手配内容を一つずつ指示しながら、慎重に巡視艇の荷揚げを進めました。さらに、荷揚げ後には、現地の港湾局から港湾費用に関する請求書が発行されないため支払いが行えず、巡視艇2隻の付属品および補用品が港湾地区から搬出できない事態が発生しました。付属品や補用品が港内に留め置かれ、このままでは追加費用や引き渡しの遅延につながる恐れがありましたが、Africa Global Logistics Djiboutiと連携し、港湾局の窓口に繰り返し足を運びながら、請求書の発行状況を確認し、直接交渉を行いました。その結果ようやく請求書を入手することができ、即時に支払いを済ませ、無事に付属品や補用品を港湾地区から搬出することができました。
墨田川造船様との輸送プロジェクトが始動してから5年。無事にジブチで巡視艇を引き渡すことができ、アフリカの海上安全保障を物流で支える重要な役割を果たしました。巡視艇の引き渡しを行った際の様子は、現地の国営放送でも放送されました。
お客さまの声
郵船ロジスティクス様には、ジブチへの巡視艇輸送の計画段階から大変お世話になり、深く感謝しております。弊社にとっては久しぶりの輸出船で、手続きなど分からないことばかりでしたが、手取り足取り丁寧に対応していただきました。横浜港での積み込み、ジブチ港での積み降ろしもスムーズで、2隻の巡視艇が無事にジブチ港へ係船されたときは心から安堵しました。灼熱のジブチ港ではトラブルもありましたが、担当の青柳さんが夜遅くまで港に残って港湾当局と粘り強く交渉してくださいました。無事に全ての荷物が港湾地区から搬出された後、宿舎で交わした祝杯は最高においしかったです。
本当にありがとうございました。

接岸の様子
船舶をはじめ、重量・長大貨物の輸送案件では、プロジェクトをワンストップで引き受けられる実行力や長年にわたる豊富な実績が重要です。私たちは、船舶以外にも発電設備や鉄道車両など、さまざまなプロジェクトカーゴの輸送をサポートしてきました。
2026年、郵船ロジスティクスグループは、アフリカ最大級の規模を誇るAfrica Global Logisticsの子会社であるAfrica Global Logistics Kenyaとの合弁会社、Yusen Africa (East Africa) Limitedを設立しました。今後日本の船舶海事産業がさらに発展していく中で、これまでのプロジェクト輸送で培った知見を駆使し、ケニアや周辺国をはじめとするアフリカ地域においても、より広範なグローバルネットワークを生かした最適なロジスティクスサービスを提供していきます。
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ジブチでの巡視艇引き渡しの様子※外部サイト(YouTube)に遷移します。
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