「作る」の前に、地域を知る。天草市の課題に挑む学生が学んだ、デザインとデジタル制作の視点

天草市、専門学校HAL、ワコムによる産官学連携プロジェクトは、専門学校HALの学生が、天草市の各部署から提示された地域課題に対し、デザインやデジタルコンテンツ制作の力で向き合う取り組みです。学生たちはチームごとに課題を選び、Webページデザイン、若者向けのチラシデザイン、ブランドムービー、地域産品や観光資源のPRに関する販促物などの制作に取り組み、最終的には優秀作品の選出も予定されています。


制作物をつくる前に、地域の課題や届ける相手をどう捉えるか。今回、本プロジェクトの一環として、天草市を拠点に活動するデザイン事務所 OFDOの江頭隆太さんを講師に迎え、学生に向けたオンラインセミナーを実施しました。


本プロジェクトでは、学生たちがアイデアを整理し、ラフを描き、制作物として仕上げていくための環境として、ワコムのペンタブレットや液晶ペンタブレットなども活用されます。デジタルで「描く」「書く」体験を支えるワコムは、制作環境の面から本プロジェクトに参画しています。


地域に必要とされるデザインは、対話から生まれる

OFDOのローカルデザイナー、江頭隆太さん


江頭さんは、佐賀県出身。福岡の制作会社や広告代理店で経験を積んだ後、天草市へ移住しました。現在はOFDOのローカルデザイナーとして、ロゴ、グラフィック、Webなどのデザインに加え、商品開発やアドバイザーなど、幅広い領域で地域の事業者や行政の課題に伴走するデザインに取り組んでいます。


セミナーで江頭さんが学生たちに伝えたのは、依頼されたものをそのまま形にするだけでなく、その先にある目的まで一緒に考えることの大切さでした。


たとえば「チラシを作りたい」という相談があったとき、その背景には、もっと多くの人に来てほしい、商品の魅力を知ってほしい、地域の取り組みを次につなげたいなど、さまざまな思いがあります。だからこそ、まずは対話を重ね、何を、誰に、どのように届けるべきかを整理していく。そのプロセスが、地域に必要とされるデザインを考える手がかりになります。


依頼の背景を掘り下げ、制作へつなげるローカルデザイナーの役割


江頭さんは、天草の農産物をもとにした商品開発や、農園の売り場づくり、地域の人や事業者が抱える課題を出発点にした企画など、自身が手がけてきた取り組みを紹介しました。


江頭さんが手がけた地域産品のデザイン事例


いずれの事例にも共通していたのは、見た目を整えることから始めるのではなく、地域や事業者が抱える課題を丁寧に見つめる姿勢です。商品やサービスの背景にあるストーリー、地域に根づいた文化、人と人との関係性を掘り起こし、そこからコンセプトや表現へとつなげていく。そのプロセスは、今回プロジェクトに参加する学生たちにとっても、制作の大きなヒントとなりました。


外の視点で気づく、天草の魅力

江頭さんは、天草の魅力について、自然や食材の豊かさだけではなく、そこに暮らす人や、島として育まれてきた独自の文化にも触れました。橋でつながっている一方で、もともとは島である天草には、外から訪れただけでは見えにくい地域の空気や人との関係性があります。


一方で、天草の外にいる学生だからこそ、地域の人が当たり前に感じていることを新鮮に受け止められる面もあります。江頭さんは、外から見た視点を制作に取り入れることにも期待を寄せていました。


考える、描く、整える。デジタル制作を支えるペンタブレットの使われ方

セミナーでは、江頭さんが地域に根ざしたデザインの考え方に加えて、デザイナーの実務でペンタブレットや液晶ペンタブレットをどのように活用しているかにも触れました。


江頭さんは、ペンタブレットはイラストを描くためだけの道具ではなく、デジタル制作のさまざまな工程でデザイナーの仕事を支えるツールでもあると話します。


デザイナーにとって、思考を整理することも大切な仕事の一つです。見た目のかっこよさだけを手がかりにするのではなく、課題の背景や目的、そこにあるストーリーや文脈を深掘りし、見える化すること。その積み重ねが、新しい付加価値やアイデアにつながっていきます。


ペンタブレットや液晶ペンタブレットは、そうした思考整理の場面でも活用できます。手で書く感覚でキーワードやラフをデジタル上に残すことで、考えたことをその後の制作にもつなげやすくなります。


また、江頭さんは自身の経験をもとに、Adobe Illustratorなどのデザインツールでパスを使ってイラストやロゴを制作する場面についても紹介しました。パスで制作した線や形は、後から調整しやすく、サイズを変えてもきれいに展開しやすいという特徴があります。商業デザインの現場では、制作物を名刺、ポスター、Web、グッズなどさまざまな媒体に展開することもあるため、修正や再利用を見据えたデータづくりが助けになることもあります。


写真の切り抜きやマスク作成、画像処理など、商業デザインの現場で日常的に発生する作業でも、ペンを使うことで直感的に操作しやすくなります。


地域の課題を知り、目的を考え、アイデアを描き出し、制作物として仕上げていく。今回のプロジェクトでは、ワコムのペンタブレットや液晶ペンタブレットなどのデジタル制作環境が、学生たちのアイデアを具体的な表現へとつなげるための土台になります。


地域課題と向き合う、制作の第一歩

江頭さんは学生たちに向けて、デザインは目的を実現するための手段であり、「これは誰のためにやるのか」を常に意識することが大切だと伝えました。


今回のプロジェクトで学生たちが制作するWebページ、チラシ、ムービー、販促物などは、いずれも地域の魅力や課題と向き合うところから始まります。見た目を整えるだけではなく、背景を知り、届ける相手を想像し、何を伝えるべきかを考える。その積み重ねが、地域とクリエイティブをつなぐ表現につながっていきます。


天草市の地域課題に、デジタルクリエイティブを学ぶ学生たちが向き合う本プロジェクト。地域の現場を知るデザイナーの視点に触れ、制作環境を活用しながら、学生たちがどのような表現へとつなげていくのか。今後の制作に期待が高まります。





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