【対談連載・第1回】“介護の会社が上場する”という地方創生。地域サービスを止めないために、孫の手と日本M&Aセンターが語る「地方企業の上場」という選択
本記事は、株式会社孫の手と日本M&Aセンターによる全3回の対談連載「“介護の会社が上場する”という地方創生」の第1回です。
第1回では、群馬県太田市を拠点に介護・看護・生活支援サービスを展開する孫の手が、なぜTOKYO PRO Market上場を選んだのか。
地域に必要なサービスを止めないための経営基盤づくりという視点から、浦野社長の想いと、日本M&Aセンターが考える地方企業の存続と発展についてお届けします。
_______________________________________

地方創生とは、特別なプロジェクトだけを指す言葉ではない。
地域で暮らす人の毎日を支える会社が残り、雇用が守られ、必要なサービスが次の世代へ続いていくこと。
それもまた、地方の未来をつくる大切な営みだ。
介護人材の確保は、全国的な課題となっている。厚生労働省は、第9期介護保険事業計画に基づき、介護職員の必要数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人になると公表している。
地域の介護・看護・生活支援をどう守り続けるかは、一事業者だけでなく、地域社会全体に関わるテーマになっている。
群馬県太田市を拠点に、介護・看護・生活支援サービスを展開してきた株式会社孫の手は、2026年、東京証券取引所 TOKYO PRO Market上場という節目を迎えた。
しかし、その上場は「会社を大きく見せるため」のものではなかった。
地域に必要なサービスを続けるため。
働く人たちが安心して誇りを持てる会社にするため。
そして、創業者個人に依存しない形で、孫の手という会社を次の世代につないでいくため。
その根底にあるのが、孫の手が掲げる経営理念「人生楽しむべし」だ。
介護を受ける方も、支えるご家族も、現場で働くスタッフも、それぞれの人生を前向きに楽しめるように。
孫の手にとって上場は、その理念を地域に根づいた事業として続けていくための選択でもあった。
その歩みに伴走したのが、東京証券取引所認定J-Adviserとして上場指導・上場審査を担当した日本M&Aセンターだ。
同社は、企業の「存続と発展」への貢献を理念に掲げ、経営者、従業員とその家族の想いをつなぎ、成約から成功、そして成長まで伴走する姿勢を大切にしている。
“介護の会社が上場する”ということは、何を意味するのか。
孫の手 代表取締役社長 浦野幸子氏と、日本M&Aセンター 上席執行役員 資本市場統括部長 雨森良治氏が、地方企業の上場、地域サービスの継続、そして地方創生の新しいかたちについて語った。
_______________________________________
地域に必要な介護サービスを守るために、上場で強い会社に
2026年3月6日、孫の手は東京証券取引所 TOKYO PRO Market(*)へ上場を果たした。
また、同社の本社所在地である群馬県太田市の中で唯一の上場企業にもなった。

(*)TOKYO PRO Marketは、東京証券取引所が運営するプロ投資家限定の株式市場。
プライムやグロース市場とは異なる独自の基準を持ち、個人では株式を取引できないものの、上場すれば厳しい審査をクリアした“東証上場企業”としてお墨付きが得られる。
雨森氏は、孫の手の上場について「単に会社が上場したという出来事にとどまるものではない」と語る。
雨森氏
「孫の手様のTOKYO PRO Market上場には、地域に必要な介護サービスをどう守り続けるのか、働く人たちが安心して誇りを持てる会社をどうつくるのか、そして地域に根ざした会社を次の世代へどうつないでいくのか。そうした地方企業の課題や、地方創生にもつながる大切なテーマが込められていると感じています。」
地域サービスを守り続けるためには、想いだけでなく、会社としての力が必要になる。
介護・看護・生活支援は、人が支えるサービスだ。
だからこそ、採用力を高め、人材が集まる会社であり続けることが欠かせない。
また、ご利用者様やご家族、地域の関係機関、金融機関、取引先から信頼される会社であることも重要になる。
さらに、創業者個人の判断や想いだけに依存するのではなく、組織として意思決定し、事業を継続できる体制を整えることも必要だ。
孫の手にとって上場は、採用力・信用力・組織力を高め、地域に必要なサービスを止めないための経営基盤づくりでもあった。
浦野氏
「上場するにあたって一番の想いとしては、これまでやってきたことの集大成を、より確かなものにしていきたいということがありました。
孫の手を2001年に創業して以来、私たちは、介護というものは本来こうあるべきではないか、という想いを持って事業を続けてきました。それを一時的なものにするのではなく、きちんと存続できるようにしたい。地域から愛される会社であり続けたい。そのための選択肢として、上場がありました。」
介護は、地域の暮らしに深く入り込むサービスだ。
ご利用者様本人だけでなく、そのご家族、地域の医療機関、ケアマネジャー、そして働くスタッフの生活にも関わる。
地域に必要なサービスを守るとは、単に今ある事業を続けることだけではない。
人が集まり、会社が信頼され、組織として次の世代へ引き継げる状態をつくること
孫の手は、そのための一歩としてTOKYO PRO Market上場を選んだ。
_______________________________________
「想い」と「経営」のどちらも大切にする介護経営
介護事業は、社会的な意義が大きい一方で、人材確保や経営面の難しさも抱えている。
高齢化が進むなか、介護は「成長産業」と言われることもある。しかし浦野氏は、その見方だけでは介護の本質を捉えきれないと話す。
浦野氏
「介護で上場というと、少し珍しいというか、なじみにくいと感じる方もいると思います。
ただ、介護は今の日本社会にとって大きな課題です。創業時は「人のために」という想いだけで走ってきました。でも、今は想いだけでもだめですし、売上や実績だけでも違うと思っています。
介護に対する想いと、事業として継続するための経営。その両方を大切にしていくことが必要だと発信していきたかったんです。」
介護業界では、ご利用者様本位のサービスを大切にするあまり、経営や数値管理が後回しになることもある。
一方で、数値や効率だけを追えば、現場で働く人たちが大切にしている介護の本質が失われてしまう。
孫の手が目指してきたのは、そのどちらにも偏らない介護経営だ。

雨森氏
「介護に対する想いだけでもだめで、数字だけを追っていてもだめ。その両方を成り立たせるために会社を良くして、上場を目指されたということですね。」
浦野氏
「はい。今は介護事業が成長産業として語られ、経営面がクローズアップされやすいと思います。でも、想いを忘れてはいけない。そう言えるとしたら、私たちではないかという気持ちもありました。」
「人生楽しむべし」という理念を地域の中で実現し続けるためには、温かい想いと、事業を続けるための経営基盤の両方が必要になる。
孫の手にとって上場は、その軸を会社全体で共有し、次の成長へつなげていくための選択でもあった。
_______________________________________
「浦野の会社」から「孫の手という組織」へ
今回の上場について、浦野氏が繰り返し語ったのが、会社の永続性だった。
創業者の想いや判断力で成長してきた会社は、強い推進力を持つ。
しかし、会社が大きくなり、社員数が増え、地域に対する責任が大きくなればなるほど、創業者個人に依存し続けることには限界がある。

浦野氏
「創業当時から、孫の手は「浦野の会社」として走ってきた部分がありました。
でも、認知度という意味では、どんな方にも「浦野の会社」ではなく、「孫の手」という会社としてしっかり分かっていただく必要があると思っていました。」
上場は、そのためのきっかけでもあった。
浦野氏
「私が退任した時に、そこにいる従業員はどうなるのか。その時の成長戦略をどうするのか。管理体制や経営体制をどう構築するのか。
それは、私の責務だと思っています。孫の手を永く残していきたいのであれば、上場という一つのきっかけを活用することが必要だと考えました。」
雨森氏も、地方企業における上場の意味を、会社の信用を個人ではなく組織に移していくことだと捉えている。
雨森氏
「社長がスーパーマンで、その社長がいなくなったら終わり、ではいけません。会社そのものに信用を持ってもらうことが非常に大事です。
地方に残る会社が使命感を持ち、透明性を持って地域の人たちに支持される。そのためのツールとして、TOKYO PRO Market上場は有効な選択肢だと思っています。」
創業者の想いを残しながら、会社としての仕組みを整える。
個人の信用だけでなく、組織として信頼される会社になる。
それは、地域に必要なサービスを長く続けるためにも欠かせない変化だった。
_______________________________________
会社の中身が見えることが、地域からの信頼につながる
日本M&AセンターがTOKYO PRO Market上場支援に取り組む背景には、地方企業への強い想いがある。

雨森氏
「私たちが一番大事にしているのは、地方の有力企業にしっかり成長してほしい、そしてその地域を代表する企業になってほしいという想いです。
これから人口が減っていく中で、地方が厳しい状況になるかもしれない。そういう時に、地方に残った会社が使命感と透明性を持ち、地域の人たちに支持される企業として残っていくことが、日本にとって非常に大事だと思っています。」
ここでいう透明性とは、単に情報を公開することだけを指すものではない。
自社がどのような事業を行っているのか。どのような体制で経営されているのか。どのような考え方で成長しようとしているのか。
そうした会社の中身を、社員、求職者、取引先、金融機関、地域社会に対して説明できる状態にしていくことが、透明性を高めるということだ。
会社の中身が見えるようになれば、求職者は安心して応募しやすくなる。
金融機関や取引先は、将来を見据えた関係を築きやすくなる。
地域の人たちは、その会社がこれからも地域に残り、必要なサービスを担い続けてくれる存在だと感じやすくなる。
その信頼の積み重ねが、雇用を守り、サービスを続け、地域の暮らしを支えることにつながる。
だからこそ、地方企業が透明性を持って残ることは、地方創生にもつながっていく。
_______________________________________
上場は、地域に必要な会社であり続けるためのスタート
浦野氏は、上場を「ゴール」ではなく「スタート」と捉えている。
浦野氏
「TOKYO PRO Marketを選んだのは、まず認知度や信用度を高め、しっかりとした公的な会社としてスタートラインに立つためです。
介護は人がメインの事業です。資金調達だけではなく、人が集まってこなければ意味がありません。だからこそ、会社としての信用を高めることが大切だと考えました。」
上場によって、孫の手はより多くの人に知られる会社になった。
だが、それは会社を大きく見せるためではない。
地域に必要なサービスを続けるために、会社として強くなる。
働く人たちが安心して働き続けられる会社にする。
ご利用者様やご家族から「孫の手があるから大丈夫」と思ってもらえる地域を増やしていく。
それが、孫の手が上場に込めた想いだった。
浦野氏
「私たちは、その地域の人から「孫の手があるから大丈夫だよ」と言われる場所を増やしていきたいと思っています。
世代も変わっていく中で、介護を必要とする方々のニーズも変化していきます。その変化にきちんと合わせながら、地域に必要とされる会社であり続けたいです。」
今回の対談で見えてきたのは、TOKYO PRO Market上場が、単なる資本市場への挑戦ではないということだった。
それは、地域企業が自社の信用力を高める手段であり、創業者個人に依存しない組織へ変わるきっかけであり、地域に必要なサービスを未来へつなぐための選択肢でもある。
雨森氏
「地方企業で、介護で、しっかり成功できるんだという自信を持ってもらう意味でも、孫の手様が上場されたことは非常に意義深いと思います。
今回の上場をきっかけに、孫の手様の取り組みがより広がり、地域に必要な良いサービスが全国にも伝わっていくことを期待しています。」
“介護の会社が上場する”という地方創生。
それは、地域に必要な会社を、未来へ残すための挑戦でもある。

_______________________________________
次回予告
次回は、株式会社孫の手の公式ホームページにて「想いだけでも、数字だけでも、介護は続かない」をテーマに、孫の手が大切にしてきた介護観と、地域介護を継続するための経営・人づくりについて掘り下げます。
第2回対談URL:https://magonote-inc.jp/special-dialogue2/
本対談の模様は、後日、株式会社孫の手公式YouTubeチャンネルでも公開予定です。
記事では、対談内容をテーマごとに再構成しています。お二人の表情や言葉の温度感は、ぜひ動画でもご覧ください。
孫の手公式HP:https://magonote-inc.jp/
日本M&Aセンター公式HP:https://www.nihon-ma.co.jp/
日本M&Aセンター
TOKYO PRO Market上場支援サービスページ:https://www.nihon-ma.co.jp/tokyopromarket/
行動者ストーリー詳細へPR TIMES STORYトップへ