乙丸温泉館 「温かな暮らし」伝える
「温かな暮らし」伝える 地域の絆深める社交場
由布市湯布院町の由布院温泉。多くの観光客が行き交うJR由布院駅前の通りから、少しレトロな外観の「乙丸温泉館」(同町川上)が見える。
由布院温泉は農村の暮らしを残すことで歓楽街とは異なる独自の温泉地を形成してきた。数ある温泉の中でも同館は地元住民に愛され続け、古き良き温泉文化を色濃く伝える。
玄関には薬師如来が祭られている。利用者は入浴料をさい銭箱に入れ、湯の恵みに感謝してから脱衣所に向かう。
単純泉で、源泉掛け流しの天然温泉。常連の斉藤平八さん(81)=同町川上=は「年を重ね体が硬くなったが、ここに漬かると夜までほぐれる。寝付きも良い」。肌への刺激やにおいが少なく、毎日入浴できることも地元住民に好評だ。
夕方になると常連が続々と集まり、「今朝は寒かったなあ」「明日も寒いみたいで」とにぎやかな声が響く。衛藤菊雄さん(76)=同=は「世間話をするのも楽しみの一つ。外国人も来るので出身地を聞いたりして交流している」と話す。古き良き温泉文化は国を超えて人々の心も温める。
同館は1977年に旧湯布院町が建設し、地元の乙丸区が管理する。管理者で乙丸区長の後藤久生さん(71)は「さまざまな世代が集まり、地域の絆を深める大切な場所」と語る。全国的に有名な観光地の中心に、温かな暮らしの一場面が今も残り続けている。
( メモ //) 営業時間は午前6時半~午後10時。休館日は第3木曜日。入浴料200円。源泉は52・7度。男湯と女湯にそれぞれ39度と42度の二つの浴槽がある。問い合わせは乙丸温泉館(TEL0977・84・3573)。
濃さが違う「5種類」 抹茶ジェラート、風呂上がりに
乙丸温泉館からJR由布院駅に向かって徒歩1分。「テ・ラート」の抹茶ジェラートは温泉でほてった体が欲するスイーツだ。地元の「麻生茶舗」を経営する麻生崇良さん(42)が「若い世代にお茶の魅力を伝えたい」と昨年9月に開いた。濃さが違う5種類のジェラートがあり、最も濃い「5倍」は抹茶の深い味わいの中にほんのりと甘さが残る。ほうじ茶や玄米茶のジェラートも並ぶ。営業時間は午前10時半~午後4時半。不定休。問い合わせは同店(TEL0120・37・2539)。