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202042日()

中村哲医師死亡 アフガン支援に信念貫く

中村哲医師死亡 アフガン支援に信念貫く
 アフガニスタンで医療や農業の支援活動を続けてきた福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表、中村哲医師が銃撃され、死亡した。市民による丸腰の支援こそが平和に貢献するという信念を貫き、危険と隣り合わせのアフガン支援に大きな足跡を残した。
 誰がどういった狙いで銃撃したのか詳細は明らかでないが、中村さんは活動拠点を置く東部ナンガルハル州で、宿舎からかんがい作業の現場に向かう途中、乗っていた車が武装集団の銃撃を受け、運転手らとともに犠牲になったという。反政府武装勢力タリバンに加え、過激派組織「イスラム国」(IS)も活動する治安の悪い地域だ。
 中村さんは1984年にパキスタン北西部ペシャワルで医療活動を始め、内戦下のアフガンから国境を越えて来る難民を治療し、91年にアフガンのナンガルハル州に診療所を開いた。2000年の干ばつで感染症が広がると、井戸掘りや用水路建設なども始めた。アフガン政府から18年に勲章を授与され、今年10月には名誉市民権を与えられた。アジアのノーベル賞といわれる「マグサイサイ賞」も受賞した。
 アフガンでは01年9月11日の米中枢同時テロ後に、米軍などの攻撃でタリバン政権が崩壊したが、混迷が続く。今年9月に大統領選が実施されたが、開票作業を巡る対立などで暫定結果の発表さえできていない。
 和平の実現に意欲を燃やすトランプ米大統領は11月に就任後初めてアフガンを予告なしに訪問し、タリバンとの和平協議再開を明らかにしたが、協議が順調に進むか予断を許さない上、和平をにらむ各勢力の動き次第で、情勢が流動化する可能性もある。
 医療にとどまらず、紛争の背景にある水不足や貧困をなくそうとした中村さんの視野の広さと行動力は特筆に値する。干ばつ対策では「平和を取り戻すためには水が必要」と土木工学を独学し、機械を使わず人力による工法を試みた。貧困層の子供のためにマドラサ(イスラム神学校)の建設に乗り出した。
 そうした貴重な経験を踏まえた著作は多くの読者を得ており、農業農村工学会(旧農業土木学会)の学会賞や、城山三郎賞などに選ばれた著書もある。
 危険地帯で支援団体が身の安全をどう確保するかは難しい問題だ。活動を継続するか撤退するか。銃を持った警備を付けるか。判断が分かれることも少なくない。
 ペシャワール会では08年、用水路建設に携わっていた伊藤和也さんが武装勢力に銃撃され、死亡した。それ以降、日本人の現地入りは制限してきたが、中村さんは現場に立ち続けたという。
 中村さんは国会参考人などさまざまな場で、軍事的手段は市民の活動の危険をむしろ高めると説いた。「前は、日本は国連以上に信頼されていた。日本の旗をつけていれば、武装集団に襲われることはなかった。9・11以降は日の丸を揚げていると逆に危なくなった」。安全保障や平和構築を、市民レベルで語り続けた中村さんの言葉をかみしめたい。
2019年12月5日

論説

 

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