献身的に部員を支えたマネジャーの(左から)河越さん、佐藤さん、豊田さん
全国高校野球選手権に大分県代表として臨んだ大分商は、惜しくも2回戦で敗れた。甲子園で輝いたのは、グラウンドに立った選手だけではない。スタンドから声援を送った生徒や家族にとっても、忘れられない夏になった。アルプスから眺めた大分商の甲子園を、取材した記者が振り返る。
3人の3年生マネジャーは、一つの目標があった。「全員が甲子園のベンチに入ろう」。甲子園では3人が交代で記録員を担うことになっており、最低でも2勝する必要があった。しかし、チームは2回戦で敗退。目標はかなわなかった。それでも「これから先も、ずっと宝物になる夏になった」。3人は最後の夏を全力で駆け抜けた。
大分大会でメンバー外だった3年生2人が甲子園ではベンチ入り。選手は3年生18人全員が背番号をもらった。3人のマネジャーは、1回戦は豊田はるかさん、2回戦は河越真歩さん、3回戦は佐藤有咲さんが記録員を務めることになっていた。21人全員が甲子園でベンチ入りするため「必ず2勝しよう」と、思いを一つにした。
1回戦は中盤以降に得点を重ね、逆転勝ちした。豊田さんは「初戦でみんな緊張していた。自分にできることを考え、全力で声を出した」。選手たちは次第に本来の動きを取り戻した。「終盤は甲子園でのプレーを楽しんでいて、私もうれしかった」と振り返った。
2回戦は相手投手を打ち崩せず、チームは敗れた。河越さんは「苦しい場面が多かったけど、誰も下を向いていなかった。私も最後まで前向きな言葉をかけた」。最終回に1点を返す粘りを見せた。
佐藤さんはアルプススタンドから、常に明るい表情で応援した。チャンスではメガホンを大きく振り、ピンチを迎えると「頑張れ」と何度も声を張り上げた。
2回戦で敗れ、選手がスタンド前に整列すると、大粒の涙を流した。「ベンチに入れなくても、21人でやってきたことには変わりない。最後までみんなと同じ気持ちで応援できた。甲子園に連れてきてくれて、ありがとうの気持ちでいっぱい」と感謝を口にした。
時にはぶつかることもあった。2時間以上、泣きながら話し合ったこともあったという。「私たちがぎくしゃくしていたら、選手にも悪影響が出る。小さなことでも思ったことはお互い言葉にした」と河越さん。日を重ねるごとに信頼関係を深めた。
周囲への気配り、先を読む力、責任感、言葉遣い…。3人はたくさんのことを学んだ。豊田さんは「入学した頃は、自分の気持ちを正直に言えなかった。でも、意見を伝える大切さや、どうすれば相手に思いを伝えられるかを学んだ」。選手や指導者との対話を重ね、自分に自信もついた。
佐藤さんも当初はコミュニケーションに苦戦したという。「次第に初めて接する人とも打ち解けられるようになった。相手の気持ちをくみ取れるようにもなった」と成長を実感する。
豊田さんは大学進学、河越さんは美容関係の仕事、佐藤さんはアイリストを目指している。それぞれ別の道へ進むが、共に過ごした経験は、これから先も3人の胸に残り続けるだろう。最後に駆け抜けた夏は、かけがえのない宝物になったはずだ。
(R)