すっかりリラックスし、競技生活を振り返る中西麻耶さん=3日、大分市
パラ陸上女子走り幅跳びの中西麻耶さん(41)=由布市出身=は、競技生活に別れを告げた10月3日夜、大好きなイタリア料理店で、ゆかりの人たちと一緒に食事し、泣いたり笑ったりの時間を過ごした。
会場となった大分市今津留の「LA PACE(ラ パーチェ)は、ジェイリーススタジアムの近くにある、シェフとソムリエの2人で営む小さなレストランだ。さまざまな形で中西さんを応援してきた14人が集まり、中西さんを囲んで乾杯した。店の窓ガラスには、それぞれが中西さんをねぎらうメッセージを書いた。
その右上隅に、とても印象に残る言葉があったので紹介したい。
「進化のスペシャリスト 林あつし」とある。林さんは2021年東京パラリンピックでNHKのプロデューサーをしていたという。
「2017年に麻耶さんに最初に番組に出ていただいたのが本格的な出会いだったんですけど、そのときに『パラアスリートってどういう方ですか』って聞いたんです」と振り返る。
その問いに中西さんは、こう答えたという。「私たちパラアスリートは『進化のスペシャリスト』なんです」
林さんは「そこから私の中では、パラスポーツを放送でやっていく上での柱というか、指針というか、いつもそこに立ち返る言葉になったんです。だから麻耶さんにはとても感謝しています」と話した。心に残るエピソードである。
中西さんの言葉には「力」があると、いつも思う。食事会でのあいさつもそうで、ジーンときてしまったので、これも紹介したい。以下に中西麻耶さん現役ラストデーのあいさつ全文を掲載し、この記事を閉じることにする。
この店、パーチェは、競技場(ジェイリーススタジアム)からとても近い場所にあるので、よく、このカウンターで愚痴をこぼしながら、そして泣いた日もあったかなという気がするんです。家族のように接してくれて「帰る場所が大分には絶対あるから」というのを、ずっと言ってくれた2人の店で、この会ができて幸せです。
21歳の自分が脚を切断するという決断をするのは、すごい難しかったんですけど、自分の中で強がり9割、不安1割の中で、強がりを押し通しながら頑張った期間もあれば、ちゃんと状況を受け入れて、1人のすてきな大人として歩みたいな、と切り替えてやってきた競技人生でもありました。
いろんな経験をさせていただいて、その時間を皆さんと一緒に共有できたことが、かけがえのない自分の人生の宝物だなと思います。
これ以上の幸福感を味わえるものをこれから先の人生で探していくのって、とても難しいんじゃないかなっていう気はするんですけど、きっと大丈夫だと思って頑張っていきます。
今日から皆さんと同じフィールドに生きる人間として、人生の先輩方々に、素直に甘えるべき場面には甘えさせていただきたいなと思っています。
(樹)