【Gateインパクト】岩屋毅前外相と記者とのやりとりの要旨

報道陣の質問に答える岩屋毅前外相=2日、別府市野口元町
報道陣の質問に答える岩屋毅前外相=2日、別府市野口元町
  • 報道陣の質問に答える岩屋毅前外相=2日、別府市野口元町
  • 報道陣の質問に答える岩屋毅前外相

 岩屋毅前外相(衆院大分3区)は10月2日、中国政府要人と相次いで面会した9月末の訪中を振り返り、冷え込んだ日中関係の修復に「一歩前進した」と手応えを語った。別府市内の事務所で取材に応じた。

 台湾有事を巡る高市早苗首相の発言には「全体的に厳しい対応だった」と印象を述べ、関係改善に向けて側面支援する考えを示した。中国側が日本批判に使う「新型軍国主義」の表現は控えるよう求めたと明かした。

 岩屋氏と記者団とのやりとり(要旨)は次の通り。


■岩屋氏による概要説明

 私の方から冒頭報告をしたいと思います。訪中の日程は9月27日から3日間。まず日本大使館において金杉憲治大使から、中国情勢全般についての説明を全員で受けました。日本国際貿易促進協会(国貿促)はあくまで民間の経済団体で、今回の団員は約50名でした。

 翌日は人民大会堂に王毅・外交部長(外相)、正式な立場は政治局員の一人ということだったと思います。1時間ちょっと会談をしました。

 最終日は、楊万明・中国人民対外友好協会会長を訪ね、こちらも1時間ほど会談をしました。

 午後からは、何立峰・国務院副総理、主に経済を所管している副総理ですが、人民大会堂で団員全員と共に面談をいただき、40分ほどの会談をしました。

 その後、鄢東・商務部副部長、日本で言うと経済産業省に当たると考えていただければいいと思いますけど、この商務部を訪問して鄢東副部長と、こちらも40分ほど会議室で、団員一同で会談しました。

 最後に、中国国際貿易促進委員会。これはわれわれ国貿促の中国側のカウンターパートに当たり、その任鴻斌会長と懇談をしました。

 肝心の王毅部長、何立峰副総理との会談ですが、国貿促はあくまでも民間団体、経済団体ですから、今回の訪中の主たる目的は、経済活動の円滑化ということです。

 一部、輸出管理が非常に厳しくなっている。特にレアアース、重要鉱物などですね。具体的に日本企業側が困っているという事例も発生しているので、その改善をぜひ図ってもらいたいということ。それから、中国にはスパイ防止法をはじめ、さまざまな法律が出来ているが、日本企業側から見ると詳細がよく分からない。何をすれば違反になって何がセーフかが判然としないので、どうしても萎縮効果が発生している。ガイドラインをしっかりと示してもらいたい、邦人の安全確保に留意してもらいたい、ということを申し上げました。

 1万社近い日本企業が、中国現地で活動、事業を展開しており、その拠点は3万カ所近くに及んでいる。約10万人の邦人が中国現地で働いている状況ですが、北京だけではなくて、むしろ北京以外の地方に展開をしているので、その地方政府とのやりとりが、経済界にとっては非常に大事なんです。しかし、その地方政府との交流も最近、途絶え気味です。訪日団もなかなかやって来ない、また、受け入れもなかなか進んでいないので、ぜひ地方政府との交流の円滑化をしてもらいたい、と。

 主に国貿促からの要請としては、経済面ではこの3点を、王毅部長に対しても、とりわけ経済担当の何立峰副総理に対しては、しっかりとさせていただいたということです。

 その上で、現在の厳しい日中関係について、お会いした全ての方から言及がありました。

 今回の訪中の、もう一つの目的は、やはり、この厳しい日中関係を改善するために少しでもお役に立ち、改善のきっかけをつくる一助たり得たいというのが、もう一つ目的でした。そのテーマについても率直に意見交換をさせていただきました。

 中国側の対応は、いまだに非常に厳しいものがあると感じました。ただ王毅部長からも、これは改善する必要があるという話でした。そこの認識は一致したと思っています。

 外交は基本的に政府間で行うべきものですから、ぜひ日中関係改善のための対話の政府間の窓口を開けてほしい、ということを、お会いした方には全て申し上げてきました。

 王毅部長からは、その件については基本的に駐日大使に任せているというお話でしたが、政府にはぜひ引き続き、しっかりと関係改善に向けての努力を重ねていってほしいと思いました。

 何立峰副総理からは、中国経済は不動産不況などで一時期、停滞しているということが盛んに言われたが、その一番厳しい時期は乗り越えたと自分は思っているというお話がありました。そして、日本との経済交流については、決して後ろ向きではない、というよりも、前向き、積極的だと私は受け止めました。

 今回の訪中団は、第15次の中国の5カ年計画の説明も中国側の講師から受けました。視察としては、北京の郊外にある日中イノベーション協力特区、一部まだ建設中でしたが、そこを視察させてもらいました。日本企業の進出、あるいは投資といったものを、中国側は期待しているんだな、ということは伝わってきました。

 先ほど申し上げたレアアースについては、中国側はデュアルユース、軍事用に転用される恐れがあるものは輸出管理を厳しくするということを言っているんですが、実際のところは、完全に民生用にしか使っていないものまで厳しい規制・管理がされているというふうに、わが方では受け止めている。純然たる民生用のものについては、しっかり区別をしてもらいたい、と申し上げました。

 何立峰副総理からは、民生用であるなら問題ない、という答えだったので、商務部にも伺って同様の話をさせてもらった。今後、個別具体に交渉して問題の解決を図っていくことが大切ではないかと、国貿促としても努力したいと思うが、政府にも努力してもらいたいと思っています。

 主たる目的の一つである経済交流の活性化、円滑化は、要請事項をしっかり伝えることができたので、中国側の善処に期待したい。日中関係については、あくまでも政府が対応することではあるが、環境整備の一助にはなったのではと思っています。

 それほど簡単なことではないと思うが、政府の取り組みを民間団体の国貿促も側面からしっかり支えていきたいと考えています。

■記者団との質疑応答

【記者】
 「政府にはしっかり取り組んでほしい」と言われましたが、これは日本政府、中国政府のどちらを指すのでしょうか。また具体的にどのような取り組みを求めますか。

【岩屋氏】
 当然、両国政府のことです。本件については率直に言って原因は日本側がつくっているので、日本政府において関係改善に向けてしっかり取り組んでもらいたいと考えています。

 個人的には、日中関係の土台は1972年の日中共同声明をはじめとする四つの文書、その原点に戻ることが最も大事なのではないかと考えています。生じている不信を解消する努力を日本政府にやってもらいたいですし、中国側も窓口を開いて対話に応じてほしいと思っています。

【記者】
 会談の中で、中国側から台湾問題や総理答弁に対する指摘や是正の求めはありましたか。

【岩屋氏】
 中国側からは台湾問題、高市総理の国会答弁について厳しい指摘がありました。

 私からは、是非を論じるより、その経緯を紹介しました。高市総理はその日の同じ質疑の中で、存立危機事態はあくまで個別具体の状況に応じて総合的、客観的、合理的に判断するものだと付け加えて答弁しているし、記者会見では特定ケースを想定した発言は慎むとも言っている経緯を紹介し、政府の立場は変わっていないことを説明しました。

 その上で、9月29日は日中共同声明の発出から54年目という節目の日でもあり、声明に明記された台湾に対する日本政府の立場にしっかり戻ることを再確認することがスタートになるのではないかと、個人の見解として申し上げました。

【記者】
 王毅外相や何立峰副総理など、中国政府要人との会談日程はいつ決まりましたか。日本政府と事前調整や特別なミッションはあったのでしょうか。

【岩屋氏】
 王毅外相とは出発直前、何立峰副総理とは会談の前日に決まるなど、直前まで分からない状況でした。外務省からの側面支援を受けて連絡も取っていましたが、政府から特別なミッションを受けて訪中したわけではありません。

【記者】
 今回、中国側の高位の要人が面談に応じた背景や理由をどう捉えていますか。

【岩屋氏】
 (国貿促の)前会長である河野洋平先生の長年の取り組みに対する高い称賛があった。また国貿促が国交正常化前から日中貿易に取り組んできた歴史ある団体として高く評価されているためだと受け止めています。

【記者】
 今回の会談内容について、すでに日本政府関係者へ報告されたのでしょうか。また、今後の政治活動や国貿促としての取り組みはどう考えますか。

【岩屋氏】
 現地大使館や外務省の支援の下で行われており、何立峰副総理との会談には金杉大使も同席しているので、内容は本省に報告されているはずです。王毅部長との会談は私から大使に詳細に伝えているので、それも報告されていると思います。政府から要請があれば応じたいと思っています。

 国貿促としては、厳しくなっている輸出管理の改善や地方政府との交流再開に向けて引き続き取り組みたいと思います。

【記者】
 日中関係悪化の原因が日本側にあると言われましたが、具体的に何が問題で、どう伝えていけば改善されると考えますか。

【岩屋氏】
 一国会議員としての意見ですが、日中関係の基礎は1972年の日中共同声明にあり、その中で、台湾は中国の不可分の領土であるという中国側の立場を日本政府が理解し、尊重すると書かれているわけです。その上で、台湾の問題についてはわが国は平和的に解決されることを期待している。これが一貫して変わらない日本政府の方針、日中関係の土台であるわけです。

 存立危機事態はどのようなことが該当するのかは、政府は個別具体のことは言ってきていなかった。高市総理の答弁は、あたかも個別具体のことについて言ったかのように聞こえたことが不信を生んだ原因だと思います。

 その後ちゃんと軌道修正しているが、そのことが十分に理解されていない、ということだと思うので、理解してもらう努力を政府にしっかりやってもらいたいと思います。

 個人的に思っているのは、日中関係の土台に戻る。これを公に再確認することが何より大事ではないか。そこへ向かってどういう手順でどうしていくのが一番適切かは、政府においてしっかり取り組んでいただき、中国側とも対話を重ねてもらいたいと思います。

【記者】
 高市首相の発言の経緯や意図を説明した、という話があったが、それを受けた中国側の反応をどう感じましたか。

【岩屋氏】
 中国側の反応は、特段緩和したとは感じませんでした。引き続き非常に厳しい対応、言いぶりであったと思います。

 私の個人的な発言でしたが、王毅部長に対しては、いわゆる「新型軍国主義」という言い方は控えていただきたいという話もしました。やはり、そういう言い方は、戦後80年のわが国の平和国家としての歩みそのものが否定されたかのような印象を持たれてしまう。日中関係を大切に思っている人は、経済界はもとより、実は国会の中にも、国民の皆さんの中にもたくさんいらっしゃる。そういう人たちまで傷つけ、遠ざけてしまうようなことになる恐れがある。ぜひ控えていただきたい、とお話させていただきました。

【記者】
 中国側の経済的な反応について「前向き、積極的」と受け止められた理由は何ですか。

【岩屋氏】
 経済担当の何立峰副総理から、不動産不況を乗り越えて新しい5カ年計画のもとで発展していくに当たり、日本を含めた世界からの投資を歓迎する姿勢が伝わってきました。日本企業が困っている輸出管理の問題の解消などをこちらからお願いしました。

【記者】
 政治関係が冷え込む中で経済交流を行う意義と、国内での批判や反発に対してはどう受け止めていますか。

【岩屋氏】
 約1万社の日本企業と10万人の日本人が現地におり、中国は最大の貿易相手国であるため、経済の停滞は双方の国民生活を直撃します。政治が厳しい時こそ経済や民間がつながりを維持し、政府間関係を動かしていく役割が必要です。批判があっても対話を閉ざさずに一歩ずつ関係改善へ進むことが重要です。

 反発があるからといって、誰も会わないで何か事態が改善するのかというと決してそうではない。王毅部長、何立峰副総理という2人の政治局員と会えたのは一歩前進だと思います。

【記者】
 (高市首相の国会答弁に対する要求で)中国側の発言が「撤回」から「是正」に変わるなど軟化したとの報道もありますが、どう考えますか。

【岩屋氏】
 中国側の意図を断定的に言えるだけの根拠はありません。総じて厳しい立場に変わりはなかった、そう簡単なことではないと受け止めました。今回の言葉遣いの変化がその現れだと断定してよいか分かりません。

【記者】
 現政権のもとで、日中間の「四文書」通りの立場を改めて発信・確認することは可能でしょうか。

【岩屋氏】
 四文書は政府間の約束事であり、日本政府の立場・方針は一貫して変わっていないと何度も国会や政府の統一見解で発信しています。四文書の立場を再確認することは、それほど難しいことではないのではないでしょうか。

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