【別府】別府市美術館は別荘文化の象徴だった「赤銅御殿(あかがねごてん)」の新たな資料を収蔵した。大正、昭和期の歌人柳原白蓮が過ごしたことで知られた和風建築で、ホテルとして使用された際の宿泊者台帳や客室に添えられた掛け軸など約100点を確認した。白蓮ゆかりの書も。関係者から寄贈を受けたほか、公共施設に保管されていたことが改めて分かったという。市は今秋にも展示会を催す。
同別荘は筑豊の炭鉱王・伊藤伝右衛門が妻の白蓮のため1916年に市内青山町に建てたとされる。延べ床面積は約千平方メートル。画家の竹久夢二ら多くの著名人が訪れた。占領軍に接収された後、実業家の首藤克人氏(故人)が買い取り54年にホテルを開業。宅地開発に伴い79年に解体された。
同美術館によると、新収蔵の掛け軸(横57・1センチ、縦123・6センチ)は白蓮が滞在した部屋に飾られていたとみられる。江戸期の浮世絵師、三畠上龍(みはた・じょうりゅう)が手がけた「美人図」で、朱色の羽織をまとった巫女(みこ)装束の女性を描いている。首藤氏の長女の矢幅美穂さん(76)=横浜市=が2024年、市に寄せた。
矢幅さんは高校時代まで別府市で暮らし、結婚する折に両親から掛け軸を譲り受けたという。「資料を故郷に戻し、地元の人に見てもらいたい」との思いから、1954年のホテル開業の際に白蓮が詠んだ短歌の直筆の書2点、歌集「踏絵」の巻頭の作品をつづった掛け軸も合わせて市に託した。
台帳は昨年11月、旧山の手中校舎に保管された段ボール箱の中から確認された。白蓮が宿泊したことも記されていた。赤銅御殿の解体時に市は備品などを譲渡されたものの、所在が長期間不明となっていた。旧校舎を取り壊すことになり、室内を片付けていた時に見つかった。
表札のほか設計図や瓦なども残されており、別荘の全体像を知る上で貴重な資料となりそう。
同美術館は資料の調査を進め、修復作業を終えたものから1階の特設コーナーに並べている。
市内は日本一の温泉湧出量を背景に、明治後期から昭和初期にかけて資産家らが競うように別荘を建てた。檜垣伸晶館長は「赤銅御殿の解体を惜しむ声は今もあり、大切な存在だったとつくづく感じる。資料を通し、当時に思いをはせてもらいたい」と話した。
<メモ>
柳原白蓮は1885年生まれ。伯爵家の次女で大正天皇のいとこに当たる。10代で最初の結婚を経験。実家の窮状に伴い、20歳以上も年が離れた伊藤伝右衛門と再婚したとされる。社会活動家の宮崎龍介と恋仲になり、新聞紙面で伝右衛門に離婚を申し出た「白蓮事件」は社会の関心を集めた。「大正三美人」の一人にも数えられる。赤銅御殿の跡地には白蓮の歌碑が残されている。
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