【共生リアル―新たな隣人たち】イスラム土葬墓地問題「国が主体的に対応を」 前日出町長の本田博文氏が提言

取材に応じる本田博文・前日出町長=別府市
取材に応じる本田博文・前日出町長=別府市

 日出町南畑で8年前、浮上したイスラム土葬墓地整備計画を巡り、経営許可権を持つ地元首長として対応した本田博文前町長(72)が27日までに大分合同新聞の取材に応じた。九州全域から教徒を受け入れる構想は、一自治体の墓地行政が向き合うべき範囲を大きく上回っていたと指摘。土葬墓地のニーズは県・市町村の境界を越え、広く薄く点在する―との認識を踏まえ「こういったケースでは今後、国が主体的に対応するのが望ましい」と提言した。
 本田氏の在任期間は2016年から8年間。計画は日出町に隣接する別府市の宗教法人が18年に着手し、本田氏は経営許可申請を受ける立場だった。町条例に従って関連審査を進めながら、水源汚染の可能性を懸念する地元住民にも向き合ってきた。
 「公平に審査を進めつつ地域の安心をいかに保てるか。大変苦慮した」と振り返る。計画は後任の安部徹也町長がストップをかけ、現在は中断している。
 本田氏は一連の対応を通じ、イスラム墓地の特殊性を痛感したという。
 イスラム教は火葬が禁忌で土葬墓地が欠かせない。一方、教徒は日本社会で少数派。そのため「イスラム墓地のニーズは点在するが、地域ごとに見た場合、決して大きいとは言えない」と説明する。
 日出町での計画は九州各県で暮らす教徒の受け入れを予定しており、県域もまたぐ広範なエリアの需要に応える性格があった。「法が想定するような地域住民の利用に向けた墓地とは異なる。一自治体ではなく、国レベルで対応すべきニーズと捉える方が良いのではないか」と問題提起する。
 日出町では計画浮上以来、反対の声や混乱が続き、24年の町長選や今年2月の衆院選大分3区でも候補者が政治的な課題として意見を述べる場面があった。イスラム墓地の整備を巡り、地方自治体が対応に苦慮するケースは県外でも起きている。
 本田氏は「今後、他の自治体が同じような状況に直面することもあり得る。社会情勢の変化に合わせ、墓地行政の在り方を見直す時期に来ていると思う」と話した。

 ほんだ・ひろふみ 1953年7月生まれ、日出町豊岡出身。大分工業高卒。富士通、大分大を経て80年に大分県入庁。医療、福祉、県税、地域振興などに従事した。退職後、日出町長を2期務めた。町内在住。

<メモ>
 日出町のイスラム墓地は宗教法人と地元住民の交渉の結果、山間部の町有地が整備予定地になった。宗教法人は町との「事前協議」をクリアし、最終ステップに当たる経営許可申請を準備。町も土地の払い下げ手続きを進めた。2024年の町長選で整備阻止を訴えて初当選した安部徹也町長が「民意は反対」と売却方針を撤回。宗教法人の土地確保の見通しが崩れ、許可申請に移る手前で計画は中断した。

■国との役割分担の在り方を問い直す
 イスラム墓地を受け入れるか否かを立地自治体が個別に判断する難しさを巡っては、現日出町長や近隣市長も政府に対し「統一ルールの整備」「指導」といった形の関与を求めてきた。本田氏は「そもそも誰が向き合うべき課題か」に切り込み、地方自治体が責任を背負い込む仕組み自体の見直しを訴えた。多文化共生時代の墓地行政を見据え国との役割分担の在り方を問い直す内容で、一歩踏み込んだ提言といえる。
 政府が2000年12月に通知した「墓地経営・管理の指針」は墓地の指導監督について、地方自治体が自らの責任で担う「自治事務」と説明。住民の宗教感情や風土は各地域で異なり、実情を踏まえた対応が必要―と理由を示している。一方、国は助言する立場にある。
 経営許可権は墓地埋葬法で都道府県、市、特別区に与えられている。町村は本来持たないが、大分県は「県事務処理特例条例」で委譲。県内で今後、新たに土葬墓地の経営許可申請が出た場合、予定地の市町村が審査、地域住民との調整を迫られることになる。
 本田氏の提言は日出町で計画されたイスラム墓地のように「広く薄く点在するニーズ」に直面したとき、立地自治体が単独で向き合う現行の仕組みが適当か疑問を投じたものだ。
 日出町のイスラム墓地は、隣接する別府市のイスラム教団体「別府ムスリム教会」が計画し、九州全域からの利用を予定していた。地方自治法が地域行政の役割と定める「住民の福祉の増進」をはるかに超えていたように見える。
 県内自治体の一部リーダーから国の動きを期待する声が出ている背景には「外国人政策は国策」との共通認識があるとみられる。日出町での土葬墓地計画の中心にいるのは、日本国籍を取得した教徒たち。「国はいったん受け入れたならば、ついのすみかの問題についても責任を持つべきだ」と考えるのは自然に映る。
 大分合同新聞の取材に対し、厚労省の担当者は「墓地の指導監督は各自治体で地域の風習、宗教の状況などを踏まえつつ、住民感情にも配慮して丁寧に検討してほしい」と00年の指針同様の内容を繰り返した。県食品・生活衛生課は「国民的議論が十分に進んでいない中、県として何らかの方向に動くことは余計な対立や混乱を招く恐れがある。慎重に注視すべき課題だと認識している」と答えた。

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