飲酒運転は2000年以降、罰則が格段に重くなった。 現行の道交法では、ドライバーのアルコール濃度が呼気1リットル当たり0・25ミリグラムを超えれば運転免許は取り消され、2年間は再取得できない。それでも、酒を飲んでハンドルを握る人は後を絶たず、25年は全国で2万399人が摘発された。死亡事故も125件起きた。 厳罰化だけでは悪質な運転をなくせない、という現実。ならば、酒を飲んだ状態だとエンジンがかからない車を作ればいいのではないか―。 そんな観点から開発された装置が「アルコール・インターロック」だ。ただ、今のところ車への搭載は進んでいない。 仕組みはシンプルだ。呼気中のアルコール量を測定するセンサーを運転席に取り付け、エンジンを起動する回路と接続する。 ドライバーは車に乗るたびに装置に息を吹きかける必要があり、一定量のアルコールを検知すればエンジンは作動しなくなる。1980年代に米国で開発されたとされる。台湾や韓国では飲酒運転の前歴がある人の車に装着を義務付けているという。 国内では静岡県富士市の製造業「東海電子」が2008年に独自の製品を開発した。02年に小型のアルコール検知器を発売するなど、飲酒運転撲滅に向けた取り組みをリードしている企業だ。 東海電子の製品は「0・05ミリグラム以上」のアルコール検出でエンジンがかからない設定だ。「万全を期すため、酒気帯び運転の基準となる0・15ミリグラムより低い数値にしている」と担当者は説明する。 主にトラックやバスなどを運行する企業から引き合いがあるが、3年ほど前からは個人の問い合わせも増えているという。「父親が飲酒運転をしている」と、心配した息子が購入するケースがあった。大分県内でも利用者が1人いるという。1台の費用は、工事費込みで20万円という。 被害者遺族も注目している。 国東市武蔵町の佐藤悦子さん(74)が共同代表を務める「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」は24年7月、警察庁に要望書を提出。飲酒運転違反歴やアルコール依存症のドライバーに装着を義務付けるよう求めた。 佐藤さんは03年11月に鹿児島県内で起きた飲酒ひき逃げ事件で、次男の隆陸(たかみち)さん=当時(24)=を亡くした。飲酒事故のニュースに触れるたびに胸が痛む。「今も多くの犠牲者が出ている。諸外国が取り入れているなら、日本も遅れを取ってほしくない」と願う。 国交省は12年、実用化に向けて、装置の仕様や規格をまとめた「技術指針」を策定。だが、法制化の議論は進んでいない。 国はドライバーとは別の人間が装置に息を吹きかける「成り済まし」のほか、エンジン始動後に飲酒するという悪質なケースを防げないといった限界を指摘しているという。 東海電子の杉本哲也社長(55)は「完璧な装置じゃないから義務付けない、という国の考え方はおかしい。飲酒運転を物理的にできなくすることの抑止効果は低くない」と訴える。 内閣府や警察庁に、法整備の議論を進めるよう要望書を出し続けている。
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