時速194キロ死亡事故の控訴審判決を不服として上告した福岡高検=福岡市
大分市の時速194キロ死亡事故で、被告の男(24)に過失運転致死罪で懲役4年6月を言い渡した福岡高裁の控訴審判決を不服として、福岡高検は5日、最高裁に上告した。一審大分地裁の裁判員裁判による判決は危険運転致死罪で懲役8年としており、司法判断が割れていた。この日が上告の期限で、高裁によると、午後5時時点で被告側からの連絡はない。
裁判の争点は、危険運転致死罪の要件である「進行を制御することが困難な高速度」と「妨害目的の運転」に当たるか否か。
検察側は現場の路面にわだち割れがあり、「ハンドルやブレーキ操作のわずかなミスで進路を逸脱しうる速度だった」などとして、制御困難な高速度を適用するように求めていた。
妨害目的については「右折する車に急ブレーキを踏ませるなどして、事故を回避してもらうしかなかった」と説明。この状況を被告が確実に認識できた以上、過去の裁判例を根拠に通行妨害の意図を認定できると主張していた。
2024年11月の一審大分地裁は制御困難な高速度だけを認めて、危険運転致死罪で有罪判決を言い渡した。
今年1月22日の控訴審は「被告の車の具体的な性能を前提とした場合、194キロが車線から逸脱するような速度だったとの立証はされていない」と言及し、制御困難な高速度を否定。妨害目的も「あえて、被害車両の安全な通行を妨げることを認識していた事実は立証されていない」として一審の判断を踏襲し退けた。
判決後、被害者遺族と代理人弁護士は上告を求める要望書とともに、インターネット上で集めた署名7万254人分を高検に提出していた。
高検の村中孝一次席検事は「判決内容を十分検討した結果、判例違反があると判断し、上告した」とのコメントを出した。
被害者遺族の長(おさ)文恵さん(60)は「悪質な運転を撲滅するためにも、高裁判決を確定させるわけにはいかない。最高裁で正しい判断が下るように引き続き力を尽くす」と述べた。
高速度の事故を巡っては、宇都宮市で23年2月に起きた時速160キロ超の死亡事故など、危険運転致死傷罪の成否が争点となる裁判が控えている。
<メモ>
事故は2021年2月9日午後11時ごろ、大分市大在の一般道(法定速度60キロ)で発生した。当時19歳だった被告の男は、乗用車を時速194・1キロで走らせ、交差点を右折してきた乗用車に激突。運転していた同市坂ノ市南、会社員小柳憲さん=当時(50)=を出血性ショックで死亡させた。