旅先の出会いを通して、心が軽くなる様子を描いたロードムービー。 漫画家つげ義春の短編「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を基に、対称的な二つの旅がつづられる。 韓国人脚本家の李(シム・ウンギョン)は新作の執筆に行き詰まっている。携わった映画の感想を問われても「自分に才能がないと思った」と返すばかり。 「気晴らしに旅行にでも行くといい」と勧めてくれた旧知の大学教授魚沼(佐野史郎)が急逝。形見のカメラを受け取った彼女は電車に飛び乗り、雪が降る北国へと向かう。泊まる場所が見つからずにさまよう中で、べん造(堤真一)が切り盛りする古い民宿へとたどり着くが…。 もう一つの旅は李が脚本を担当した映画のストーリー。夏の海で出会い、ひとときの会話を交わす渚(河合優実)と夏男(高田万作)。詩的で官能的な映像が印象的だ。 脚本家として登場人物の行動や感情を言語にしてきた李が、人間くさいべん造とのやりとりを通して、どう変化していくのかが見どころだ。ふぶく雪原や食べ物から立ち上る湯気など、温度感が伝わる映像が心地よい。 監督は「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱。8月開催のロカルノ国際映画祭では、日本映画で18年ぶりとなる最高賞を受賞した。 シネマ5で1月10日(土)~16日(金)の午前10時と午後6時。(この日程以外も上映あり) ◇ ◇ ◇ 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。
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