―国は危険運転致死傷罪の適用要件に数値基準を設けようとしている。 「取りこぼしてきた悪質な事故を適正に処罰できるようになる。一歩前進だと思うが、不十分な改正だと考えている」 「悪質な運転なのに、数値を下回ったケースはどうするのか。例えば、いくつかの違反が重なった『複合事案』。飲酒して猛スピードで車を運転し、死亡事故を起こした事例。もし法定速度の一般道でアルコール濃度が呼気1リットル当たり0・25ミリグラムに満たず、時速100キロ以下だったら、少なくともA案でも数値は下回る。故意に無謀な運転をしているのになぜ危険運転罪を適用しないのかと、被害者遺族は納得しないだろう」 ―今後、A案とB案どちらの数値案にするかが焦点になりそう。 「高速度については、いずれの案も数値が高いと思う。道交法は30キロ超過すると反則金を除外して罰金刑を科すと定めている。危険性が高いからだ。この値を危険運転罪の数値基準にすればいいのではないか」 ―以前から危険運転罪は根本的に変えるべきと主張しているが、理由は。 「法のつくりが悪いからだ。故意に悪質、無謀な運転をしたドライバーに厳罰を与える目的で、2001年に創設された。だが、対象となる事故を高速度、飲酒、赤信号無視といった類型で限定してしまった。そうすると、必ず『穴』ができてしまう」 「例えばスマートフォンを操作しながらハンドルを握る『ながら運転』。現在は類型に入っていないため、死亡事故を起こしても過失運転致死罪(拘禁刑7年以下)で処罰される。ながら運転や無免許も対象にできるよう『故意に悪質、無謀な運転をした場合』などと幅を持たせた条文に変えてもいいのではないか」 ―交通犯罪の処罰はどうあるべきなのか。 「英国では2022年、飲酒・薬物運転による死亡事故について拘禁刑の上限を無期に引き上げた。殺人に近いと位置付けている。うっかり起こした交通事故を重く処罰するのではなく、ごく一部の悪質、無謀な運転に厳罰を科す。『重かるべくは重く、軽かるべくは軽く』を実現する方向で議論を進めるべきだ」 かわもと・てつろう 京都市出身。交通犯罪や被害者支援の在り方を研究している。元同志社大教授で、現在は京都犯罪被害者支援センター副理事長を務める。
17日付の紙面はこちら