高市早苗首相(自民党総裁)は経済成長を実現することで財政再建も進める意向を示している。「責任ある積極財政」による意欲的な成長投資で国内総生産(GDP)を拡大させ、債務残高の対GDP比率を引き下げて「マーケットからの信認を確保していく」と話す。ただ首相の想定通りに進むかどうかは不透明で、市場関係者からは懐疑的な見方も出ている。
「成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え、財政の持続可能性を実現する」。首相は衆院解散を表明した19日の記者会見でこう強調した。政府が22日の経済財政諮問会議で示した試算では、名目GDPに対する国と地方の債務残高比率は2026年度に186・6%となり、前年度比6・2ポイント下がる。首相は、経済成長が実現すれば「財政状況は着実に改善していく」と訴える。
実際には、高い経済成長を伴わなくても物価高が続けば分母の名目GDPは大きくなる。一方、日銀が実施した異次元緩和策の影響で長期金利は世界的には低水準なため、借金である国債の利払い費は抑制され、分子の債務残高は増えにくい。政府内では「今後数年間は債務残高比率は自然と下がる」との声が多い。
ただ先行きは楽観視できない。政府試算では、成長率が12年度以降の平均である0%台にとどまれば債務残高比率は31年度に上昇に転じる。
さらに、足元では与野党が消費税減税に言及し、長期金利が上昇傾向だ。国債の利払い費が急ピッチで増加し、歳入(収入)不足を補うために新規国債の発行も増えて、想定以上に債務残高が膨らむ恐れがある。「責任ある積極財政」の成否が明らかになるには年単位の時間を要する。
首相が経済政策のモデルとする安倍政権のアベノミクスは成長戦略が不発に終わった。明治安田総合研究所の小玉祐一フェロー・チーフエコノミストは「過去の実績では長期金利が成長率を上回る期間の方が長い」と述べ、高い経済成長の実現はハードルが高いと指摘。財政運営は「保守的な前提の下で行うのが望ましい」と強調した。
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