2008年6月に発覚した県教委汚職事件は、贈収賄で教育者8人に有罪判決が下されるなど全国を震撼させた。「あの事件」は大分県の教育をどう変えたのか。教職員は何を思い、どんな気持ちで子どもと向き合っているのか。不正の温床とされた教育委員会は今、どうなっているのか。事件を振り返りながら、時代の波に翻弄(ほんろう)される教育現場をルポした年間企画。2010年度日本新聞協会賞候補作品。
※大分合同新聞 朝刊社会面 2009(平成21)年6月16日~2010(平成22)年4月18日掲載
県教委によると、大学卒業後の22歳で臨時講師(義務制)になった場合の基本給は19万5,900円だ。 正採用の教職員と同様、これに教職調整額(いわゆる超過勤務手当=給与の4%)や通勤手当などの各種手当が加わる。毎年の採用決定時に「経験」...
各学校の教職員数は学級数で決まる。その基準日は5月1日。転入校に伴う児童・生徒数の増減や中・長期的な学級数の推移などを見据えた上で、臨時講師たちは現場に配置される。 担任教諭の産休などで最初からクラスを任される人がいれば、病休など学期...
県教育界には労働組合が3つある。県教組(県教職員組合)、高教組(県高校教職員組合)、公高教(県公立高校教職員組合)である。 中でも県教組は高い組織率で知られ、加入している教職員は小学校で87・9%、中学校は82・7%(いずれも県教委の...
学校現場は「組合」をどうとらえているのだろうか――。 「必要。生活が守られる。でもその前に義務を果たさないと。権利ばかり求めても悪い」(県教組・小学校40代男性) 「声を上げる場は大事。活動はきついけど続けていきたい」(同・小...
かつて文科省は「大分には教育長が2人いる」と言った。 それは「組合にほかならない」と語るのは元県教育長の1人だ。「県教育の歴史は県教組に壟断(ろうだん)(独り占め)されてきた。その根幹に、あしき慣行の事前協議があった」 県教委...
ペダルをこぐ。磯の香りを全身に浴びながら、港町を自転車で駆ける。岡松寛(54)が蒲江小学校長に着任してから、かれこれ1年と8カ月がたった。 今でも時間が許す限り、積極的に校外に出る。「地域の力なくして再生はできん。おかげで学校は劇的に...
佐伯市教委が昨年9月に作成した「教育改革アクションプラン」は計18ページ(A4判)で構成されている。 教育再生に向けて、県教委汚職事件の発覚1年後にまとめた「改革基本プラン」の理念をいかに実践していくか。 事件の“震源地”となった...
豊肥地区の中学校長(50代男性)は心が晴れない。昨秋から試行されている教職員人事評価制度がその理由だ。 「わたしが(教員に)付けた評価に差はない。目先の成果だけで判断していいのか……」 校長は思う。「評価、評価と言うのなら、つまら...
これまで地教委内での異動が一般的だった小中学校教員の人事は、県教委汚職事件を機に全県的に「広域化」された。 中津から津久見、宇佐から佐伯へ。昨年度はとりわけ新任教頭の7割(59人中41人)が“アウェー”の学校に赴いた。...
時が流れた。県教委汚職事件は沈静化したかに見える。 だが、「大分県民が思う以上に他県の人はひどいイメージを持っている」と教員採用試験の民間面接官(50代男性)。 これも県民性なのか。県教育界は「みんなで互いの傷をなめ合っている」と...
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