新型コロナウイルス禍に見舞われた県内の学校現場に密着。誰も経験したことのない「異常な日常」を記録したルポ連載。
※大分合同新聞 朝刊おおいた総合面 2020(令和2)年9月2日~12月27日掲載
生徒206人が等間隔に並んだ。顔を覆ったマスクが暑苦しい。 8月25日。国東市安岐中(安岐町中園)は体育館で始業式をした。クーラーはない。広いスペースを有効活用し、全員が分散して座ったのは「密」を避けるためだ。 この日、県...
下校時間になった。炎天の下、カラフルな傘が踊る。 大分市西の台小(にじが丘、885人)は7月から、登下校中の日傘を許可している。 開けば友達との距離も保つことができる。熱中症と新型コロナウイルス。両対策にうってつけだ。 ...
午前中にパラパラと落ちた小雨のおかげだろうか。暑さは幾分、和らいだ。涼しい風も吹いている。 8月26日正午すぎ。豊後高田市高田中(玉津、375人)の教頭、小田豊昭(54)は熱中症計を宙にかざした。「大丈夫そうやな」 体育の...
別府市南小(浜脇)の1年1組は児童37人。教室の後ろには絵日記を張っている。水遊び、花火、墓参り……。短かった夏の思い出が並ぶ。 矢野文萌(あやめ)(7)の字は弾んでいる。〈 コロナであそびにいかれなかったので、おとうさんがおうち...
グラウンドに校舎の影が伸びる。午後4時半すぎ。佐伯市佐伯南中(長谷)では、陸上部の男女19人がダッシュを繰り返していた。 部活動は休校が解けた5月末に再開した。7月末に同市内で新型コロナウイルスの感染者が確認されると、練習場だった...
チャイムが鳴った。 正午、給食の時間だ。 「いただきまーす」。豊後大野市清川小(清川町砂田、65人)の6年生12人は教室で手を合わせた。この日の献立は白米、肉みそ厚揚げ、野菜のあえ物、牛乳。工藤海翔(かいと)(11)はあえ...
竹田市菅生(すごう)小(菅生、21人)のプールは入り口を施錠したまま、夏の終わりを迎えた。 水は緑色に濁り、周囲に落ち葉がたまる。「平泳ぎで25メートル泳げるよう練習したかった」。6年の清良(せいら)篤史(11)の目標は来年にお預...
朝のホームルームを終えると、各クラスの保健委員が席を立った。雑巾でドア、窓、電気のスイッチを除菌していく。 竹田市の竹田高(竹田、430人)は1日2回の作業を日課にしている。最初は面倒だったけれど、今はもう「慣れてきた」と2年4組...
小さい顔はさまざまな色柄のマスクで覆われている。 佐伯市明治小(弥生大坂本、171人)の4年生は28人。水色、灰色、白黒の格子柄……。口元はにぎやかだ。 この日、4限目の授業は算数だった。児童はコンパスや分度器を使い、ノー...
純白のエプロンと帽子。給食当番が次々とハンドソープを泡立てた。 昼時、手洗い場が混んできた。由布市由布川小(挾間町古野、418人)の児童は、廊下にある黄色のマークに並んで行儀よく順番を待つ。前の人から1メートルほど離れて立つための...
ランドセルが弾む。 九重町東飯田小(恵良、121人)は午前7時半すぎから児童が駆け込んでくる。登校後、すぐに向かうのは、げた箱近くの部屋(外国語ルーム)だ。 校長の池部義孝(58)が中で待っている。「体温は……36度6分。...
隣の子と向き合うように、10個の机をくっつける。 「いまからペアで学習します」。宇佐市天津(あまつ)小(下敷田、79人)の1年担任、岡部富美子(ふみこ)(51)が黒板に問題を書いた。 〈 雨が○○○○降る 〉 ...
「童話の里」の子どもたちは図書室に入ると、互いに距離を取って床に体育座りをした。 本に親しむ図書の時間。新型コロナウイルス対策として、玖珠町森中央小(森、208人)の児童は1クラスを半分に分けて入れ替わりで入室する。1コマは45分...
どすん。広いテーブルに課題ノートの束を載せた。28人分は結構重い。 臼杵市東中(臼杵、146人)の2年2組の担任教諭、河野(かわの)●(隆の生の上に一)也(りゅうや)(29)は校舎2階にあるロビーの一角に陣取った。生徒が日記や宿題...
紅白の旗が秋風に揺らめく。澄み渡る空に元気な声が吸い込まれていく。 今年の運動会や体育大会は新型コロナウイルスの余波をもろに受けた。多数が密集する競技は開催が難しく、春の長期休校のしわ寄せで練習時間も限られた。 組み体操や...
運動会は種目ごとの準備が煩雑だ。スムーズな運営には綿密なリハーサルが欠かせない。佐伯市佐伯東小(常盤西町、190人)は9月29日、全校で総合練習をした。 今年は新型コロナウイルス対策で全日程を半日で終える。プログラム数を昨年の30...
教室のスクリーン上で熱戦が繰り広げられている。子どもたちは映像に一喜一憂した。 県内屈指の大規模校・大分市下郡小(下郡北、811人)は例年、運動会に保護者を含めて3千人以上が集まる。どうやって「密」を防ぐか。その命題は開催の成否を...
グラウンドで「密」をつくらないように、県内の多くの学校は運動会や体育大会の土日・祝日開催を見送った。どこも観客はまばらで、例年のような熱気、にぎわい、歓声は薄れた。 杵築市山香中(山香町野原、148人)も開催日を平日に設定した。訪...
「プログラム8番。全校児童による『ソーシャル・ディスタンス・ミッション』です」――。豊後大野市新田(あらた)小(三重町久田、47人)の運動会で新種目の紹介アナウンスが響いた。 新型コロナウイルスを意識し、子どもたちが自分たちでつく...
ロープが三方に伸びる。 佐伯市の日本文理大付属高(鶴谷町、491人)が体育大会で実施した綱引きは、ずいぶんと趣が違った。 新型コロナウイルス対策で接触や密集を避けると団体種目はできない。体育教諭の井上航(わたる)(29)は...
県内の多くの学校は運動会や体育大会の開催に当たり、新型コロナウイルス対策で外部からの入場を制限した。無観客や家族、地域を交えた企画の中止・縮小が相次いだ。 臼杵市下ノ江小(大野、49人)の1、6年は親子競技が恒例だった。1年は断念...
来春に卒業する高校生の採用選考が全国一斉に解禁された16日、中津市の中津東高(上如水、708人)でオンラインの面接が始まった。 国などが毎年9月16日に設定している就活解禁日は今年、新型コロナウイルスの余波で1カ月遅れた。対面での...
大分市の福徳学院高(永興、417人)の調理実習室に、バターの香ばしい匂いが広がる。健康調理科3年の男女37人は14日の授業でビーフシチューとアップルパイをこしらえた。 全員が調理師免許の取得を目指している。3年間で栄養や食品衛生の...
関東、中部、関西、九州、県内……。日田市の日田林工高(吹上町、448人)の進路資料室には、求人票を地域別にまとめたファイルが並んでいる。 7月以降に寄せられた募集情報は1,800件を超える。このうち8割は県外企業からの引き合いだ。...
干し草はずしりと重い。 10月17日。玖珠町の玖珠美山(みやま)高(帆足、271人)の地域産業科3年、梶原拓野(たくや)(17)は同町岩室にある実家の牛舎で働いていた。 父洋一(60)は黒毛和牛の繁殖農家だ。卒業後は県立農...
中津市の東九州龍谷高(中殿、579人)の実習室で、生徒が医療用のベッドに横たわった。 「ゆっくり起きましょうね」。ナースキャップと白衣姿の衛生看護科3年、藤高志歩(17)は患者役の同級生に声を掛け、優しく体を支えた。 本来...
カタカタカタカタ……。 静まり返った教室に電卓をたたく音が響く。 全国商業高校協会(全商)の検定試験に向け、別府翔青高(別府市野口原、788人)の商業科3年の男女15人は12日、管理会計の授業で過去の問題と格闘していた。 ...
日田支援学校(日田市西有田、66人)高等部3年の中村優介(18)は今月5日から16日まで、玖珠町山田の老人福祉施設で職場実習をした。 やかんを抱え、そっとお茶を注ぐ。「熱いので気を付けてください」。軽い発達障害があり、コミュニケー...
出刃包丁を握った。まな板の上で魚がはねる。 臼杵市の海洋科学高(諏訪、116人)の食品コース2年、川野梨央(りお)(16)は地元のスーパーにある鮮魚店でタイやサバなどを手際よくさばいた。仕上げた刺し身は店頭に並んだ。 同2...
午前7時半になった。 日田市東部中(田島、533人)の3年3組、湯浅茉耶(まや)(15)は教室で漢字の問題集を開いた。早めの登校を心掛けているのは「できるだけ朝の時間も勉強したい」からだ。既に4、5人が席に着いていた。 同...
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