新型コロナウイルス禍に見舞われた県内の学校現場に密着。誰も経験したことのない「異常な日常」を記録したルポ連載。
※大分合同新聞 朝刊おおいた総合面 2020(令和2)年9月2日~12月27日掲載
手元のタブレット端末に慣れた手つきで文字を打ち込む。「コロナとは」。一瞬で検索結果が表示された。 大分市佐賀関小(佐賀関、64人)の6年16人は2学期から、総合的な学習の時間で「卒業論文プロジェクト」に取り組んでいる。 姫...
佐伯市東雲(しののめ)小(上浦浅海井(あざむい)浦)の5年、高槻嘉乃(かの)(11)は国語の教科書を開いた。 漢字の成り立ちを学ぶ授業。「象形文字とはどんな字のことですか?」。担任教諭の菅美和(49)が尋ねた。 教室で机を...
机の上に消しゴムのかすがたまってきた。 マミ(13)=仮名=は別府市山の手中(山の手町、303人)の1年だ。この日の数学は定規とコンパスを使った作図だった。「75度の角を描くにはどうすればいいでしょうか」。先生が出した問題を聞いて...
いま、クラスに貢献できていることは何か。 道徳の授業はこんな問い掛けで始まった。豊後高田市香々地中(香々地、40人)2年の藤山由菜(ゆいな)(14)は首をかしげた。「思い浮かばない」 あれこれ迷った末の結論を、配られたタブ...
開始のチャイムが鳴った。大分市南大分中(奥田、714人)3年のサキ(15)は、落ち着くために閉じていた目を開けた。 県内の中3は11月10日、一斉に学力診断テストを受けた。結果に志望校別の順位も示される。これから進路を決めていく受...
県南部に住む高3のマサト(17)は関西の難関国立大を目指している。 合格の判断基準となる模試は8月から計6回あった。いずれも望みが薄い「D」判定だった。 僕らの世代から大学入試制度が変わる。受験生は皆、不安に思っているはず...
「質問が一瞬で終わって聞き取れない」 県南の高校に通うミサキ(18)が今年4月に初めて大学入試共通テストの模試を受けたとき、英語のリスニング(聞き取り)試験のレベルの高さにがくぜんとした。 問題が次から次に読み上げられ、事...
大分市千代町の大分東明高で3年の特別進学コースを受け持つ教諭、後藤裕介(39)の昼休みはせわしない。昼食の弁当を数分で片付けて、職員室にやって来る教え子を待つ。 この日の一番乗りは模試の結果を手にした男子生徒だった。「志望先を変え...
県教委の高校教育課で入試を担当する指導主事、佐々木崇臣(たかおみ)(42)は自席でパソコンを開くと文部科学省からのメールに目を留めた。 内容は第3波が広がる新型コロナウイルスへの注意喚起だった。感染防止のポイントをまとめ、同省のホ...
中津市島田仲町にある慶応アカデミー大学受験館カルタス中津校は、進学を目指す高校生のための予備校だ。夕方になると制服姿の男女約100人が続々と門をくぐる。 学習塾の数学講師になって15年の館長、寺一(てらいち)浩二(45)は初めて経...
ショックで何日も泣いた。 由布市挾間町のショウタ(19)は時々、1年前の北風を思い出す。大分市の大分大で大学入試センター試験を受けた。国語(初日)の問題が全く解けず、落ち込んだ気分を次の教科まで引きずった。 結果は惨敗だっ...
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