牟礼鶴酒造=豊後大野市朝地町

おおいた酒蔵探訪記 みんなのGateリサーチ

2025年10月10日

日本酒造りから本格麦焼酎専門蔵に生まれ変わって

元々は日本酒の酒蔵だった。いまは焼酎中心に製造している

 大分市中心部から車で約1時間。豊後大野市朝地町の小さな集落に、昔ながらのたたずまいを残した建物が見えてきます。
 1904(明治37)年創業の牟礼鶴むれづる酒造です。


 現在は脱サラして伯父の家業を継いだ5代目、森健太郎代表(48)が蔵元杜氏とうじを務めています。

 看板商品は麦焼酎の「牟禮鶴むれづる」です。


 実は「牟禮鶴」は創業当初から1970年代まで造っていた清酒の名前でした。


 由来は近くにあった「小牟禮城」。大友家臣団の一万田氏が中世に築いたとされ、この「牟禮」という地名に「鶴」を掛け合わせたようです。

 それまでは日本酒だけを造る酒蔵でした。1970年代に同じ豊後大野市の酒蔵と協業化し、共同瓶詰会社を設立。その後、牟礼鶴酒造そのものは焼酎専門の蔵になった経緯があります。
 ちょうど「大分麦焼酎」が登場し、全国的なブームとなっていたころでした。大分県の「一村一品」運動とも重なっていました。


 元々、日本酒造りの過程で生まれる酒かすを使った「粕取焼酎」の免許があったため、焼酎製造が可能でした。

 森代表は「焼酎にもこうじづくりやもろみの温度管理など清酒造りと共通する部分もあった」と説明します。

 いまも酒を保管する貯蔵タンクなどは昔のものを使っています。

「いいところを引き出す」

脱サラ杜氏の挑戦で牟禮鶴ブランドが誕生

脱サラして新たなブランドを立ち上げた森健太郎代表

 当時、売り出した焼酎は現在も販売を続ける「荒城の月」。すっきりと飲みやすく、万人受けする王道の麦焼酎です。


 森健太郎代表が帰郷した2009年、「うちの蔵だと分かる個性ある酒を造ろう」と、新たな麦焼酎「牟禮鶴」ブランドを立ち上げました。

 「大きいメーカーもある中、他の酒蔵と差を出さないと生き残れない。それまでの『荒城の月』では焼酎好きな人には刺さりにくいと思った。欠点と思われる要素があるかもしれないが、それ以上にいいところを引き出した酒を造りたかった」


 いいところとは……やはり水です。
 近くの山から湧き出る水をパイプで引き込んでいます。「すごく口当たりがやわらかい。それが生きる焼酎を造りたい思いがベースにある」と森代表。
 どの銘柄を飲んでも口当たりの優しい、やわらかい味わいになることが酒蔵の持ち味といいます。

酒造りで歴史ある蔵や地域を守る

明治時代から残る蔵で焼酎造りを続ける

 さて、蔵の様子はというと、
 入り口には看板商品の「牟禮鶴」シリーズの瓶が並び、少し先で従業員がラベルののり付け作業をしていました。
 焼酎を造る製麹機や蒸留機は、その奥に抜けた建物にあります。
 増築を重ねているものの、最も古いのは築120年。昔ながらの土間やかまどなど住み込みで働く人がいた名残も見ることができます。

 ここで原料の麦を蒸し、こうじをつくります。もろみを仕込む蔵では人間よりも背の高い大きなタンクがいくつも並び、圧倒されます。そして一基の蒸留機で原酒を造っています。蔵は歴史を感じる空気であふれていました。


 森代表が帰郷を決めた際、地域は過疎化が進み、蔵の従業員も高齢化していました。
 「お酒造りをしたい」と強く思っていたわけではなかったようですが、後継者がいない蔵や地域の現状を目の当たりにし、本格的に製造の勉強を始め、数年間は元杜氏の下で修業を積んだそうです。
 いまでは地域活性化を意識した銘柄の立ち上げも進めています。

 そこで聞きました。あなたにとって酒造りとは―。


 「造るたび一回一回、一本一本に違いがある。同じ工程でもこうじや酵母といった生きているものが相手で、温度や環境のわずかな変化が影響するところが大変だけど面白い」
 「そして何よりも、近くから湧いている水はここにしかない。比べてみても口当たりの良さ、やわらかさは一番。ここで酒造りをやる最大の理由です」
 「ここは父親のふるさとで盆に帰省して、蔵の前を流れる川で遊んだりと思い出もある。こういう日本の原風景ともいえるような場所も残していきたい」

オススメの聞牟禮鶴(右)、牟禮鶴黄鐘(中)、かぼすリキュール無糖(左)

 それでは、蔵を代表する銘柄を紹介していきましょう!


 ▼牟禮鶴 黄鐘おうしき
 黄色のラベルが目を引きます。
 焼酎を生み出す蒸留機内の圧力を変えない伝統的な「常圧蒸留」といわれる製法が使われています。高温でもろみを沸騰させるため原料の風味を引き出し、麦の香ばしさと濃厚な味わいを堪能できる個性が魅力です。いつまでも口の中に芳醇ほうじゅんさが残ります。
 同じ原材料で、蒸留機内の気圧を下げて低温で蒸留する「減圧蒸留」で造った緑色ラベルの「壱越いちこつ」もあります。もろみ造りまでは酵母やこうじも同じでありながらも、こちらはほのかな麦の香りですっきりとした後味です。
 それぞれの名称は音楽が由来となっています。「黄鐘」は中国音階で1音目(西洋音名のラ)、「壱越」は雅楽など日本伝統音楽の音階で1音目(現在のレ)。
 いずれも蔵にとって基本になる焼酎との思いが込められています。先代の妻が能楽をしていたことも関係しています。
 森代表は「この二つは兄弟だけど性格が全く異なる。蒸留方法で生まれる違いを楽しんでほしい」。


 もん 牟禮鶴
 2015年に栽培が始まった大分県オリジナルの焼酎専用麦「トヨノホシ」を全量使用しています。地元・豊後大野市産です。
 トヨノホシは2005年から大分県農林水産研究指導センターと大分県酒造協同組合が共同で研究開発をし、森代表も開発に携わりました。耐病性を高めて栽培しやすく、雑味がない味が特長です。
 黄鐘、壱越とは酵母を変え、もろみを通常よりも長期で低温発酵させることで「ゆっくりと華やかな香りが出るんです」。日本酒のようなフルーティーさを感じられます。
 ただ飲むだけでなく、豊かな香りをじっくりと楽しんでほしいと、「香りを聞く」から「もん」と名付けられました。
 ラベルをよく見てみると…分かりますか? その特長をイメージさせる鼻の形がデザインされています。


 ▼かぼすリキュール
 2024年夏に販売を始めた新しい商品です。
 地域活性化や魅力発信を図るため、「豊後大野市内の旧町村のリキュールを造れたら面白いんじゃないか」と2023年にリキュール製造の免許を取得し、立ち上げた企画の第1弾。地元の素材をアピールする狙いもあります。
 豊後大野市緒方町の食品製造業「あねさん工房」が栽培したカボスを使っています。
 無糖タイプと加糖タイプの2種類。無糖はアルコール度30%。どちらかというと“左党”の方が炭酸割りで楽しむ想定です。加糖はアルコール度12%でお酒を普段飲まない人もおいしく味わえるように造ったそうです。


 いずれも大分県内外の特約店で取り扱っています。

 どれもゆっくりと堪能したいものですね。まず一杯目を何にするか、悩ましいところです。
 ちなみに私のオススメは牟禮鶴「黄鐘」です。

(大塩信)

【牟礼鶴酒造】


 ▼所在地 豊後大野市朝地町市万田570
 ▼酒蔵見学 製造時期は3~5月、10~12月で見学は事前の申し込みが必要。蔵の店頭では焼酎の試飲や販売も(平日の午前10時~午後5時、土日祝日は要問い合わせ)。地域の特産「綿田米」を使用したおにぎり作り体験や焼酎の試飲ができる日本文化体験ツアーもホームページで受け付けている。
 ▼ホームページ https://6026.jp/
 ▼問い合わせ 0974-72-0101

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