6代目の中野淳之社長
中野社長は「時代に合った、自分の造りたい酒」を見つけるため、全国の地酒を飲み歩きました。
そんな中、東京のおしゃれなバーで若者がワイングラスで日本酒を傾ける様子に出会い、「こんなシーンに合う酒が造りたい」と思うように。
苦しい現状からの脱却を目指し、酒蔵の新ブランド「ちえびじん」シリーズを立ち上げました。
「やわらかく、親しみやすい印象に」と、商品名は漢字から平仮名表記に。イメージカラーもピンクにすることで伝統を受け継ぎつつも、女性や若者といった新たな層に受け入れてもらえるようにとの思いが込められています。
全商品に通じる味のコンセプトは「優しい甘みときれいな酸」。中野酒造が醸す酒は多くの食材、料理との相性が良く、食中酒としての完成度はピカイチです。
古風で時代遅れ、悪酔いしそう、おしゃれじゃない…。
「これまで負のイメージがあった日本酒の印象を変えたかった」と中野社長。旬の料理に幅広く対応できるようにと季節限定商品も年1品のペースでリリースし、今では11種類にまで増えました。
試行錯誤の中、転機が訪れたのは2018年です。
ちえびじん純米酒などの主力商品が海外のワイン評論家やソムリエらに高い評価を得ました。
「
芳醇な香りや優しい酸味がワインに通じるところがあり、海外でも受け入れてもらえた」と中野社長。
元サッカー日本代表の中田英寿さんも高く評価。中田さんがプロデュースする日本酒イベントに招かれたこともあったそうです。
最近は人口減少に加え、世間では若者の酒離れがいわれています。
中野社長は「いい意味で、いかにお酒らしさから離れられるかが鍵だった。コメの品質や酵母の種類、磨き具合などのおいしい日本酒を造る基本はもちろんだが、お客さんにどうやって飲んでもらうか、どんなふうに提供するか―をイメージしながら、こだわりを持って商品を造ってきた」
「今後も飲酒人口が減り続けている厳しい現状が続くが、お客さんの声を聞きながら地元産にこだわったいい酒を届けていきたい」
これからも、地域とともに成長し続ける決意を力強く語ってくれました。