簡易検査キットを試作する現地の技術者たち=昨年6月、ブータン(大分大医学部提供)
ブータンで胃がん予防の国際共同研究を進める大分大は本年度から、発症要因とされるピロリ菌感染の有無を調べる迅速検査キットの現地生産に取り組む。共同研究を進める医療品メーカー「アドテック」(宇佐市)と開発。2027年度に年間約20万キットの供給を目指し、内視鏡の配置や扱う医師の育成と併せて同国での予防・早期発見を加速させる。
胃がんの大半はピロリ菌感染によって発症する。感染の有無を調べて、陽性者に抗菌薬を投与することは有効な予防手段になる。ブータンの人口は約78万6千人。同国ではがんによる死因の1位は胃がんで、世界保健機構(WHO)によると、22年の年齢調整死亡率(年齢構成の異なる地域間で比較できるよう調整した比率、人口10万人当たり)は14・2%で世界4番目に高い。背景には国民の約7割がピロリ菌に感染し、早期発見の遅れが挙げられている。
同大医学部環境・予防医学講座の山岡吉生教授(65)は10年から同国で胃がん対策に関わる疫学調査や医療支援を続けている。同大は国際協力機構(JICA)、日本医療研究開発機構(AMED)が進める国際共同研究プログラム(21年6月~27年6月・総事業費約5億円)に認められて、取り組みをさらに進めてきた。
迅速検査キットは採取した便から約10分で感染の有無が分かる。現地生産することで日本国内に比べて10分の1の経費で作ることができる。アドテック社は同国の技術者に製造手順を指導し、昨年、日本国内の既存キットと同精度を得るなど一定の水準で現地生産できるめどがついた。本年度中にブータンと日本で体外診断用医薬品の認可を得て、本格的に生産を始める。
山岡教授はこれまで、胃がんの早期発見に欠かせない内視鏡検査の体制づくりも進めてきた。当初は国内に1台だけだった内視鏡は働きかけで国内10カ所に1台ずつ配置し、そのうち3カ所の基幹病院には最新鋭機材が導入された。内視鏡医はプログラム開始時点で8人だったものの、同大など日本国内の大学などから医師を現地に派遣して育成し、現在は24人に増えている。
ブータンは医療費を国が全額負担しており、胃がん患者が減れば同国の財政負担削減につながる。山岡教授は「同国の医療体制に検査キットを根付かせ、ピロリ菌感染者を限りなく減らしたい。これらの取り組みを通じて胃がんの予防と早期発見、治療、さらには撲滅につなげていきたい」と話している。