新しい大分合同新聞、始まりました
Gate・紙面ビューアー体験キャンペーン
202049日()

東西南北

2020.1.28



 小物座町(こものざまち)、塗師町(ぬしまち)、東廣小路(ひがしひろこうじ)…。大分市中心部の街角には江戸時代の町名や通り名を記した表示板が貼ってある。城下町の再現であり、散策が楽しい▼京都など古い町名を残している都市もあるが、戦後、多くの自治体から従来の町名が消えた。大分市もその例に漏れない。丁目・番・号の住居表示にすると住所を探しやすくはなるが、町名の整理で中央町といった、いささか味気ない新町名も生まれた▼似たようなケースは市町村合併でも起きた。特に対等合併の場合が新自治体名の選考で難航する。調整の末、各自治体の頭文字を組み合わせたり、イメージ優先で平仮名にするなど“工夫”をする▼その結果が歴史的地名の消滅となる。地名は土地の記憶であり、可能な限り残したいと思う。そこに暮らしてきた人々の生活が塗り込められているからだ▼人の名前も同じである。氏名はその人そのものであり、存在証明に他ならない。だが、横浜地裁で始まった知的障害者施設殺傷事件の審理は、被害者を「甲A」「乙B」などとした。家族の多くが差別に苦しんだ経験を持つことへの配慮という▼しかし、甲Aさんの母は名前を公表した。「美帆さん」である。「娘が一生懸命に生きた証しを残したい」との言葉が胸を打つ▼土地に名があり、人に名がある。とりわけ、人だ。すべての人々が名前を隠さずに生き、人として尊重される社会にできないものか。
2020年1月28日

東西南北

 

 大分合同新聞の顔とも言えるコラムです。朝刊1面に掲載。短い文章ですが、政治や世の中の動き、いま話題の事柄を鋭く、時に風刺の効いた、心温まる筆致で描きます。故事来歴などのうんちくも豊富。文章に親しみ、物事を考えるヒントにもなる。それが「東西南北」です。

最新の紙面はこちら

ニュースアクセスランキング 4時11分集計

大分ニュース