新しい大分合同新聞、始まりました
Gate・紙面ビューアー体験キャンペーン
202042日()

東西南北

2019.12.8



 リンカーンといえば「人民の人民による人民のための政治」というゲティズバーグでの演説が有名だ。時は南北戦争のさなか、日本では幕末の動乱期、1863年のことである▼当時、南軍は長期にわたる行軍で靴を履きつぶし、はだしで歩く兵もいたという。部隊を率いていた将軍が、たまたま新聞で新型ブーツの広告を見つけ、靴の補給へゲティズバーグに進軍した。その途中、北軍と遭遇して歴史的激戦となった。北軍が勝利した結果、リンカーンの演説につながったという▼「一年諸事雑記帳」(加藤秀俊著)からの受け売りだが、軍人にとって靴は重要である。とてもではないが、はだしでは戦えない。ゲティズバーグでのリンカーン演説は、軍靴が誘因だと思えば歴史とは奇縁なものである。だが、旧日本軍にとっては嫌な思い出しかない▼「それはサイパンの玉砕頃から、前線行きの兵士に渡り出したゴム底鮫(さめ)皮の軍靴であった。ゴム底は比島の草によく滑り、鮫皮はよく水を通した」。大岡昇平の「靴の話」である。かつての牛皮は物資不足で馬、豚からついに鮫皮へ。それは山中を1週間さまよった時には履きつぶしていた▼先の戦争中、資源と食糧の不足、補給システムの崩壊は多くの餓死者も招いた。きょう8日は「真珠湾攻撃の日」。「軍靴」の言葉は「軍靴の響き」「軍靴の足音」として使われる。今が、そんな時代でないことを願う。
2019年12月8日

東西南北

 

 大分合同新聞の顔とも言えるコラムです。朝刊1面に掲載。短い文章ですが、政治や世の中の動き、いま話題の事柄を鋭く、時に風刺の効いた、心温まる筆致で描きます。故事来歴などのうんちくも豊富。文章に親しみ、物事を考えるヒントにもなる。それが「東西南北」です。

最新の紙面はこちら

ニュースアクセスランキング 15時21分集計

大分ニュース