冨田千愛「水とけんかしないということ」

世界ボートで日本女子初の銀メダル



 確かな手応えをつかんだようだった。

 オーストリアのリンツで行われたボートの世界選手権(8月25日~9月1日)で、冨田千愛(福井県スポーツ協会)が非五輪種目の女子軽量級シングルスカルで2位となり、日本女子初の銀メダルを獲得。「これが水とけんかしないということか」と独特の感覚を得て、決勝までの3レースを滑るようにこいだ。

 五輪初出場となった2016年リオデジャネイロ大会では軽量級ダブルスカルで12位に終わり、その後に「向いていないのでは」と競技をやめようか悩んだ時期もあった。

 今では「もう一度あの舞台でリベンジしたい」と20年の東京五輪を見据えている。

 予選では弱気になりかけても、周りを気にせず自分のこぎに集中した。

 5位だった7月のワールドカップ(オランダ)の決勝で抜けなかったカナダ選手と同じ組になっても1着で突破すると、準決勝では翌日の決勝に響かないよう余力を残して2着でゴール。決勝は「もう千まできたか」と手応えは十分で後半にスパートをかけ、優勝したドイツ選手を最後まで脅かした。

 スタートで上位に食らい付き、中盤にペースを保って後半で仕掛ける理想のレース展開を繰り広げた。

 五輪種目の軽量級ダブルスカルが本命種目。

 ことし6月に岩手県で行われた合宿の評価レースで好結果を出せず、非五輪種目の軽量級シングルスカルに回った。

 「ダブルスカルとして枠を取りに行きたかった」。そんな苦しい時、尊敬するアスリートの一人、18年平昌冬季五輪でスピードスケート日本女子初の金メダルに輝いた小平奈緒の言葉をふと思い出し、助けられた。

 「氷と仲良く」「氷とけんかしない」などインタビューで口にする独特な表現が好きだという。

 競技は違っても「ボートも一緒。水と仲良くできているか」と自問自答すると、自然と気持ちが前向きになった。「足りないところを捉えるチャンス」と心を入れ替えて軽量級シングルスカルに集中した。

 これまでトレーニングで自分を追い込めば追い込むほどいいと思っていたが、逆に自分を苦しめていることに気付いた。

 短所も気になった。ネガティブな気持ちを改め、後半にバテないスタミナなど自分の長所を伸ばすことに目を向けた。世界選手権開幕前の練習から「水や船と一緒にこぐ感覚」をつかむことができたという。

 初の快挙を成し遂げても、ゴール直後の喜びは抑え気味だった。

 今大会は東京五輪予選を兼ねた最初の大会で、主力選手は出場枠を得るため五輪種目に流れた。

 後日、「これが(五輪種目の軽量級)ダブルスカルだったらもっとうれしかったんだろうと思う。トップクルーがいない中で、今の実力を確認できた」と率直な気持ちを語った。それでも日本女子初メダルの事実は揺るぎない。

 今大会で五輪出場枠を得られなかった日本勢は、次の機会となる来年4月のアジア・オセアニア大陸予選(韓国・忠州)で男女シングルスカル、男女軽量級ダブルスカルの4種目に選手を派遣し、最大2種目の枠を目指す。

 その前に3月の日本代表候補選考レースを勝ち抜き、軽量級ダブルスカルのクルーに選ばれないといけないと冨田は考える。

 そこからアジア・オセアニア予選へ。二人で艇を進める軽量級ダブルスカルはコンビネーションが求められる。「頑張れば頑張るほど進まなくなるのがボート。相手をこがす技術も付けていきたい」と意欲に満ちていた。

松橋 一之進(まつはし・いちのしん)プロフィル

2015年共同通信入社。札幌編集、函館支局、大阪社会部を経て2018年12月から大阪運動部でプロ野球オリックスを担当。2020年東京五輪ではボート、アーチェリーを取材する。横浜市出身。

2019年9月11日

スポーツリレーコラム

共同通信記者たちが見たスポーツ界の裏側をお見せします。

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