一般社団法人ひとねるアカデミー 代表理事 佐藤陽平(49)=臼杵市= 先日、ある小学1年生の日記を見ました。 「2年生になったらがんばります。もっとやさしいせんせいがいたらいいなとおもいました。またまた3年になってもがんばります」 「がんばります」と具体性ゼロの言葉でごまかし、担任の先生に堂々と文句をたれ、最後は文字を無駄にデカくしてマス目を埋めるという姑息(こそく)さ。もしみなさんが親や先生だったら、この子にどう指導するでしょうか。 実はこれ、実家から出てきた43年前の私の日記。 こんなテキトーな子どもだった私も、今では脳科学を研究し、体験教育の仕事に携わり、新聞でエッセーを書かせていただいています。 私は、子どもの頃に「心のままに体験し、心のままに文章を書くこと」は、今の時代だからこそあえて経験させたい大切なことだと考えています。 なぜなら、体験から生まれる率直な感情こそが「自分らしさを発見するためのセンサー」だから。 「これが好き!」「これは絶対に嫌だ!」「これがワクワクする!」 さまざまな体験を通じて感情センサーが動くからこそ、「自分だけのモノサシ」が見つかり、他人とは違う「自分らしさの輪郭」がはっきりとしてきます。このような自分のモノサシを軸にして、自ら動き、たくさんの失敗や試行錯誤を繰り返すことで、感情コントロール力も磨かれます。そして、「これが自分なんだ」と受け入れ、誇りを持つ自尊心が身につくからこそ、他人の目や人生の壁にぶつかってもしなやかに乗り越えていく強さになるのです。 しかし今、子どもたちの「感情センサー」が鈍ってしまうリスクが高まっています。 AI(人工知能)やスマホの時代、画面の中で流れてくる動画は、体を動かさなくても手軽で強烈な刺激を脳に与えます。外遊びのような能動的に五感をフルに使って湧き上がる感情と違い、受動的に刺激され続けるため、ゆでガエルのように依存へとつながってしまう。つまり、ネットのアルゴリズムに感情を作られ、誘導される人生になってしまうのです。どこの誰か知らない人にコントロールされていることにも疑問を持ちません。 その結果、「自分が本当に何をしたいのか分からない」「自分で感じて考えて行動することに自信がないため、誰かに言われた通りにしか動けない、指示を待つしかない」という、自分らしく生きることができない子どもが増えています。 大分県には、子どもの五感をフル活用させる豊かな大自然があります。しかし、その環境を生かせるかどうかは私たち大人のあり方次第。「危ないから」「なにかあったら責任を問われるから」と先回りして大人の責任論の枠にはめず、本物の自然の中で心のままに遊ばせる体験こそが必要です。そのためには、行政や学校の対応を求めるだけでなく、まず私たち大人自身のあり方から問い直していくことが求められます。 子どもの頃は「毎日が日曜日」の感覚で、「明日はどこを探検しようか?」「あの魚を釣りにいこう!」とワクワクしたり、スケジュールに追われることなく自らの考えでやってみたり、ときには、ぼーっと過ごしたりする。そうした「のんびり時間」こそが子どもの脳の発達に欠かせないことが、脳科学でも明らかになっています。 感情センサーは、何歳からでも磨き直すことができます。一方で、幼少期に心のまま遊んだ記憶や失敗を糧にして成長するたくましさは違います。幼い頃に無意識領域にインストールされ、生涯にわたって自分を支える根っこになるのです。 だからこそ子どもたちには、心のままに体験し、それを心のままにアウトプット(内側から外側へ向かって伝えること)する経験をさせてあげてほしいのです。 「地球さんご賞」には、大人が喜ぶような立派な作文はいりません。 「良い子は川で遊ばないという看板があるけど、川で遊んだら悪い子なの?」「昔はたくさん魚が釣れたっていうけど、なんでも気候変動のせいにしてごまかしていない?海外は魚が取れているらしいけど」「もっとやさしい先生がいい」 大人が読んで苦笑いしてしまうような作文ほど、何十年かたったときに最高の笑い話になり、私のように「あの頃からアホだったんだな」と振り返ることができ、このように子育てや教育のネタとしても生かされていきます。そして、この作文を書いた子どもたち自身が親になったとき、幼い頃の自分の文章を読み返せば、いわゆる「完璧な子育て」を手放し、わが子の個性をありのまま受け入れられるはず。「失敗しても大丈夫」と子どものしくじりを受容し、不安よりも可能性を信じ抜き、のびのびとたくさんの体験をさせてあげられる、そんなおおらかさを持てるようになるかもしれません。 えっ? うちの子はそもそも自分の言葉でアウトプットできないから書けない? もしそうであれば、私たち大人の関わり方に対する子どもからのサインかも。「あーしなさい、こーしなさい」と言い過ぎていたり、知らず知らず子どもの感情にフタをしていたり。 そんなときは、私たち親も「肩の荷を下ろしていいんだ」と思って、一度スマホを置き、ちょっと散歩に出て身近な自然に触れてみませんか。自分の心に向き合う時間をつくり、子どもと一緒に「地球さんご賞」の作文を書いてみるのも、きっと自分に気づく時間になるはずです。 作文を上手に書かせることが目的ではありません。作文に向き合うことをきっかけに、子どもも大人も「心のまま」に感じることの大切さに立ち返り、それぞれの「自分らしさ」を愛(いと)おしく思えるきっかけになればうれしいです。★★★★★★★★★★★★★★★★★ 地球さんご賞は、命や自然、環境の大切さをテーマにした、子どもたち(小中学生対象)の作文コンクールです。募集要領と原稿用紙をPDFで添付していますので、奮って応募ください。
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