危険運転致死傷罪の見直しを進めた法務省=東京・霞が関
危険運転致死傷罪に初めて「数値基準」を盛り込む自動車運転処罰法の改正案が近く国会で成立する見通しだ。一定の速度超過や体内アルコール濃度が確認されれば、一律に同罪が適用されるようになる。大分市の時速194キロ交通死亡事故で浮き彫りになった処罰要件の分かりにくさを解消するのが狙いだ。法改正のポイントや今後の課題を紹介する。
危険運転致死傷罪は2001年、悪質な運転に厳罰を科すために創設された。
「過失」のみで裁いていた交通死傷事故を、「故意犯」として処罰することを可能にした。法定刑は最長で拘禁刑20年。過失運転致死傷罪(拘禁刑7年以下)よりも格段に重い。
立法に当たっては、猛スピード走行や飲酒運転の危険性を「人に凶器を向けているに等しい」と捉えた。群衆の中で面白半分に刃物を振り回し、意図せず当たって人を死なせた場合などに適用される「傷害致死罪」(最長で拘禁刑20年)に匹敵する犯罪と位置づけた。
刑法学者からは「悪質な事故に限った適用にするべきだ」といった指摘があり、当時の国会も「対象が不当に拡大され、乱用されることがないように」と付帯決議をした経緯がある。
創設時に処罰対象とされたのは5類型。現行は高速度と飲酒のほか▽殊更に赤信号を無視▽車や人の通行を妨害―など計8類型となっている。今回の法改正で二つの数値基準と「ドリフト走行」が加わり、計11類型に拡大する。
司法統計年報によると危険運転致死罪に問われ、24年に一審で有罪判決を受けたのは18人。このうち66%の12人は懲役7年を超えている。
一方で、過失運転致死罪で有罪だった1058人のうち、95%の1008人は執行猶予が付いた。実刑となった50人中42人は懲役3年未満。
両罪の量刑には明確な差があり、適用件数にも大きな開きがあるのが実態だ。