引退馬の「キョウワカイザー」を迎える村島みどりさん=昨年12月、大分市内
引退した競走馬に安心できる余生を―。サラブレッドの寿命は20~30年とされる中、長くても7~8年で競技を終える馬にとり「その後」の方が圧倒的に長い。「穏やかに命を全うできる馬を一頭でも増やしたい」。別府市実相寺の村島みどりさん(57)は支援団体「Wing Horse」を設立し、働きを終えた馬のセカンドライフを守る活動に乗り出した。
昨年12月、1頭の馬が大分市荏隈庄の原の乗馬クラブにやってきた。かつて佐賀競馬で活躍した牡馬「キョウワカイザー」。2020年に引退して現在は15歳。福岡県で乗用馬として働いていたが、現役時代のけがで右後ろ足に支障があり、扱いづらいとの理由で行き場を失っていた。
事情を知った村島さんがクラウドファンディングで賛同者から70万円を集め、初めて引き取った馬。クラブの預託代にも充てる。
「無事迎えることができてホッとしている。今まで頑張って働いた分、のびのびと過ごしてほしい」。芦毛(あしげ)の体をなでながら柔らかくほほ笑んだ。
家庭を持ち子育てにいそしんできた中で、馬と出合ったのは7年前。現在、高校の馬術部員として活動する次男(17)が小学6年生で乗馬を始めたことがきっかけだった。「人馬一体となり、苦しさも喜びも共有しながら歩む姿を応援してきた。息子の成長の隣にはいつも馬がいた」
活動を支える中で見えてきたのは「光」だけではなかった。日本軽種馬協会によると、国内の競走馬は年間7千~8千頭生まれる。「中央・地方競馬などで活躍できるのは、ほんの一握り。大半の馬は所有者が代わって行方が分からなくなり、食肉などとして殺処分されるケースが多い」
人間と同じように成長速度や個性など個体差がある中で、たった数年で価値を判断され、切り捨てられる競馬界の現実を知り、胸が締め付けられた。「何かできることはないだろうか」
昨年8月に支援に向けた任意団体を設立して代表に就いた。集まったメンバーは7人。「引退競走馬たちにもう一度生きる未来を」と訴え、殺処分ゼロに向けた制度と支援を求める署名活動を始めると、全国からオンラインを含む計1万6088人が賛同した。
「海外から協力してくれた人もいた。思いに共感してくれる人がこれだけいることに勇気づけられる」
「業界のタブー」である殺処分について、もっと議論が必要だと別府市内で講演会も開いた。「命を終えるまで責任を持つ終生飼育を進めたい。私たちの取り組みにより引退馬の現状を少しでも知ってもらうことで、支援の輪が広がると信じている」
活動は始まったばかり。いずれ、養老牧場をつくる夢に向かって、小さな一歩を積み重ねていくつもりだ。