火災現場を調べる消防隊員=19日午後1時41分、大分市佐賀関
大分市佐賀関の漁師町で起きた大規模火災は、出火から一夜が明けた19日も現地で消防隊員らによる消火活動が続いた。最大188人に上った被災者は近くの公民館に身を寄せ合い、疲れた表情を浮かべた。各地から食料や生活用品が届けられ、炊き出しも振る舞われた。
早朝からサイレンを鳴らした消防車両が行き交い、上空からはヘリコプターが頻繁に放水した。大分市消防局や消防団に加え、県内各地の消防本部からも応援に駆けつけ、休みなく消火活動に当たった。
19日朝、現地に入った消防団の男性(60)はホースを延ばし、飛び火した山林の火を消して回った。「30年近く活動してるが、ここまで被害が大きい火災は初めて」と話した。
火災により周辺では最大352棟が停電した。電気やガス、水道などインフラ関係の職員も多数現地で活動した。
佐賀関は関あじ・関さばのブランド魚で全国に知られる地域。近くに住む漁師の男性(77)は「友達や親戚が被害に遭った。しばらくは漁に行く気になれない」とこぼした。
被災者は現場から数百メートル離れた佐賀関市民センターにある佐賀関公民館に避難した。
パート従業員幸サツキさん(78)は火に気付いて家を飛び出した。立ち入りが規制されており、現在も家の状態は分からないという。「一睡もできなかった。被害に遭っていないか心配でならない」と硬い表情で語った。
公民館では大分市の職員や近隣病院の医療スタッフらが被災者の健康状態をチェック。服薬中の人に対して薬剤師が薬を提供する態勢を整えた。民間企業や団体からもおにぎりやパン、使い切りカイロなどの支援物資が次々と届いた。
道の駅さがのせきは従業員8人が、おにぎり410個とクロメ汁200人分を準備した。駅長の松尾島雄さん(77)は「寒い中で避難した人に温かい物を口にしてほしい」。受け取った女性(83)は「おなかがすいていた。おいしい」と感謝した。
足立信也市長は午後2時から現場や避難所を巡った。「被災者が入居できるよう、県と市で公営住宅の確保を進めている。しばらくは気持ちが落ち着かないと思うが、やれることは行政をあげてやる」と語った。