第2次世界大戦のさなか、ヒトラー暗殺計画に加担した実在のドイツ人牧師を描いたドラマ。 ディートリヒ・ボンヘッファーは20代半ばで米ニューヨーク市の神学校に留学する。黒人の級友が暴力を振るわれ、人種差別を受けるのを目の当たりにする。思わず「ドイツは米国のような差別がなくて大丈夫」とつぶやいてしまう。 帰国した彼を待っていたのは弱小政党だったナチスが台頭する姿だった。彼らはユダヤ人迫害の政策に宗教の力を利用。ヘブライ語聖書の出版と流通を禁止し、イエス・キリストの出自をユダヤ人からアーリア人にねじ曲げる。教会の聖職者たちは、ナチスのヒトラー総統を預言者であり、真の救世主だともてはやす。 主人公は迎合するような教会の対応に怒りを覚え、「教えのよりどころとなっているのは神の言葉。総統の言葉ではない」と批判するのだが…。 「最大の罪とは何か」ということを考えさせてくれる一作。「なんじの敵を愛せ」というキリスト教の理念に背き、ヒトラーを抹殺しようとした主人公か。差別的で非人道的な政策をとり続けたナチスか。作品は、恐怖や理不尽を感じながらも、抵抗せず、ナチスの暴虐を許してしまった聖職者たちの罪も取り上げる。 暗殺に加担したディートリヒに対する評価は賛否があるだろう。ただし、理不尽に満ちた現状を見過ごさず、抵抗しようと苦しんだ人生からは、現代にも通じるテーマを感じるはずだ。 シネマ5bisで22日(土)~28日(金)の午前10時と午後4時40分。23日は午後の回が休止。(この日程以外も上映あり) ◇ ◇ ◇ 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。
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