「くにさきかたち工房」を営む陶芸家の垣野勝司さん=国東市国見町
古い民家を改装したカフェ「みなつち」は、水と土が店名の由来だ。国東市国見町大熊毛の国道213号沿いで「くにさきかたち工房」を構える陶芸家の垣野勝司さん(54)がギャラリーを兼ね、アトリエに併設してオープンさせた。
土に根差した生活の中で制作した作品の数々。店内に飾られた陶器はどれも味わい深い。ドリンクやプリンは素朴でぬくもりのあるカップと器で提供され、心安らぐひとときを過ごすことができる。「たくさんの人が集う魅力ある場に育ってくれたらいい」
千葉県佐倉市出身。武蔵野美術大卒業後、実家で陶芸教室を開くなどしていた。リーマンショックや東日本大震災が起き、暮らしを見つめ直した。自身の工房を持とうと思い立ち、国見町のNPO法人がネットで紹介していた空き家を見つけた。2012年3月、妻と2人の子どもを連れて移り住んだ。
海にも山にも近く、豊かな自然に囲まれた新天地。さまざまな技法を試しながら作陶に励む。
まきストーブから出た灰や近くの砂浜から採取した砂鉄、シーグラスなどを使った焼き物は手に持った際の気持ちよさを重視する。「常識にとらわれず、新しい素材を取り入れている。ずっと自由で、良い意味で素人でいられたらいい」とうなずく。
カフェから100メートルほど離れた田んぼでは自家用の米作りにいそしむ。「稲作は日本の文化の根幹にある。国東の自然から感じられる気持ちよさと、人が持つ創造性を作品に投影していきたい」と笑った。