研修で農業を体験する地域科学研究所の新入社員=由布市
新年度がスタートし、県内多くの企業で新入社員研修が実施されている。ビジネスマナーや、業務に必要なスキルを身に付ける重要な機会。各社は自社の特色や理念も理解してもらえるよう内容に工夫を凝らす。若年層の早期離職が共通の課題となっている中、人と人のつながりを深めることも意識して、人材の定着を目指している。
「次はジャガイモの草取りをしましょう」。地域科学研究所(大分市東春日町)の新入社員12人は10日、由布市挾間町の畑で、農家の人に教わりながら作物の世話に汗を流した。
主に行政のコンサルティングを手がける同社では、社員が顧客である自治体の現状や課題を知っておくことが欠かせない。
1次産業に触れる農業体験は、3泊4日の宿泊研修の一部。参加者は過疎高齢化が進む地域に出かけ、廃校で講義を受けたり、地元住民と交流したりもした。
兵庫県出身の湯河虎太郎さん(23)は「現場に行くことで、より深い知識を身に付けることができた」と感想。配属後も協力し合える関係を築けるよう、寝食を共にして同期の結束を深めた。
FIG(大分市東大道)は傘下に情報通信業のモバイルクリエイト、半導体・自動車関連のリアライズなど複数の企業を持つ。大切にしているのは「社員がグループの一員としての意識を持つこと」だ。
本年度はグループ全体で16人を新採用した。入社式は各社、合同の計2回。その後の1週間は企業間異動の有無にかかわらず、全員で一緒に行動し、研修などをした。各社の専門性を組み合わせて事業に取り組むことが多く、スムーズな連携ができるようにするのが狙いという。
人材定着対策として、FIGにはグループ間の異動を希望できる「人財公募制度」がある。業務部総務グループの中村淳課長代理(35)は「行き詰まったときに退職ではなく、グループ会社で働くという選択が残されている。研修で他社の業務内容が分かれば、公募制度も活用しやすくなると思う」と話す。
小規模な会社では、社会人としての基本を指導するマニュアルやノウハウがないケースもある。
地場シンクタンクの大銀経済経営研究所(同市中央町)は毎年、新入社員向けビジネスマナー研修を開き、多くの会社から申し込みがある。今年は計4日間で47社から121人が参加。座学だけでなく、名刺交換やお辞儀の仕方などを実践形式で学んだ。
講師の佐藤悦子さん(59)は「同期が少ない企業の新入社員にとっては、他社の同世代と接点を持てる機会にもなる。同じ県内で働く仲間として心強い存在になるはず」と説明。今後の成長と活躍を期待した。