性別を変え、女性として生きることを選んだ元麻薬王と、支えた弁護士が織り成すミュージカル。 舞台はメキシコ。弁護士のリタは麻薬組織のボス、マニタスに呼び出される。「性別適合手術を受け、別人に生まれ変わるために協力してほしい」という依頼を受け、秘密裏に優秀な医師らを手配。マニタスが敵対組織に殺されたというストーリーを用意して、彼の妻子をスイスに送り届ける。多額の報酬を受け取り、2人の関係は終わりになるはずだった。 4年後、ロンドンで新たな生活を送っていたリタは、ある女性と知り合いになる。それは「エミリア・ペレス」として、新たな人生を歩き出したマニタスだった。なぜ、目の前に現れたのか。リタは「過去を知る自分を殺しに来たのでは」と恐怖するが…。 生まれた環境ゆえに、裏社会で雄々しい男を演じざるを得なかったマニタス。彼をはじめとした、社会の中で抑圧されてきた人々が、自由に羽ばたこうとする姿を描いた人間賛歌。別人に生まれ変わろうとも、消えることのない家族愛も盛り込まれており、人間くさい物語にぐっとくる。 多彩なジャンルの音楽が登場。特に第97回アカデミー賞で歌曲賞に輝いた「El Mal」が披露される場面は見どころ。同賞助演女優賞を受賞したゾーイ・サルダナ演じるリタが、政財界の大物らが集うパーティー会場で社会に対する怒りをぶちまけながら、キレの良い歌やダンスを見せる姿は圧巻の一言だ。 シネマ5bisで29日(土)~4月4日(金)の午前9時半、午後2時45分、同5時20分。(この日程以外も上映あり) ◇ ◇ ◇ 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。
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