「Viva Niki タロット・ガーデンへの道」の一場面(ⓒ2024 Niki Film Project All Rights Reserved. ⓒ撮影 松本路子)
            
         
        
        
    
    
    
    
    
         20世紀を代表する造形作家、ニキ・ド・サンファル(1930~2002年)の作品と人生をたどるドキュメンタリー。監督は10年以上親交のあった写真家の松本路子。ニキの孫やひ孫、野外モニュメントの制作を依頼したコレクターらを取材し、革新的な芸術家への思いを聞き出した。
 フランスの富豪に生まれながらも、家は大きな恐慌に巻き込まれて没落。少女時代には父親による性的虐待もあったという。20代の時に精神疾患を患い、治療として絵を描き始めた。正規の美術の教育を受けていないが、出産や離婚などの経験、さまざまなアーティストとの交流を通して、独自の表現を生み出した。
 絵の具やペンキを仕込んだレリーフをライフルで撃ち、社会や自分を取り巻く環境に向けての怒りを示した「射撃絵画」や、カラフルで生きることのエネルギーに満ちた女性像「ナナ」シリーズなど、人生とともに変化する作風が紹介される。
 本作の魅力の一つは、ドイツやフランス、日本など、各地に残された彼女の作品が数多く登場すること。ニキに誘われて世界中を旅するようで楽しい。
 中でも制作に20年をかけたイタリア・トスカーナ地方の「タロット・ガーデン」は、幾つもの巨大彫刻が立ち並ぶ庭園で圧巻の景色。内部に居間や寝室が造られている建築物もあるという。一つ一つに込められた遊び心や人生訓、理不尽な境遇を乗り越えたニキの優しさが感じられ、心に響く。
 シネマ5で来年1月4日(土)~10日(金)の午後4時20分。9日は同8時5分も。4日の作品終了後、松本監督と大分市美術館の宇都宮寿館長が舞台あいさつをする。(この日程以外も上映あり)
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 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。