「アット・ザ・ベンチ」の一場面(ⓒ2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.)
川沿いの空き地にあった公園がなくなり、残された1基のベンチ。そこにやって来た人々が繰り広げるオムニバスドラマ。写真家・映画監督の奥山由之が監督と脚本を担当した。テレビドラマ「海のはじまり」を手がけた生方美久(うぶかたみく)や劇作家の根本宗子、コントユニット「ダウ90000」を主宰する蓮見翔も脚本を書き、さまざまな味わいのある五つの会話劇を生み出している。
1話目の「残り者たち」は久しぶりに再会した幼なじみの女(広瀬すず)と男(仲野太賀)がお互いの近況や、時代と共に変わってしまう景色に対する寂しさなどを語り合う、ちょっと甘酸っぱいエピソード。
2話目の「まわらない」では、交際して4年目のカップルが別れ話を始めてしまう。女(岸井ゆきの)が、独特な表現で男(岡山天音)に対する不満を口にする。テンポの良さとコントのような会話が楽しい。
3話目「守る役割」は、家族愛を感じる一編。家出をしてホームレスになった姉(今田美桜)と迎えに来た妹(森七菜=大分市出身)が壮絶なけんかを演じる。この他、ファンタジックなテイストの4話目「ラストシーン」、1話目の続編となる5話目「さびしいは続く」で構成される。
多くのエピソードで描かれているのは、ベンチに腰かけて会話するシーン。狭いベンチに隣り合って座るうちに、互いに対する思いがあふれ出す。一つ一つの物語は軽やかに展開していくが、人と人の絆を感じることのできる好短編ぞろいで、心が温かくなる。
シネマ5で28日(土)~1月3日(金)の午後2時25分。28、29日は同7時10分も。(この日程以外に上映あり)
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「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。