アルツハイマーの進行によって徐々に記憶を失っていく夫と、献身的に励まし続ける妻の姿を追ったドキュメンタリー。 舞台はチリ。夫のアウグスト・ゴンゴラさんは軍事独裁政権時代(1973~90年)に独立系メディアの一員として市民の苦境を報じた著名なジャーナリスト。17歳下の妻、パウリナ・ウルティアさんは俳優で、2006年に誕生したバチェレ政権では女性初の国家文化・芸術審議会議長を務めた人物だ。 20年以上、愛を深め合う2人だが、アウグストさんはアルツハイマーに侵されている。彼は病気を自覚した上で、妻と散歩やトレーニング、日食観賞などを楽しみ、日々を穏やかに過ごす。 だが、病状は徐々に悪化。時折、ここがどこなのか、自分が誰なのか分からなくなり「なぜ僕はこんな状態なんだ」と悲嘆に暮れる。パウリナさんは「あなたは独りぼっちじゃない」と言葉をかけながら、支え続けるのだが…。 過去のホームビデオ映像を交えながら、健やかなる時も病める時も、ついえることのない夫婦の絆を映し出した。 「83歳のやさしいスパイ」のマイテ・アルベルディが監督。一部のシーンではパウリナさんもカメラを手にした。撮影スタッフの存在を感じさせない絵作りは、夫婦の間に漂う空気感を丁寧に捉えている。 シネマ5で21日(土)~27日(金)の午前10時20分、午後5時40分。 ◇ ◇ ◇ 「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。
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