朝の通学でBRTを利用する高校生ら=28日午前、日田市田島の「日田市役所前」
【日田】JR日田彦山線のバス高速輸送システム(BRT)「ひこぼしライン」が28日、開業から1年を迎えた。2017年の福岡・大分豪雨での被災から6年後に運行を開始。復興の象徴として沿線地域をつなぎ、利用者は10万人を超えた。「新たな足」として、地域振興への期待も高まっている。
JR九州によると、BRTはルートを柔軟に変更できる利点を生かし、今年3月のダイヤ改正に合わせて日田市内の高校5校近くを通る経路を増便した。7月の大雨でルート上の国道橋が被災して通行止めになっても、迂回(うかい)路を走り遅延や減便は生じていない。
開業からの利用者数は8月5日に10万人を突破(1日平均約290人)。同社広報部は「鉄道と違い、災害時のルート変更が容易にできるのもバスならでは。今後も利用者目線の運行を続ける」と話す。
28日朝、「日田市役所前」では高校生ら約10人が降車した。日田高1年の小田彩稀(さき)さん(15)=市内夜明上町=は「BRTがなかったら親の送り迎えが必要。学校のそばに停留所があって助かる」。
BRT開業後、沿線では地元団体によるにぎわいづくりの取り組みが活発になった。今山駅跡地(市内夜明)はレールを保存し、今年3月、防災機能を備える公園に生まれ変わった。
同市でイベント企画を手がける「Tatara(たたら)」(矢羽田健太代表)は4月から毎月、同公園や沿線の大明地区でマーケットを開催。家族連れなど数百人が訪れ、そのうち約3割がBRTを利用しているという。
矢羽田代表(30)は「BRTに乗って再訪してもらえるよう、沿線地域を活性化して魅力を高めていく」と力を込めた。
<メモ>
JR日田彦山線は2017年7月の福岡・大分豪雨で添田(福岡県添田町)―夜明(日田市)間の約30キロが不通に。同区間はBRT「ひこぼしライン」として復旧し、日田市中心部まで乗り入れるようになった。鉄道当時と比べて駅(停留所)の数は3倍の36駅、便数は通勤通学の時間帯を中心に約1・5倍の32本に増えた。