福士蒼汰、福原遥=映画『楓』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
国民的ロックバンド・スピッツの名曲「楓」(1998年)を原案に、行定勲監督が新たな物語を紡いだ映画『楓』。ダブル主演を務めた福士蒼汰と福原遥が、制作発表時の心境から海外ロケの思い出、物語への共感まで、率直な思いを語った。
【画像】映画『楓』(公開中)メイキング&オフショット
■ 行定勲監督×スピッツ「楓」――企画を聞いた時の印象
――今回の企画を聞いた感想は?
【福士】音楽を原案にした作品が最近増えてきている印象がありましたが、スピッツさんの曲の映画化は初めて、しかも「楓」と聞いて、「面白そう!」と素直に感じました。それを行定監督が手掛けると聞いて、頭に浮かんだのは『世界の中心で、愛をさけぶ』。当時はまだ幼かったのですが、あの作品の記憶は鮮明です。
【福原】行定監督の作品は、“答えを押しつけない”余白があるというか、観た人それぞれが自分で解釈するような世界観があると思っています。スピッツさんの「楓」も人によって受け取り方が違う曲だと思うので、台本を読んだ時、すべてがしっくりとなじむような印象でした。
――今振り返って、この作品に出会えて良かったと感じることは?
【福士】実はラブストーリーは9年ぶりなんです。僕自身ラブストーリーが好きなので、こうして“特別な曲”とともに演じられたことが幸せです。スピッツさんの「楓」に対する人それぞれのイメージがある中で、ひとつの解釈として提示する責任も感じています。
【福原】「楓」は私が生まれた年にリリースされた曲で、小さい頃からずっと聴いていたので、映画化に携われたことは運命のように感じます。こんなに愛されている曲の世界に入れたことが本当にうれしいです。
――「楓」以外に好きなスピッツの曲は?
【福士】「チェリー」は以前、ドラマの中で歌わせてもらった思い出があります。「ロビンソン」「空も飛べるはず」「優しいあの子」など、時代を超えて心に残る曲ばかりですよね。草野マサムネさんの変わらない良さというか、どの曲も聴くとホッとする感覚があります。
【福原】私も「空も飛べるはず」が好きですし、「遥か」という曲は名前が同じという理由で小さい頃からよく聴いていました。
【福士】もう一つ、「スターゲイザー」も好きです。当時『あいのり』をよく見ていた ことを思い出します。
■ 壮大な自然の中で――ニュージーランドロケの裏側
――本作の一部はニュージーランドで撮影されていることも話題です。撮影はいかがでしたか?
【福士】劇中にも登場する星空世界遺産“テカポ湖”が本当に美しくて。ミルキーブルーの湖面に、広大な空。壮大なのですが、近づくと岩がゴツゴツしていてワイルドな一面もある。あの景色の中で演じられたことは特別でした。
【福原】私は作品の撮影で海外に行くのが初めてだったので、すべてが新鮮でした。天気で景色が全然違うんです。“今日は雲が多いな”“今日は湖が真っ青”とか、毎日新鮮で。夕日が湖に反射してピンク色に染まる瞬間もあって、本当に癒されました。
――福士さんは海外ドラマの出演経験もありますが、その経験が生きた部分は?
【福士】英語が話せることは、多少は役に立ったかもしれませんが、それくらいです(笑)。
【福原】現場でも、福士さんが積極的に英語でコミュニケーションを取ってくださって、撮影が終わる頃にはすっかりスタッフさん達と仲良くなっていて、とても頼もしかったです。
【福士】英語は話せた方がいいと思って僕も勉強してきたんですが、福原さんを見ていたら“話せなくても意外と大丈夫なんだな”って思いました(笑)。福原さんの愛きょうで現場が明るくなっていて、スタッフさんからすごくかわいがられていましたね。
【福原】現場ではスタッフさんがおやつをちょこちょこ持ってきてくれたりして(笑)。
【福士】おやつも面白かったね。フルーツにチョコをつけて食べるおやつが出てきたことがあったよね。
【福原】ありました!おしゃれなおやつでしたよね(笑)。本当にいい経験でした。
■ “優しい嘘”をめぐる物語に寄せて
――事故で双子の弟を失った涼(福士)が、弟の恋人・亜子(福原)に“弟”と誤解されたまま過ごしてしまう。しかし、亜子もまた<秘密>を抱えていて――という本作の物語は、真実を言えないままひかれ合っていく2人のすれ違いや、優しさゆえの“嘘”がテーマの一つになっています。
【福士】すごく共感はあります。その場を穏便に収めるためにとっさに嘘をついてしまうことって、現実でもあると思うんです。優しい嘘というものは理解できます。でも僕自身は、ずるずる嘘をつき続けてお互いが苦しくなるくらいなら、早めの段階で答えを出してしまうタイプかもしれません。
【福原】難しいですよね。本当は、どんなことも嘘をつかずにいられる関係が理想だと思っています。でも、涼も亜子も、当時は計り知れないほど苦しい状況にあったはずで…。その中で“そうせざるを得なかった”のかな、という気持ちも理解できるんです。肯定するわけではないけれど、“その瞬間の精一杯”ってあると思うんです。亜子を演じながら、その苦しみを想像し続けていました。
――福士さんは双子の涼と恵を“演じ分け”については?
【福士】弟・恵は左利きという設定があったため技術的な課題もありましたが、行定監督の演出も“分かりやすすぎる違いは出さない”という方針だったので、本当に微妙な差を出すように心がけました。
――これから映画を観る人へメッセージをお願いします。
【福士】劇場で「楓」が聴ける、それだけでも劇場に足を運ぶ理由になると思います。ぜひ大きなスクリーンで、この世界に浸ってください。
【福原】映画『楓』の世界にどっぷり浸かって、寒い冬を心あたたかく過ごしていただけたらうれしいです。