『Mai Kuraki Live Project 2025 リラック素~What a wonderful world~』より
11月2日に愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホールで幕を開けた倉木麻衣の全国ツアー『Mai Kuraki Live Project 2025 リラック素~What a wonderful world~』が12月13日、東京・東京国際フォーラム ホールAにてファイナルを迎えた。
【ライブ写真12点】『Mai Kuraki Live Project 2025 リラック素~What a wonderful world~』より
ツアーに先立ち、10月15日に新曲「リラック素~What a wonderful world~」をデジタルシングルとしてリリースした倉木。これは本ツアーのために書き下ろされた楽曲であり、聴き手を“安らぎ”の没入体験に誘ってくれる彼女の歌声とサウンド感がとても心地よい作品だったが、まさしくこの日の公演も、その世界観を濃密に体感できるコンセプチュアルなライブであった。
まず印象的だったのがオープニング。場内の明かりが消されると、ステージ後方のスクリーンには雨がしたたり落ちる映像が映し出された。その映像の中に登場した倉木は水中で浮遊し、景色はいつの間にか、水中から水辺の森へと移り変わる。そして、緑の草木の中に置かれた楽器・ハンドパンが大きく映し出されると、スクリーン側から客席方向にひと筋のライトが灯され、倉木のシルエットが浮かび上がった。神秘的な映像の世界から、リアルなライブの世界へとグラデーションのように移り変わると、ステージ中央奥の一段高い舞台上に直に座った彼女は、そこでハンドパンを演奏。幻想感あふれるサウンドとアカペラ的なコーラスを活かした「Voice of Safest Place」でライブが始まった。
続いて倉木は、ヒーリング・アイテムとしても知られる大小のクリスタルボウルを鳴らし、そこにパーカッションのリズムとピアノの調べが重なり「Love one another」へ。ステージがスモークで覆われると、6人のダンサー(KAORI、Rina、saya、KOUKI、HiRo-C、ZENIYAN)によるパフォーマンスも行われた。この曲のサビで立ち上がった倉木はステージフロントへ移動。「きみへのうた」のイントロではペンライトを手にし、ゆったりと左右に大きく手を揺らした。その様子に呼応するように、客席でも多くの観客がペンライトを揺らし、その星空のような光景はスクリーンにも映し出された。
そこから、ステージ上に用意されたハンモックに揺られて歌った「Forever for you」、倉木自身がウィンドチャイムを鳴らし、アコースティックギターやラテンパーカッションをフィーチャーしたボサノヴァテイストの「風のららら」、パラソルを手に砂浜の映像をバックに歌われた「Sea wind」と続き、観客はツアータイトル通りにリラックスしながら、倉木の歌声に身を委ねていく。
ここでパーカッションとサックス、ピアノの穏やかな各ソロ・パフォーマンスで演奏された「Wishing on a..」を挟み、その間に衣装をチェンジした倉木が再びステージへ。そして歌われた「Like a star in the night」では、スクリーンに宇宙をイメージさせる星々の光がきらめく映像演出が美しく、曲の終盤には流れ星が走る様子も。すると今度は“星”から“月”へ。アコースティックなサウンドで「Moon serenade,Moonlight」が披露され、続いて倉木にはピンクのスポット、ピアノにはブルーのスポットが当てられて、「tell me your way」がしっとりと歌われた。
ここでバンドグルーヴのギアが1ランク引き上げられると、客席からも手拍子が沸き起こる。すると2人のバックコーラスを従えた倉木は、黒ハットを着用し、ステージセンターへ。彼女の音楽ルーツに強い影響を与えたマイケル・ジャクソンの「Rock With You」がカバーされた。ブラックミュージックのグルーヴと、倉木の可憐な歌声のミクスチャーという、彼女にしか歌えない「Rock With You」で満員の観客を魅了する。ここで再び倉木は舞台袖へ。その間、バンドによる「unconditional L▼VE」(※▼=ハートマーク)に乗せて各パートのソロ演奏が順次披露され、増崎孝司(Gt)、小栢伸五(Ba)、大津惇(Dr)、山下あすか(Perc)、友田ジュン(Key)、中園亜美(Sax)、Wakasa(Cho)、Hana(Cho)といった今回のツアーを支えてきたバンドメンバーが紹介された。
そのR&Bテイストのビートがそのまま途切れることなく、カラフルなライティングの中でスタイリッシュな衣装に着替えた倉木が登場。「Secret of my heart」が始まると、観客は総立ちとなり、ゆったりと全身をリラックスして楽しんだ第一部から一転、踊りたくなるようなグルーヴィな第二部がスタートした。
続く「恋に恋して」では、ダンサーが赤い扇子を手にしながら独創的な舞いを披露し、客席もペンライトも赤く染まっていった。「きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない」では、壮大な満月を背に艶やかに歌唱、そして「渡月橋 ~君 想ふ~」へと続くと、障子や和傘といったグラフィカルな映像演出も加わり、和テイストの趣と、透明感と芯の強さを兼ね備えた彼女の歌声に、観客からは大きな歓声が上がった。
再び倉木がステージを後にすると、倉木がギター、ベース、ドラム、キーボード、トランペット、トロンボーン、サックス、コーラスを1人で担って「薔薇色の人生」を演奏する映像が流され、ステージ上に本人不在ながら観客は大盛り上がりとなった。
勢いそのままに、スポーティな衣装を着た倉木が登場してゲストミュージシャンの徳永暁人を呼び込み、「薔薇色の人生」がアグレッシブに演奏されると、長年に渡り倉木の作品をサポートしてきた徳永との共演ということもあり、盛り上がりは最高潮に。間奏では、倉木の即興スキャットと徳永のベースプレイのバトルも繰り広げられ、曲のラストには「それじゃあ一緒にシメるよ!」という倉木のジャンプを合図に、華々しくエンディングを迎えた。
だがクライマックスはまだまだ終わらない。ストロボが激しく点滅するなか、ヒップホップ感の強いアレンジで「Kiss」を歌うと、26年前の12月にリリースされた、彼女のデビュー曲にしてJ-POP史に残る大ヒット曲「Love, Day After Tomorrow」へ。さらに演奏が途切れることなく始まったのは「Everything’s All Right」。この曲では、倉木とパーカッション、サックス、そしてコーラスのメンバー&ダンサーがステージを右へ左へと移動しながら演奏され、最後にはアカペラでサビのフレーズをリフレイン。倉木は観客と合唱した。そして「You & I」で、さらなる倉木流R&Bを堪能させてくれると、最後にツアータイトルにもなっている最新曲「リラック素~What a wonderful world~」を披露。モノクロ映像が映し出されるなか、第一部のヒーリングタイムと、第二部のダンサブルタイムという対極のテーマを見事に融合したこの曲で、ひとつの物語が完結するかのようにライブ本編は幕を下ろした。
鳴りやまない拍手に応えて行われたアンコールでは、森林の映像をバックに再び倉木がソロでハンドパンを演奏。小鳥のさえずりがこだまするなか、先ほど歌われた最新曲の“チル・バージョン”である「リラック素~What a wonderful world~(432Hz chill mix)」が始まると、会場全体を柔らかくて夢幻的なサウンドが包み込み、倉木自身もステージに寝転がったりと、まさに超自然体で“リラック素”モードに没入していった。
ここで初めてとなるMCが行われ、彼女は最新曲およびツアーのタイトルにもなっている「リラック素」という独特のワードに込めた想いを語り始めた。
「“素”には、みんなの中にある“真実の愛”という想いを込めました。雨、嵐とかいろいろな大変なことがあると真実の愛を見失いそうになるけど、そんな時に自分の内側に帰ってリラックスすると、また違った素晴らしい世界を俯瞰して見ることができるんじゃないかと、そういうメッセージを込めました。そんなみなさんからの素敵なエナジー、届いています。そのままでいてください」
この言葉に客席から温かい拍手が起こると、「もう1曲、届けたい歌があるんですけど、いいですか?」とバンドメンバー&ダンサーを再びステージに呼び込み、ステージと客席が一体になって「always」を歌った。
曲が終わり、観客から大きく、そして長い拍手が送られると、「素晴らしい2026年に向けて、みんなに元気玉を届けたいと思います」と、倉木を中心に出演者全員が横一列にラインナップ。さらに彼女は、ステージの上手の客席エリアにまで伸びる花道に足を運んで観客に手を振り、そして下手花道ではバリアフリー席の観客と手を取り合い、最後にステージのセンターへ。大きなハートマークを手で描き、それを客席に向けて全身で飛ばすパフォーマンスを行うと、会場に詰め掛けた5000人のファンとともに、笑顔でこのツアーを締めくくった。
その後、ステージ両サイドのスクリーンには、『billboard classics Mai Kuraki Premium Symphonic Concert 2026』の開催が決定したことを表示。4月19日 東京・NHKホール、24日 兵庫・神戸国際会館 こくさいホールの日程も発表された(オフィシャルファンクラブでは1月7日までチケットの先行抽選予約を受け付けている)。今回のバンドセットとはまた趣の違うオーケストラとの共演で、倉木は次に、どんな新たなワンダフル・ワールドを届けてくれるのだろうか。彼女が「きっといい年になります」と穏やかに語ってくれた2026年が今から待ち遠しくなる、そんな年末の夜だった。
取材・文:布施雄一郎
■『Mai Kuraki Live Project 2025 リラック素~What a wonderful world~』
2025年12月13日 東京国際フォーラム ホールA
【セットリスト】
01. Voice of Safest Place
02. Love one another
03. きみへのうた
04. Forever for you
05. 風のららら
06. Sea wind
07. Like a star in the night
08. Moon serenade,Moonlight
09. tell me your way
10. Rock With You / マイケル・ジャクソン
11. Secret of my heart
12. 恋に恋して
13. きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない
14. 渡月橋 ~君 想ふ~
15. 薔薇色の人生
16. Kiss
17. Love, Day After Tomorrow
18. Everything's All Right
19. You & I
20. リラック素~What a wonderful world~
encore
21. リラック素~What a wonderful world~(432Hz chill mix)
22. always
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