別府市のラクテンチが2009年7月、リニューアルオープンした。観光の街とともに歩み、80周年を迎える老舗の遊園地は幾たびの経営危機に翻弄(ほんろう)されながら、泉都の丘に灯をともし続けている。県民が特別な愛着を抱く、小さな“大遊園地”の物語をつづる。
※大分合同新聞 朝刊大分別府面 2009(平成21)年7月14日~2010(平成212)年3月30日掲載
< またきたいから、なくならないで > < 祖母、両親、子どもたちと4世代で楽しませてもらいました。思い出をたくさん、本当にありがとう > 「ワンダーラクテンチ思い出帳」と表紙に書かれたB5の大学ノート。ページを繰ると、幼...
ラクテンチの再開を決めた岡本製作所。担当の岡本昌治しょうじ専務(46)は早速、関西で知られた動物園や公園を飛び回り、新たな針路を探り始めた。 「遊園地というより、気軽に来られる公園」。イメー...
復活ラクテンチ――。 ふと手にした就職情報誌。小畑こばたくみこさん(46)は、ページをめくる手を止めた。 別府で生まれ育った。ラクテンチとの思い出は数え切れない。アルバムを開けば、ゾウに...
ラクテンチが新たな歴史を刻んだ18日。夏らしい日差しが客を出迎えた。 「暑くなったねえ。あまり気温が上がるとなあ……」。これから、ペンギンたちがプールを出る。飼育担当の小野森光さん(56)は“主役”の体調を気遣った。 行進が始まっ...
9月3日はラクテンチの80回目の誕生日だった。 別府市誌によれば、ラクテンチが「別府遊園地」として産声を上げたのは昭和4(1929)年。前年には別府観光の父・油屋熊八翁が、日本初の女性バスガイドが案内する地獄めぐりを開始。泉都は大きく...
< ラ・ク・テ・ン・チ > 1つずつ区切るように浮かんでは、パッとなくなる赤い文字。1文字は4・6m四方。夏は午後8時、冬は午後7時からの3時間、点滅を繰り返す。 休園中は消えていた。泉都の人々はネオンを見上げ、ラクテンチが“帰っ...
「師匠!」 ラクテンチ名物ケーブルカーの運転士、田中勝巳さん(65)=別府市南立石=は今、こう呼ばれている。先月から3人の若手が弟子になったからだ。 定時のベルを合図に上駅にある運転室に田中さんが立った。昭和25(1950)年から...
グアグア。名物・あひる競走に出る8羽がコースに現れた。「さあ、よーく顔を見てもらえ」。調教師の声で客席を向くアヒルたち。違いに目を凝らすが……素人目には同じ顔。 「それぞれ目つきやくちばしが違うんよ」。この道30年の調教師。「有限会社...
至る所に湯気が立つ。泉都・別府では、遊園地といえども例外ではない。ラクテンチには、高温の温泉蒸気が噴き出す「地獄」がある。その名を観音地獄という。 昨年の全面リニューアル工事では、観音像前の池を大きな石で縁取った。手本にしたのは地獄め...
春休みが始まったばかりの子どもたちが息を弾ませ、坂を駆け上がる。電子音のメロディー。人々のざわめき。“桜色”に染まった園内はすべてが華やぐ。 「明るい色で迎えたい」。植物の管理を担当する糸永和歌子さん(30)=別府市西野口=はこう心掛...
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