大分合同新聞社とNHK大分放送局の共同企画第3弾。現在から未来へと変わりゆく人々の生活、環境、地域の問題を検証し、活字と映像のメディアミックスで暮らしの未来を考えた。
※大分合同新聞 朝刊1面 2003(平成15)年6月23日~2005(平成17)年11月5日掲載
「きょうは顔色がいいねぇ。体の調子は…変わったことはないかな」 大分市常行の山下チズ子さん(84)方に医師と看護師がやってきた。天心堂へつぎ診療所の麻生哲郎医師(55)による2週間に1回の往診だ。「よく眠れるかな、ご飯はよく食べている...
2000年12月、大分市玉沢の国道210号バイパス沿いに「わさだメディカルタウン」の看板が上がった。カラフルな建物7棟に小児科、耳鼻科、整形外科、眼科、皮膚科、歯科、内科リウマチ科のクリニック(診療所)。バイパスを隔てて大型商業施設・わさ...
「日田に住んでいて本当に良かった。おかげで命が助かったんですから」。50代半ばの男性は1年前の出来事を振り返った。 昨年6月、日田市の職場に転勤したばかりだった。仕事中、突然、気分が悪くなった。胸が熱く、心臓に強い圧迫感。心筋こうそく...
バスが止まった。耶馬渓町山移(やまうつり)診療所の内藤英一郎医師(36)が出迎えた。「今(5月末)は田植えの時季だから、患者さんはいつもより少ないのじゃないかな」 バスを降りたのは10人。「ばあちゃん、田植えはどうしたん」「もう年で作...
「市町村合併を軸に、地域が変革期を迎えている今、地域医療のあり方が問われている」。大分合同新聞とNHK大分放送局の共同企画「大分を創る」で、特別番組「どう守る?地域の医療~くらしを支えるためには~」(11日夜放送)の制作を担当した同放送局...
▽対談者 山田隆司(地域医療振興協会常務理事) 阿部浩一(NHK大分放送局ディレクター) ――地域医療とは、と考えると医師(医療機関)と自治体、住民の関係が浮かぶ。この三角形の中で、地域医療が形づくられると思えてくる。自治体...
初出社から1カ月が過ぎた。「まだ、右も左もよう分かりませんわ」。”新米課長”の榎本康弘さん(52)=真玉町臼野=は苦笑いした。県内の高校を卒業してから約20年間、以前の勤務地だった関西なまりがまだ抜けない。 榎本さんは今年8月末、冷凍...
合同面接会は産・官・学でつくる中津市産業科学技術協議会の主催。自動車産業はすそ野が広い。ダイハツ車体の立地に伴い、地場企業の人材を確保しようと、U・Iターン希望者を募るものだった。会場は、榎本さんと同じように”最後のチャンス”に懸ける人た...
「両親や友達がいる町で、生まれ育った佐伯で仕事に就きたいんです」 佐伯市の県佐伯高等技術専門校で、高山大輔さん(22)=同市脇=が切り出した。高山さんは今年4月から、同校機械加工科で金属加工機械の操作や溶接を学んでいる。「即戦力の技術...
「社名を明かさないという条件なら……」。業務請負会社の経営者が口を開いた。「競争が厳しい。手の内を明かしたくない」と、何度もしぶったあとだった。 「県内のハイテク工場で、製造ライン業務を請け負っている。部品の組み立てや検査作業には長時...
「職場が変わるたびに雰囲気に慣れるのが大変。ストレスもたまりますが、それもいい経験と思い、楽しんで働いています」 推薦入試の準備作業に追われる大分市の日本文理大学。入試や広報を担当する部署で働く大野厚子さん(29)が笑顔で話した。 ...
「うちが求めている人が来るだろうか」。日田市のIT関連企業「OTOGINO」(おとぎの)の鬼武公洋社長(31)はオフィスで待ち続けた。時刻は午後八時を過ぎる。今日も、面接に訪れる求職者はなかった。 「電子メールやインターネットができる...
直川村下直見から約30km、山あいの集落から海辺の村へ。午前7時、曽宮一人さん(22)は自宅を出発する。 「今日はどんな魚が揚がるのか。通勤の車の中で、考えるのが楽しい。ふるさとで暮らせるし、やりがいがある仕事です」 曽宮さんの勤...
「雇用と暮らしは切り離せない。地域の雇用をどう守り、創出していくかが問われている」。大分合同新聞とNHK大分放送局の共同企画「大分を創る」で、特集番組「地域雇用を考える」の制作を担当した同放送局の柴田亜彩子ディレクターはこう話した。番組に...
▽対談者 大谷真忠(大分大学経済学部教授) 柴田亜彩子(NHK大分放送局ディレクター) ――共同取材で雇用の地域格差が浮かんだ。有効求人倍率は中津地区の0・69に対し佐伯地区が0・4。県南部は求職10件に対し求人が4件しかな...
ツーリズムが動き始めた。宮崎・熊本県境に接する祖母・傾山系のふもとにある竹田市宮砥地区。山あいに点在する集落と棚田。県面積の約70%を占める中山間地の農村だ。 「町からたくさんの人に来てもらいたいと思うてな。元禄時代から続く地域の宝を...
ツーリズムへと、竹田市宮砥地区を動かした少子高齢化は、日本の社会の前途を覆う問題だ。国立社会保障・人口問題研究所(東京都)の推計によると、日本の人口は2006年をピークに減り始め、約1億2,770万人(2005年・総務省推計)の人口が50...
「落花生はね、不思議な植物なの。花が地中に伸びて実を付けるの。だから落花生なのよ」。 宇佐市安心院町大の畑で、佐藤陽子さん(63)が話しかけた。「へぇー」「ほんとう」。中学生が声を上げた。 佐藤さんは農村民泊施設「キッチンガーデン...
「60歳前後の夫婦と高齢の父か母。息子は県外で、娘も家を出て会社員。農村民泊客の送迎は夫婦、農作業は主に夫で、妻と母親が料理と家事、掃除。3人で農泊者の農村体験の世話をする。夫婦が元気なうちはいいが……」(6軒) 「60歳前後の夫婦と...
「築100年、敷地面積200平方m、木造1部2階建て、8畳×1、6畳×4、台所・風呂、壁はしっくい塗り」 宇佐市安心院町大、元JA安心院職員佐藤孝さん(48)の自宅だ。「安心院町の農家では、平均的な広さの家。1haの田んぼ、8aの畑を...
げたが並ぶ小さな店の前に、人だかりができた。「このお店の引き戸は全部で8枚ですが、レールは1本しかない。どうやって開けるか、分かりますか」。案内人を務める地元のボランティアが問い掛けると、山口県からの団体客が首をかしげた。 創業は18...
「商店街に人があふれ、店は観光客への対応に追われ、買い物がしにくくなった」「以前のように、店の前に車を止められない」「地域とは縁がないお土産を売る、観光客目当ての店が多くなった」……。 豊後高田市の「昭和の町」では今、地元の買い物客か...
「夜の竹瓦をどうするか」。定年退職後、別府市にUターンした中尾隆太郎さん(60)がパネルやスライドを使って説明を始めた。 「照明次第で風景が変わる。見たい歩きたいと思うようになる。路地にポール状の照明を配置して、人を誘導していく手もあ...
「ツーリズムは少子高齢化の波の中で、地域の暮らしを支える手だてになる」。大分合同新聞社とNHK大分放送局の共同企画「大分を創る」で、特集番組「10年後のあなたのくらしは~ツーリズムのかたち」を担当した同放送局の新見藹(あい)ディレクターは...
「どんな高校生活が送れるんやろう」。朝地中学校(豊後大野市朝地町)の3年生が”新高校”の模型をのぞき込んだ。 10月5日、同中学校で開かれた県立三重総合高校(同市三重町)の説明会。”15の試練”を控えた生徒20人と父母らが出席した。 ...
「三重総合高校を受験しようと思うんやけど……」 朝地中学校で説明会があった夜、3年生の宗岡昌三さん(15)は両親の幸人さん(49)、富子さん(48)に相談した。「大分市の高校も考えたけど、自宅通学なら好きな野球ができる。いろんな道を選...
豊後高田市で”市営学習塾”が開かれている。 昭和の町でにぎわう市中心部から約2km、夜は温泉客が憩う健康交流センター「花いろ」が会場だ。毎月第1、第3土曜日の午前中、中学生らが会議室に集まる。 「この計算ができんと、問題は解けんぞ...
修、収、治、納――。黒板に漢字が並んだ。「中学生でも難しい問題。四字とも『おさめる』と読む。使い分けができるかな」。 豊後高田市の桂陽小学校6年1組。国語の時間に、高田中学校の財前由紀子教諭(39)が問い掛けた。2学期から、市教委が始...
「今日は『月』を書きます」。津久見市の青江小学校3年1組で、書写の授業が始まった。教室の後ろには学習サポーターの保護者が6人。児童25人を見守る。 「2画目の折れの筆遣いがポイント。『一度、筆を止める』『筆を回さない』に気を付けて練習...
「牛の世話をせんといけん。農作業もある。ジェラート(アイスクリーム)作りがこんなに大変とは思わんかった」 豊後大野市緒方町の観光名所、原尻の滝近くの牛舎で、4人の女子生徒が汗を流した。緒方中学校2年生の3日間にわたる職場体験学習だ。 ...
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