大分合同新聞社とNHK大分放送局によるメディアミックスの年間企画。 漁業、海上交通、観光などさまざまな形で大分の暮らしを支えてきた「海」をテーマに地域の問題を探った。
※大分合同新聞 朝刊1面 2002年4月14日~2003年3月13日掲載
中津のアサリ激減には、「壊滅」という言葉さえ浮かぶ。県海洋水産研究センター浅海研究所(豊後高田市)の主幹研究員、田森裕茂さんは「産卵後の疲弊した貝に、著しい高温と多雨が影響した」と原因を推測する。昨年、豊前海の6月上旬の平均気温は平年より...
「こげなもんじゃ。カラばかりじゃろ」。アサリ漁師の榊原由夫さん(59)=中津市角木=は身が入っていない貝を見せた。2月初め、中津市沖の豊前海は風が冷たい。「2枚のカラが離れずに付いちょる。昨年、死んだ貝じゃ」。 かつて、中津のアサリは...
ノリの摘み取り機がうなる。桂川と寄藻川の河口に当たる豊後高田市呉崎の干潟。ノリ養殖場の向こうに、豊前海が広がる。養殖用のノリ網は幅1.5m、長さ15m。竹さおに支えられて、200柵(さく)並ぶ風景は海の畑のように見える。 ”摘み取り”...
「これがカブトガニ。三億年前から姿を変えずに生き続け、”生きている化石”と呼ばれています」。2月9日、中津市大新田の干潟を前に、足利由紀子さん(39)=主婦、同市中央町=はカブトガニが脱皮した後の抜け殻を子供たちに見せた。この日は定期的に...
蒲江町下入津から漁船で20分、揺れる船上で、首藤通憲さん(58)がウエットスーツに着替えた。「冬の風の冷たさはたまらん。でも、海の中はぬくいよ」。首藤さんは潜水漁35年、蒲江の磯場を知りつくしている。潜水時は背中の酸素ボンベと腰の重りで負...
大分市の臨海工業地帯。2月中旬、石油化学コンビナートの工場群に囲まれた三佐漁港から、一隻の船が出漁した。フグはえ縄漁の漁師岩崎貢さん(66)=同市三佐=だ。「漁を始めて50年になる。今の若い人はもう知らんやろう。昔は”汚染魚”が出た、と別...
「ほら、ここにもいた。イボウミニナだよ」。大久保杏菜さん(17)=高校2年=が巻き貝を見つけた。兄の省良君(19)=大学1年=と、妹の李菜さん(13)=中学1年=が貝をのぞき込んだ。2月2日、杵築市の八坂川河口(守江湾)で開かれた干潟観察...
「すべては海が育ててくれる」。蒲江町のアワビ漁師首藤通憲さん(58)の言葉が印象に残る。「海の環境」をテーマに取材がスタートしたとき、わたしは「どう描いたらいいのか」とつかみどころのなさを感じていた。「磯焼け」が起きているという情報だけを...
掘っても掘っても出てこない―。アサリがほとんど姿を消してしまったと言われる豊前海の干潟で、”潮干狩り”の機会があった。約2時間、汗ばむほど干潟を掘り続けたのに、収穫は小粒なアサリが数個。ハマグリ、バカガイ(キヌガイ)もごく少ない。貝の殻ば...
中津の広大な干潟を見て、小さいころ、大分市大在の浜に、家族に連れられて海水浴に行ったのを思い出した。広大な遠浅の海がわたしを優しく包んでくれるように広がっていた。 「昔のように、海と触れ合いたい。住民の強い思いが、いったんは埋め立てた...
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