古里・大分で安心して子どもを産み、健やかに育てていくには何が必要なのか。出産、養育、保育、医療……。地域が子育てを支え、子どもたちと歩むことができる社会の在り方を考えた。NHK大分放送局とのメディアミックスによる年間企画。
※大分合同新聞 夕刊1面 2010(平成22)年4月20日~2011(平成23)年2月4日掲載
土曜日の昼下がり。居間のソファでくつろぐ生野旭(あきら)さん(29)=別府市=のひざの上に、長女美悠(みゆう)ちゃん(2)がちょこんと座った。そばにはお気に入りの絵本をいっぱい並べ、小さな瞳をらんらんと輝せて。パパのひざは美悠ちゃんの“特...
試しにスプーンで一口、スープをすすってみた。じっくり煮込んだ6種類の野菜の甘みが、口の中で広がった。「お、悪くないぞ」 9月のある日曜日。大分市内で開かれた父親の育児講座「おおいたパパくらぶ」の料理編。エプロン姿が初々しい約20人の父...
午前6時半――。洗濯機のスイッチをポンと押し、朝食の準備に取り掛かる。1歳8カ月の長男柊弥(しゅうや)ちゃんにご飯を食べさせ、仕事に出掛ける妻美貴さん(29)を見送る。午前中に掃除機をかけ、洗濯物を干してしまう。“主夫”業もすっかり板につ...
「火曜日のごみ袋の納品は中野さんに、木曜日の害虫駆除の打ち合わせは、すいませんが専務にお願いします。それから……」 有給休暇も含めた9日間の“育休”が2週間後に迫った9月上旬。業務課長の高倉誠治さん(32)は、育休中の仕事の引き継ぎ内...
青森県境に接する秋田県小坂町の金型製作・加工業「カミテ」。午前8時の始業前、下野令さん(30)は長男甲(こう)くん(3)と出勤した。事業所内託児所「チャイルドハウス」の保育士に甲くんを託し、2人に見送られて同じ敷地内の作業場へ向かう。 ...
地域で安心して子を育てるには何が必要か―をテーマとした年間企画「未来をはぐくむ」。男性の育児参加を取り上げた第6部では、大分大学経済学部の高見博之教授(45)=経済政策=に、働く男性が育児に携わる上での課題を聞いた。 ――男性の育...
「そーれ、そーれ。ガンバレー」。1本の綱を引っ張り合いながら、元気な掛け声が響く。 まだおむつをはいている女の子や、すっかり銀髪のおじいちゃん……。多彩な顔触れが一直線に並ぶ。どの面々も、佐伯市鶴岡地区を元気にしている大切な“主役”た...
仕事でどうしても保育園や塾の送り迎えができない。ちょっとだけ育児から離れたい――。身近に頼れる人がいない親の「困った」「息抜きしたい」といったニーズを、地域住民が有償で支える互助組織。それがファミリー・サポート・センター(ファミサポ)だ。...
全国には、地域住民の暮らしを見守る民生委員のネットワークが網の目のように広がっている。地域をくまなく歩き、生活の相談に乗る委員たちも、母親の子育てを陰で支えている。 大分市の西部公民館。春日町小学校区の民生委員や育児サークルのメンバー...
「そのレストラン、行ったことないなぁ」「子連れでもゆっくり過ごせるからオススメよ」。大分市郊外にある自然公園の一角。屋根付きの休憩スペースで、大勢の“ママ友”が車座になり昼ご飯を囲んでいた。 大分市の子育て支援サイト「naana(なあ...
「おばあちゃん、そこで捕まえたよ」。近所に住む青木香澄ちゃん(5)が、チョウチョウやコオロギの入った虫かごを自慢げに見せた。母屋の縁側にいた太田隈フジエさん(83)は「畑はいろんな虫がおるもんねえ」と目を細めた。 納屋の台所では、地元...
年間企画「未来をはぐくむ」の第7部「手をつなぐ住民」では、地域ぐるみで子育てを支え合う現場を取り上げた。現代社会で望ましい子育て支援の在り方とは――。大分大学教育福祉科学部の山崎清男教授(60)=教育経営学=に聞いた。 ――地域ぐ...
県内に住む40代の由美さん=仮名=は養育里親として、夫とともに4人の里子を育てている。 5年前。里親に登録して1週間もたたないうちに、県内の児童養護施設で暮らすきょうだいの養育を打診された。兄のカズ、妹のアキ=いずれも仮名。生まれて間...
「おまえも俺(おれ)を捨てるんか」 少年は吐き捨てるようにそう言って、里親の智恵さん(43)=仮名=をにらみ付けた。きっかけは日ごろの言動への注意だった。怒りに満ちた目の奥に、心に深い傷を負う15歳の少年の不安が透けた。 「私は絶...
大分県内の山あいに広がる閑静な住宅地。里親歴7年の正之さん、佳子さん夫妻=50代=は自宅に近い1軒家を買い取り、子ども部屋とリビングを増築した。「里親」から「ファミリーホーム」に移行するためだ。 今年9月、中学3年の男の子とともに高校...
小春日和の週末。会社員の春香さん(35)=仮名=は、小学生の息子2人と近くの公園に出掛けた。次男は得意の木登りにはしゃぎ、長男は芝生の上に寝っ転がった。のんびりと流れる家族の時間。仕事と子育てに追われる“平日モード”をリセットする。 ...
午前6時。枕元で、携帯電話のアラームが鳴った。 息子と布団を並べる2階の寝室。中津市内で美容室を営む誠さん(52)=仮名=は、隣で寝息を立てる高校2年生の次男(16)を起こさないよう、つま先立ちで部屋をそっと出た。 寝間着姿に上着...
子どもを安心して産み、育てる社会を考える年間企画「未来をはぐくむ」。さまざまな「家族のかたち」を取り上げる第8、9部では、大分大学教育福祉科学部の山岸治男教授(63)=教育社会学、社会教育学=に、家族の形態にかかわりなく、子どもを健やかに...
どんよりとした冬空。師走らしい風が吹き付ける。 「寒い、寒い」。真実さん(35)はまな娘の手を引きながら、小走りで施設の玄関へ。強い風で崩れた娘の髪を手早く結い直すと、その小さな背中をポンと押した。「今日もいっぱい遊んどいで」。ミカ(...
「わが子の発達の遅れをもっと早く見つけて、専門の療育を受けさせてあげられなかったのか」――。 長女のミカ(4)を児童デイサービスに通わせている真実さん(35)=ともに仮名=は、知的な発達の遅れが見つかったいきさつを振り返るたび、複雑な...
泣いたり笑ったりすることの少なかった息子が今、お友達と童謡をニコニコと口ずさんでいる。一歩ずつ、成長してるんだ――。 滋賀県大津市の児童デイサービスセンター「やまびこ教室」。クリスマスを前に開かれた音楽会で、智恵さん(46)は息子のト...
4人掛けの木製テーブル2つを組み合わせた食卓に、8脚のいすがぐるりと周りを囲む。 家族みんなでご飯を食べ、たわいもない話で盛り上がる。子どもたちが宿題をしたり、夫婦でくつろいだり。親子が集う食卓を中心に、家族の営みは広がる。 別府...
抜けるような青空が広がった休日。家族みんなで朝食を囲む。「今日は何をしよう?」。夫淳二さん(35)と4男3女のにぎやかな食卓、いっぱいの笑顔。いつもと変わらない風景。家族と過ごすひとときに、中山香織さん(35)は心がじんわり温かくなる。 ...
子どもを安心して産み、育てることができる社会を考える年間企画「未来をはぐくむ」。最終シリーズの第9部「家族のかたち(後編)」では、障害と向き合う親子の姿を通して、早い時期からの障害児療育と、親子を支援する必要性を考え、大家族の暮らしから子...
大分大学経済学部棟(大分市旦野原)の201号教室。学生が長机を囲んで向かい合う。 1年生を対象にした「地域社会の課題解決型ワークショップ」の授業で、非常勤講師の多々良友美(51)がマイクを持った。...
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