人口わずか1,300人余りの中津江村は、2002年のサッカーW杯日韓大会でカメルーン代表チームのキャンプ地になった。静かな山村は一躍、全世界が注目する「ときのムラ」となり、その年の流行語大賞にも輝いた。夢をかなえた村民の奮闘ぶりを追う観察記。
※大分合同新聞 朝刊日田玖珠面 2002(平成14)年4月16日~6月1日掲載
「どうも初めまして。ようこそ中津江村へ」 無駄のない動きで差し出された名刺には、光まぶしい芝生の写真。さりげなく添えられた”ラスタカラー”の国旗に、思わず目が止まる。...
ユーモラスな発想。ちゃめっ気たっぷりのアイデアに「なかなかイケてますよ」と、ほほ笑んでしまう。 緑、赤、黄色の布を縫い合わせ、頭にかぶって選手団の歓迎を―と村の女性たちが考えた。...
カメルーンチームキャンプ地、中津江村鯛生スポーツセンターは、大分自動車道日田インターチェンジ(日田市)から車で約1時間。「道に迷ったらどうしよう…」という方もご安心。...
日曜日。両手に軍手をはめた村民が、首にタオルを巻いて集まった。その数、ざっと100人余り。新鮮な朝の空気を胸いっぱいに吸い込んで、「ヨシッ」と気合を入れた。...
まるで映画のワンシーンを見ているような、どこか心温まる光景。平日の昼下がり、村内栃野の辛味バス停前には「緩やかな時間」が流れていた。 古びた待合所。...
世界に名高い一流ホテルでも、これほど豪華な「天然カーペット」は用意できないだろう。...
ワールドカップサッカー大分開催や大会出場国のカメルーンチームが中津江村でキャンプを張るのをきっかけに、日田地域を分かりやすく、目を引く形で世界に発信できる方法は? 答えは日田市郡の行政、観光関係者らで構成する「日田地域振興プロジェ...
ペンを持つ手が止まった。「たまがった」というより、「ブルーになった」。無邪気な子どもたちにジェラシーさえ感じた。...
スケジュール表に余白はない。ホワイトボードは「本望です」と喜ぶかもしれないが、職員は大変だ。 カメルーンチームが滞在する鯛生スポーツセンター。...
海外旅行をしたとき、現地の地図が読めなかったり、近くにどんな観光スポットがあるか分からず、十分楽しめなかった……。...
「こりゃまた、一体どうして?」 鯛生スポーツセンターに隣接するB&G津江海洋センター。...
中津江村、上津江村の全中学生が通う中津江村の津江中学校。午後4時すぎ、取材途中で車を止めると、アレグロ(快活に速く)のテンポに乗せたマーチ風の曲が聞こえてきた。...
山村に吹きすさぶ「カメルーン旋風」の中で、冷静に村のかじ取り役を務めているのが国際交流員タイラー・ラッセルさん(26)だ。...
月、春、美、花……。10センチ四方の布に「和の心」を染め抜いた。村の愛情が詰まった「特製コースター」。田舎情緒たっぷりの手作り品だ。...
鯛生金山の駐車場の一角に店を構える「農家直売所」。のんびり店頭に座り、観光客との会話を楽しんでいた石蔵弘さん(76)に直撃インタビュー。...
当初は「何て書いてあんの?」と腕組みしていた住民たちも、今では「ハイカラで国際的」と、すんなり受け入れるようになった。 カメルーンの公用語であるフランス語。...
「中津江村はどんなとこ、近隣市町村は?どうやって行けばいいの? 観光スポットは?」 世界中から寄せられる疑問に「ジェム・ル・カメルーン」(カメルーン大好き)をうたい文句にしたインターネットのホームページ(HP)が答える。...
「それでは、参りましょう」。鯛生スポーツセンター職員のナビゲートにより、たどり着いた場所は施設近くのビニールハウス。...
朝8時に出勤し、独り暮らしの部屋に戻るのは深夜11時。テレビの人気バラエティー番組や”連ドラ”を見逃したって、苦にならない。...
「ちょっとそのジャンパー格好いい。どこで手に入るの?」 残念ながら非売品。「ジェム・ル・カメルーン(カメルーン大好き)」をうたう「日田地域振興プロジェクト対策会議」のスタッフジャンパー。...
「キャンプインの直後で時差ぼけもあるだろうし、油断もしている。一瞬だけでも”ライオンたち”を本気にさせたい」 不敵な表情を見せたのは日田林工高校サッカー部の秋月隆雅君(3年)。...
縦に真っ二つに切られた長さ3メートル、幅80センチほどの丸太。平面にはカメルーン国旗と、「緑の村から優勝への第一歩が始まる 燃えろ不屈のライオン」の文字。...
「ありゃ。もうキャンプインしたの?」 カメルーンチームがキャンプを張る中津江村鯛生スポーツセンター管理棟の玄関で、代表チームのメンバーが出迎えた。...
「それでは、できたての生ビールをこちらの試飲コーナーでお楽しみください」。日田市高瀬のサッポロビール新九州工場。言われるままに進んで行くと……。...
これまで何度、カメルーンの夢を見たことか。プレッシャーで押しつぶされそうになっても、前だけを見て誠心誠意を尽くしてきた。今は「やるだけのことはやった」と、キッパリ断言できる。...
イレブンを率いるのは坂本休監督(村長)。大胆奇抜な発想を武器に、日韓両国民を「あっ」と言わせる”坂本マジック”を披露した。...
前略 この便りが紙面に載った今、あなたはどちらにいらっしゃるのでしょう。...
やっと初恋の人に巡り会えたような、ちょっぴりドキドキした気持ち。ましてや「ボンジュール」などと選手に声を掛けられれば、たちまち胸がキュンとなるのも無理はないだろう。...
腹が減っては戦はできぬ。ましてやアフリカ王者のカメルーン。W杯の優勝候補に名を連ねるスター軍団とあっては、なおさら、お粗末な料理は提供できぬ。...
カメルーンチームから得た財産――。...
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