売り場ゼロから誰もが知る国民的存在「inゼリー」へ。銀色のパウチを磨き続けた30年の執念と職人技、そして一人ひとりの生活に寄り添う「in my life」へと進化するまで。

「未知の挑戦者」から「生活のインフラ」へ
新しい環境へ一歩を踏み出すとき、私たちの心には独特の緊張感が漂います。人生の大きな節目において、多くの人が「自分はここで受け入れられるだろうか」という不安を迎え、緊張で食事が喉を通らない朝を過ごした経験があるはずです。
そして日々の忙しい朝、時間がないときでも、短時間でおいしく小腹を満たしたい。その切実な問いに対し、多くの日本人が無意識のうちに手に取ってきたのが、銀色のパウチ「in ゼリー」でした。
1994年、その商品は「食べ物でも飲み物でもない」、どのカテゴリーにも属さない未知の挑戦者として誕生しました。売り場も前例もない中で、いかにしてこのプロダクトは日本人の生活に欠かせない商品となったのか。その裏側には、商品の価値を信じ抜き、30年にわたり泥臭い試行錯誤を繰り返してきたドラマがありました。
2026年春、一人ひとりの働き方と生活に寄り添う新コンセプト「in my life」へ踏み出すまでの、目に見えない30年の執念と職人技を、in ゼリー発売当時の責任者で、現・上席執行役員の松﨑さんと、現・マーケティング担当者の寺内さんに聞きました。

「食べたいのに食べられない」を救うために。「in ゼリー」誕生と市場なき時代の“最初の挑戦”
――そもそも「in ゼリー」は、なぜ開発・発売されることになったのでしょうか。
松﨑: 実は、最初から今の形だったわけではありません。アスリートだけでなく一般のお客様も利用しやすい「おいしく摂取しやすい栄養補助食品」の開発を計画し、最初はスポーツ選手向けの栄養補助食品として「缶入り」の飲料を発売したのですが、これがなかなか売れなかったんです。市場の厳しさに直面するなか、ある時アスリートから「バナナと牛乳を一つにしたような、食べることと飲むことが1回で済むものが欲しい」という声をいただきました。
――その「食べると飲むが1回で済む」というリクエストが、きっかけだったのですね。
松﨑: はい。ただ、それをどう実現するかが問題でした。そこで目をつけたのが、私たちがかつて開発していた「飲むゼリー」の技術です。この技術と、当時まだ新しかったパウチ容器を組み合わせれば、「握りしめることによって、ゼリーを押し出す」というこれまでにない食体験が作れるのではないか。そのアイデアから、今の「in ゼリー」の原型が生まれました。
――飲料でもお菓子でもない、「ゼリーを押し出す」という発明。そこにどのような想いを込めたのでしょうか。
松﨑: 私たちが培ってきたスポーツ科学の栄養ノウハウを、日常のあらゆるシーンで活かせるようにしたいと考えたのです。激しい練習の合間に栄養を欲するアスリートと同じように、現代社会には「時間がなくても、食欲がなくても、場所を選ばず栄養補給したい」という切実なニーズを抱える人々がいる。その利便性を一般生活に当てはめ、あらゆる人の「今日」を支えるものとして提案したかったのです。

――「10秒チャージ」という提案の裏には、当時の社会課題があったのですね。
松﨑: はい。当時は朝食欠食率が非常に高く、時間がない、食欲がない、という人を中心に「食べたいのに、さまざまな理由で食べられない人」が確実に存在していた。その課題を解決する手段として、飲料でもお菓子でもない、パウチに入ったゼリーという新しい形に辿り着いたのです。
――しかし、1994年の発売当初は、小売店から厳しい反応があったと伺っています。
松﨑: 本当に、どこにも居場所がなかったんです。私たちは「冷やして飲んでほしい」という願いから飲料売り場を望みました。しかし、あそこは有名商品がひしめく場所。正体不明の新人に貸す棚などありませんでした。この商品は健康食品のカテゴリーに位置付けられるので、結局、当時はほとんど存在していなかった健康食品売り場の隅に、わずかなスペースを見つけて並べてもらうのがやっとでした。
――その閉塞感を突破するきっかけの一つが、某コンビニチェーンさんとの出会いだったのですね。
松﨑: はい。当時、担当バイヤーさんが「自分のところで売りたい」と自ら来られたのです 。ところが、当初はありがたいお申し出をお断りしました。
松﨑:当時のコンビニという場所は、次々と新しい商品が登場するスピード感のある売り場で、一つの商品をじっくりと時間をかけて「育成」するのには向かない特性があるという印象を持っていたからです。私たちは、この中身が何かわからない、得体の知れない商品を、すぐには手に取ってもらえないと考えていました。大量のサンプリングによってはじめて、商品を知ってもらった人が、商品価値を理解し少しずつ購入してもらえるようになると考えていましたし、文化としてじっくり育てたかった。だから「コンビニには置けません」と言ったんです。
しかし、そのバイヤーさんは引かなかった。「コンビニでも育てることはできる。売れるまで置き続ける」と断言されたのです。まだ何者でもなかった商品の可能性を信じてくれた、その一つの「きっかけ」が、市場を切り拓く大きな一歩となりました。

パウチの中に詰め込んだ「科学」。1ミリ単位で磨き続けた職人魂
――「inゼリー」は、パッケージ、デザイン、品質のすべてにおいて、驚くほどのこだわりが脈々と続いているそうですね。
松﨑: 単に棚に並べるだけではなく、「どうすればこの価値が届くのか」という試行錯誤の連続でした。当時のパウチは底が尖っていて店頭で倒れてしまうという致命的な問題がありましたが 、私たちは「握って押し出す」飲用体験を守るために容器を変えませんでした。代わりに、容器を立てるための特製トレイを自ら開発し、特許を取得して全店舗に送り届けたのです。執念の「手作り市場」でしたね。商品の価値を信じ抜いていたからこそ、形を変えずに届ける方法を考え抜きました。

※当時は跳ね返りが強く、店頭に並べた時に倒れてしまっていた(右側は現在の容器)
――中身の開発、特に「味」の部分にも、「in ゼリー」ならではの哲学があるそうですね。
松﨑: お菓子メーカーとして、一口食べて「感動するほど美味しい味」を作るのは得意です。でも、「in ゼリー」が目指したのは「食事」の代わりです。毎日飲んでも嫌にならないベース(基盤)でなければならない。だから、あえて美味しさを「引き算」し、徹底的にテストして「飽きのこない味づくり」を追求しました。
寺内: 実は見えない部分に凄まじい技術が詰まっています。例えばストローの長さ。短すぎると吸い残しが出て、長すぎると容器を突き破ってしまう。最後の一口まで吸いきれるよう、ミリ単位で長さを調整していますし、ストロー自体にも穴が開いています。これによりゼリーが飲みやすく崩れて出てくる設計になっています。

――キャップの開けやすさや、容器の角の処理にまで及んでいるとか。
松﨑: はい。お子さんや高齢者でも開けやすいように、キャップの開けやすさは毎年のように改良を重ねてきました。金型を都度変えるコストよりも、使い勝手を優先したのです。また、安全のために容器の角を丸くする際も、中身が少なく見えないよう、切る角度を何度もテストしました(※)。
※当時はパッケージの角が尖っていました。改良にあたり、中身が減ったと誤認を与えないようにこの角度を何度もテストしました。(画像参照)

寺内: キャップの開けやすさの改良は今でも続いているんです。また、のどを通る時のスピードや腹持ちを計算し尽くした粘度調整も、繊細な職人技です。この「たかがゼリー」と言わせない執着こそが、「inゼリー」が30年かけて継承してきた最大の「資産」なんです。

「考えるエネルギー」への進化。社会課題に先んじた2018年からの布石
――松﨑さんたちが築いた強固な土台を、2020年、未曾有の危機が襲いました。
寺内: 絶望的でした。私たちの最大の武器は「10秒チャージ、2時間キープ。」です(当時のコピー)。でも、人々が移動を止めた世界では、次の行動へのつなぎ食として急いでチャージする必要がなくなってしまった。実際にコンビニでの売上は一時半減し、ブランド全体の売上も前年比84%まで急落しました 。チーム全体が「移動しない人間に、エネルギーは不要なのか?」という問いに打ちのめされていました。

――その苦境の中で、どのような「気づき」があったのでしょうか。
寺内: 物理的な移動は止まっても、人々の活動は止まっていないことに気づきました。実は2018年頃から、将来の「働き方」の変化を見据えて「考えるためのエネルギー」の開発を進めていたんです。「いつでも・どこでも・素早く補給できる」という「in ゼリー」の価値が、スポーツだけでなく、勉強や仕事に集中したいときなど「考えるためのエネルギー」が必要なシーンでも求められているという生活者インサイトに着目し、「ブドウ糖」に注目しました。
――それが、2020年発売の「inゼリー エネルギーブドウ糖」のヒットに繋がった。
寺内: はい。リモートワークやリスキリングが普及し、集中ニーズが高まった社会情勢に、この提案が見事に合致しました。片手で手軽に飲めて手が汚れず、キャップをしめられるので、一気に飲む必要がない設計も、「集中を妨げない」と好評を博しました。結果、「inゼリー エネルギーブドウ糖」は市場に定着し、発売から5年で売上は約2.6倍まで伸長しています。
――中身へのこだわりも、この再浮上を支えたのでしょうか。
寺内: まさに「中身に救われた」と感じています。日常の食事代わりとして「飽きのこない味づくり」にこだわってきたこと 、そして「食欲がない時でも寄り添える」と積み重ねてきたプロモーションが、コロナ禍で初めて「in ゼリー」を手にする方の安心感に繋がりました。その結果、売上はV字回復し、2023年度には過去最高売上を更新することができたのです。

不変の「10秒チャージ」を土台に。前を向くエネルギーとなりたいという想いから『in my life』を展開
――現代社会において「時間」の捉え方は大きな転換点を迎えています。 「in ゼリー」にとっての「時間」の定義は、この30年でどう変わったのでしょうか。
松﨑: 「in ゼリー」にとっての時間の定義は、根本では変わっていないと思います。行動を始める前の時間がないときでも、1秒でも長く練習や仕事に打ち込みたいときでも、エネルギーが摂れることが最大の価値です。ただ、当時は「自ら積極的に時間を作り出し、何かに挑むためのゆとりを持つこと」が、エネルギー補給の大きな目的となっていました。
寺内: それが今は、より「自分の時間を大切にする、尊重する」ためのものへと変化しています。タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉が浸透した現代ですが、それは単に急ぐためではなく、「自分が本当に使いたいことに時間を使いたい」という欲求の裏返しです。
――そこで始まるのが、2026年度からの新ブランドプロモーション「in my life」ですね。
寺内: 誤解していただきたくないのは、「inゼリー」のアイデンティティである「10秒チャージ、2時間キープ。」(当時のコピー)という価値は、これからも土台としてあり続けるということです。その上で、2026年度からは、それぞれの生活を少しポジティブに、前を向くエネルギーとなりたいという想いから「in my life」というプロモーションを展開していきます。
日常には、ちゃんとしていても、うまく進まない「小さなジレンマ」があると思います。そんな時、「inゼリー」で気持ちを切り替えてポジティブになる。本来の自分に戻し、前を向くサポートをしたい。「in my life」は通過点に過ぎませんが、生活者一人ひとりにさらに深く寄り添うための、次なる一歩です。
松﨑: 昔は自ら積極的に時間を生み出すための「10秒チャージ」という面が強かったですが、今は「自分らしい時間を過ごすための準備」になっている。そこが大きな変化ですね。

あなたにとっての「エネルギー」とは?
――最後にお二人に、「inゼリー」が提供する「エネルギー」を一言で表していただきましょう。
松﨑: 私は変わらず、「相棒」です。 30年前、居場所のなかったこの商品を世に出したとき、私を突き動かしたのは「inゼリー」の持つ価値を信じ抜き、この商品の価値を知ってもらえれば、必ず多くの人々の役に立つという強い想いでした。でも、長く続く中で気づいたのは、「inゼリー」は主役ではありません。先生でもコーチでもなく、誰かが何かを成し遂げる瞬間のすぐ隣にいて、そっと支える。発売当初から商品に携わってきた多くの人との市場を育てようとしたあの熱量は、今、一人ひとりの人生に寄り添う覚悟へと昇華しています。
寺内: 私は、「自分らしく、今日を生きる力」です。 現代はカロリーが足りない時代ではありません。足りないのは、ジレンマや不安を乗り越えて「よし、やろう」と思える心のスイッチです。新しい環境への挑戦、緊張で足がすくみそうな朝、バッグの中にこの銀色のパウチがあるだけで、「いざとなったらこれを飲めば大丈夫」という安心感が生まれる。そんな存在を目指しています。
松﨑: 30年前は10秒チャージで時間を生み出すことを支えていましたが、今は一人ひとりの生活に寄り添う「エール」ですね。
寺内: はい。機能(チャージ)という土台の上に、情緒(エール)を乗せていく。日常に寄り添い続ける「in my life」という約束。その光景こそが、私たちが30年かけて育ててきた「エネルギーの正解」なのだと信じています。
――ありがとうございました!

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