事業は成長、組織は縮小。変わる人員設計 ―Thinkings【組織再考ラボ】フェロー 佐藤 邦彦 氏

Thinkingsが運営する「組織再考ラボ」のフェロー、佐藤 邦彦 氏が、AI時代到来による変化を見据えた、組織や人事の在り方について語ります。
●管理するだけの管理職はオワコンになる
──AI時代の到来で、組織や人材のあり方はどう変わっていくのでしょうか。
管理するだけの管理職は衰退します。それだけでもよかった時代は終わり、人の活躍を引き出せる人と管理しかできない人で、二極化はより進むでしょう。業績好調な大手企業が相次いで大規模リストラを実施しているのは、事業成長に必要な人材要件が根本から変わったからです。管理職だけでなく、評価の取りまとめをする人事もコードを書くエンジニアも、どの職種も例外ではありません。
自社に在籍する人材の可能性を広げるため、リスキリングを推進する企業は確かに増えました。ただ、AIに代替されるホワイトカラー職の人が、別のホワイトカラー職を目指して学び直しても、キャリア形成とはならない懸念が出てきています。横移動した先の仕事も、また同じようにAIに代替される可能性が高いからです。そうした状況に目を向けていない、形骸化したリスキリングは少なくありません。
そしてもう一つ。年齢による選別も、本質を見誤っていると言わざるを得ません。本当に見るべきは、「学び続けている人なのか、新しいことにチャレンジして経験値を積み上げている人なのか」です。つまり“組織にとってマイナスの人を探すのではなく、プラスの人を見つける”。こうした視点が求められています。
●人事は人材配置のプロデューサー
──そんな中、人事が取り組むべきことは何でしょうか。
事業成長に対して本当に必要な人員数を、ゼロベースで設計し直す必要があります。見極めた人材をどこに配置するか、従来の考え方では売上の成長に比例して人員も増員する考え方が主流でした。しかしこれからは、売上や利益を伸ばしていても、AIの力によって必要な人員は減っていくでしょう。事業成長と人員数が比例しない時代がもう始まっています。
そうなると、社内の配置転換だけでは当然限界が出てきます。従来の役割とフィットしなくなった人に別の役割を与えようにも、受け皿となるポジション自体が減っていくのですから。
だからこそ人事は、社外への労働移動も視野に入れるべきです。コロナ禍でキャビンアテンダントが他業界に出向したように、社外に活躍の場を見出す動きが今後は当たり前になるかもしれない。
事業成長のための最適な人員配置を設計しながら、同時に社外も含めた人材の再配置をプロデュースする。その両輪を回せるかどうかが、これからの人事の腕の見せどころです。
●生き残るのは、一人何役もこなせる人材だけ。人事も例外ではない。
──社内外を含めた再配置や、プラスの人を見極めるという話は人事自身にも当てはまりそうですね。
まさにその通りで、人事も当事者です。採用業務の取りまとめ、評価制度の運用、育成研修の手配、労務手続き。こうしたオペレーション業務の多くはAIやAIエージェントに代替される可能性が高い。人事というポジション自体も、向こう10年でかなり様変わりするのではないでしょうか。
生き残るのは、一人何役もこなせる人事です。採用のこともわかっている、育成のこともわかっている、評価制度も労務もわかっている。その上で、オペレーションはAIに任せ、意思決定や戦略の方向性を決めるといった上位レベルの仕事を、領域をまたいでできる人。そういう人材だけが必要とされるようになるでしょう。
最初にお話しした「管理するだけの管理職は衰退する」という話と同じです。採用なら採用だけ、労務なら労務だけという人は厳しくなる。経営に近い視座を持ち、複数の領域を横断できる人と、一つの実務に閉じている人とで人事も二極化していきます。だからこそ、自分たちの仕事がどれだけAIに代替できるかを、人材配置のプロデューサーを目指す人事こそ真っ先に試してみるべきなのです。
●変化に気づいた人事から、動き出そう
──以前のインタビューでは「適所適材」や「キャリア自律」の重要性をお話しいただきました。今日のお話はその延長線上にあるように感じます。
そうですね。以前お話しした「適所適材」という考え方、年齢ではなく一人ひとりの能力や特性を見極めて配置するという話は、今日の「プラスの人を見つける」ことにつながっています。そして「キャリア自律」の重要性は、AIの進化によってより切実なものになりました。会社が社員のキャリアを面倒見きれない時代が、想定より早く来ています。
自分の仕事がAIでできると気づいた人から、もう動き始めています。私自身も、重機の免許や大型二種免許などの取得を真面目に考えているんですよ。日本での自動運転の実現はまだ先になりそうですし、60代前半までの向こう15年を想定すればバスの運転手なども十分視野に入ってきます。加えてエッセンシャルワーカーの不足や給与の高騰も顕著です。週の前半はコンサルティングワークや研修講師業、後半は工事現場で重機の運転をしている52歳がいてもいいじゃないですか。
私の話は極端な例かもしれませんが、変化を恐れず動き出すことが大事だと思っています。人事自身がまずそのことに気づき、その現実を自社の社員にも伝えていく。そんな人が増えていってほしいですね。

佐藤 邦彦(さとう くにひこ)
株式会社PetitPlanet取締役
Thinkings 組織再考ラボ フェロー
コンサルタントから人事へキャリアチェンジし、多様な事業会社で人事を歴任。リクルートワークス研究所で『Works』編集長を務めた後、Thinkings株式会社執行役員CHROを経て現職。「探究的」なアプローチで人事機能を追求し、終身雇用や年功序列に依存しない新しい組織づくりを提唱。組織と個人の持続的な成長を実現する仕組みづくりに取り組む。
■プロフィール
1999年東京理科大学理工学部卒業後、アクセンチュア入社。2003年にアイ・エム・ジェイに転職し事業会社人事としてのキャリアをスタート。2011年以降、様々な事業会社の人事を歴任し2020年4月よりリクルートワークス研究所に参画。2022年8月まで『Works』編集長を務める。2022年10月にThinkings株式会社執行役員CHROに就任。2024年9月より現職。
プロフィール詳細
「組織再考ラボ」とは
「企業における組織づくりのあり方について再考し、経営層や人事部門の皆さまに対して有益な情報発信を行う」をミッションに掲げ活動しています。
https://thinkings.co.jp/re-thinking-org_lab/
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